とある中小企業の受託開発(デスマーチ)
かわかみ氏と八木氏、原氏が所属するブリリアントサービスは、主にAndroidプラットフォーム向けのスマートフォンアプリ開発を行っている会社だ。またAndroidだけでなく、近年ではiPhone/iPadおよびWindows Phone向けアプリの研究開発にも積極的に取り組んでいるという。本セッションでは、そうした開発実績の中で培われたAndroid、iOS、Windows Phone向けアプリ開発の勘所が、仮想の開発プロジェクト事例を用いて紹介された。
「とある中小企業の受託開発(デスマーチ)」と題された仮想事例の登場人物は、開発会社「BリアントSビス社」、同社の開発チーム「チーム鰤太郎」と営業の「F田」、そして案件の発注元「Dブサミ社」と発注担当者「S戸氏」だ(※注意)。
なお、本セッションで紹介している仮想事例は架空のものであり、実在の人物や団体とは一切関係ない。
この仮想事例のストーリーは、BリアントSビス社がDブサミ社から、とある「おいしい案件」を受注するところから始まる。
「いわゆる『おいしい案件』とは、受注側の要望が通りやすく、一見楽そうに見えるが、実は発注側が開発についてまったく知らないために適当にゴーサインを出している場合が多い。そのため、いざ動き出すとスケジュールが途中でひっくり返ったりして、結局は赤字になってしまうことが多い」(かわかみ氏)
果たして、この仮想事例も当初はまったくこの筋書き通りに進んでしまう……。
ある日、営業のF田がDブサミ社から打診を受けた開発案件を、チーム鰤太郎に持ち込んでくる。案件の内容は、以下の通り。
- デブサミのプロモーションアプリを開発する
- 開発期間は1か月
- Twitter上でデブサミの公式アカウントのつぶやきを表示させる
- デブサミのハッシュタグ付きのつぶやきを表示させる
- デブサミの公式サイトへのリンクを表示させる
- iOS、Android、Windows Phoneの3プラットフォームに対応させる
「なんだ、簡単そうな案件じゃないか」。そう考えたチーム鰤太郎の面々は、早速クロスプラットフォーム開発環境「PhoneGap」を使ってプロトタイプ開発をスタートした。PhoneGapを使うと、単一ソースコードから複数プラットフォーム向けアプリを生成できる。「PhoneGapの仕様なら、何の問題もなく3プラットフォームに対応したアプリが簡単に開発できそうだ!」
アプリのプロトタイプは、早々に完成した。Windows Phone向けのアプリはTwitterのTLが表示されないという不具合が残っていたが、「プロトタイプならこのレベルで十分だろう!」。そう判断したチーム鰤太郎は、自信満々にS戸氏にプロトタイプを見せにいく。
しかし予想に反して、S戸氏からの反応は厳しいものだった。
「これ、どうやってツイートするの?」
「自分のTLが見えないじゃん」
「なぜどのプラットフォームでも見た目が同じなの?」
凍り付くチーム鰤太郎の面々を尻目に、営業のF田は立て板に水のごとく次にように話す。
「これはあくまでもプロトタイプですから、本番ではUIをしっかり作り込みますし、ツイートもできるようになりますよ。ええ、期間はもちろん1か月で!」
デスマーチ決定である……。