2. 64bit対応を進めるC++Builder
エンバカデロでエヴェンジェリストを務める高橋智宏氏からは、C++Builder XE3の新機能についてより詳細な紹介が行われた。まず、ベースとなるC++の言語機能および開発環境としては、次のような拡張が行われるという。
- C99仕様へのかなり高い準拠
- C++11仕様へのかなり高い準拠
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LLVMベースのアーキテクチャを採用
- x64バイナリ生成をサポート
- ARM v7バイナリ生成をサポート
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プロセッサ別のリンカの追加
- ilink64(Win64用)
- ld(ARM用)
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デバッガの追加(拡張)
- DBK: Embarcadero Debugger Kernel(Win64用)
- GDB(ARM用)
C++向けのライブラリも新しい環境に合わせたものが同梱されるようになる。一例として次のようなライブラリが挙げられた。
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STL - Dinkumware製STL
- 64bit対応
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Boost - BoostPro
- インストーラ付きBoost
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Network - The ADAPTIVE Communication Environment(ACE)
- 非常に堅牢で高機能、高スケーラビリティなネットワーク環境
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CORBA - The Ace ORB(TAO)
- ACEベースのオープンソースCORBA実装
アプリケーションを実行するターゲットとなるプラットフォームとしては、XE2ではWin32とMac OS Xがサポートされているが、XE3では次のプラットフォームが追加されることになるという。
- Win64
- iOSシミュレータ - プラットフォームアシスタントサーバーによるリモート実行/デバッグに対応
- iOSデバイス(iPhone/iPad)
- Androidデバイス(2013年前半に追加予定)
また、リリースプランには掲載されていないものの、将来的には以下のようなプラットフォームがサポートに追加される可能性があると高橋氏は指摘している。
- Windows 8(Metro/WinRT)
- Linux(32bit/64bit)
- Mac OS X 64bit
上記に加えて、FireMonkeyについてもDelphiと共通して大幅な拡張が行われる予定とのことだ。従来のバージョンでは、VCLには用意されていながら、FireMonkeyには用意されていないコンポーネントや機能が多数あった。例えばアクションリストやジャスチャ、アンカー、レイアウトマネージャ、Audio/Videoコンポーネント、物理エンジンなどである。XE3からは、FireMonkeyでもこれらの機能が使えるようになる。
講演では、新しいコンパイラを使ってWin64向けのアプリケーションを構築するデモが紹介された。Win64向けにするとはいっても、実際にやらなければいけない作業は、プロジェクトマネージャにおいて"ターゲットプラットフォーム"を「64ビット Windows」に変更することだけである。これだけで自動的にWin64向けのコンパイラを使ったビルドが行われるように切り替わってくれる。従来のWin32用のプロジェクトでも、一部の例外(後述)を除いて、そのままWin64向けにビルドすることができるとのことだ。