大手ゲーム会社のデベロッパに向けた「Flash Playerプレミアム機能」
――今回、新たに「Flash Playerプレミアム機能」という有償の機能が発表されました。これは、どういった場合に適用されるのでしょうか?
このプレミアム機能は、非常に特定の使用事例に限定しています。Stage 3Dのレンダリングエンジンと、ドメインメモリと呼ばれるAPIを併用した時のみ適用されます。
これら2つのテクノロジを組み合わせて使うという事例は、あまり多くありません。では、どういった開発者が必要とするかと言うと、ブラウザ内でコンソール機レベルのクオリティを求める、非常に大手のゲーム会社が主なユーザーになるでしょう。通常、このようなゲーム会社は、Adobeのようなツールは使わず、他に別のツールを使っていることが多いため、そういったデベロッパから売り上げを立てられるようにするためのモデルとなっています。
例えば、Unityなどは、Flashをエクスポートするということが彼らの得意な部分ですが、Stage 3DとドメインメモリAPIの両方を活用しています。実際、メモリに書き込むという点では、非常に低いレベルのアクセスを許す、ということがこれまでのドメインメモリだったと思います。
また、ドメインメモリを使用する「Alchemy」という別のテクノロジも開発中です。これにより、C、C++のコードをActionScriptのコードに変換できるようになります。Epic Gamesという会社が、UDKと呼ばれる開発環境を使って作成したゲームをデモで公開していますが、ここでは、Alchemy、Stage 3D、ドメインメモリを一緒に使い、通常XBoxで動くようなゲームを、直接Flash Playerを使ってブラウザ上で実現しています。
このように、この機能はトリプルAのゲーム開発者をターゲットにしたもので、個人のゲーム開発者をターゲットにしたものではありません。Flash Playerはそもそも非常にパフォーマンスも良く、フィーチャーも優れており、ハードウェアで加速化できるレンダリングも実現できているからです。
――ランタイムライセンスとして課金することに、周囲からの反発はありましたか?
なぜ、私たちがこういうことをしたのかという説明をきちんとしているため、理解していただけています。そもそも、ゲームデベロッパのコミュニティなどでは、基本的に今回のプレミアム機能のユーザーとして当てはまらないので、それも理解されていると思います。
先ほども言った通り、ターゲットはいわゆる大手のゲーム会社ですが、大手のゲーム会社でこのプラットフォームにこれから数年間にわたり投資をしていこうと思ってくれている会社も多く、このマネタイズについても受け入れていただいています。
逆に言えば、Adobeがプラットフォーム上で収益をするということは、このプラットフォームが数年間、あるいはこの先何年にもわたり、ちゃんと生き残っていくプラットフォームであるということを示していることにもなるため、ユーザーの皆さまは、このプラットフォーム上に開発をしても大丈夫だ、という安心感を持っていただけると思っています。
Flash PlayerほどWeb上でここまでのリッチさと、たくさんの方への到達度が達成できているプラットフォームは他にないのが現状。そういったところが特にハイエンドのゲームを開発されている開発者にとっては、自分たちのゲームを作る方にとって収益化をされる方には価値が高いのでは。
――スマートデバイスでのゲーム(AIR)でも同様に、この機能は適用されるのでしょうか
いいえ、その予定はありません。現状、AIRはFlash Playerのような高い普及率ではないためです。
Flash Playerの今後について
――Flash Playerの次期バージョンについての計画を教えてください
次のプレーヤーは「Dolores」というコードネームで、開発が進められています。特長は大きく2つあり、これまでにユーザから要望の多かったものを実現する予定です。1つは、APIの名前はActionScriptWorkerというAPIによる、マルチスレッド対応です。これにより、非常にインテンシブなActionScriptのコードを書けるようになり、かつUIには影響を及ぼすことはありません。
もう1つの重要な特長としては、「Monocle」と言うツールをつかい、Flashのコンテンツのプロファイルをしっかりと作れるようになる点です。デバッグツールを使わず、リリースバージョンを使ってコンテンツのプロファイルを作れるため、これまで以上に高いレベルでのプロファイリングやデバッキングができるようになる予定です。
――ありがとうございました
最新のFlash情報について、両氏のインタビューの内容はAdobe OnAir特別編でも紹介されているので、ぜひ参照してほしい。