対象読者
今回の対象読者は下記の通りです。
- Windowsに関する基礎的な知識
- Gitに興味がある方
- Subversionなどの別のバージョン管理システムを利用したことがある方
必要な環境
- Git for Windows(フリー)
- Git Extensions(フリー)
ブランチとは
何らかのバージョン管理システムを利用したことがある開発者ならば、あえて説明する必要もありませんが、ここで簡単にブランチについて説明します。一言で言えば、バージョン管理システムにおけるブランチとは、任意のリビジョンから別系統の履歴を管理していくために作成される分岐のようなものです。ブランチとは「分岐、枝」を意味し、本系統の方は「幹」に例えてトランクと呼ぶのが一般的です(図1)。
一般的な開発ではトランクで主な開発作業を繰り返します。開発が収束しリリースにむけてトランクとは別に履歴管理をしていきたい場合、ブランチを作成します。Subversion(SVN)においては、特定リビジョンのコピーを作成することでブランチを作成していました。また、慣習的にtrunkや、branches、tagsといたフォルダ構成をとることが一般的です。
Gitにおけるブランチの概念は、SVNと少し異なります。実際にGitにてブランチを作成しつつ解説していきましょう。
ブランチの操作
それでは、概念説明は後にして、先にブランチの操作について説明していきます。
ブランチの一覧を表示する
前回は説明しませんでしたが、Gitではローカルリポジトリを作成し、最初にコミットした時点で、既定のmasterブランチが作成されます。ブランチの一覧を表示するには、branchコマンドを引数なしで実行します(リスト1)。
statemachine@mars /c/repository/sample (master) $ git branch * master
特にブランチを作成する操作をしていなければ、masterブランチのみ存在していることが確認できるでしょう。ブランチ名の横についている「*」マークが、現在のブランチを示しています。また、bashをコンソールとして使用している場合、カレントフォルダの横に、現在のプランチが表示されるように設定されてます。
ブランチを作成する
ブランチを作成するには、branchコマンドの引数に作成したいブランチ名を指定します(リスト2)。
$ git branch bugfix ... $ git branch bugfix * master
ブランチの一覧を表示させると、新しくbugfixブランチが作成されたことが確認できるでしょう。ただし、この時点での作業ディレクトリはmasterブランチとなっています。
作業するブランチを切り替える
新規に作成したbugfixブランチで作業を行うには、ブランチを切り替える必要があります。ブランチの切り替えは、checkoutコマンドにブランチ名を指定して実行します(リスト3)。
注意して欲しいのは、SVNのチェックアウトは、中央リポジトリから作業コピーを取得する操作ですが、Gitのチェックアウトは、ローカルリポジトリのブランチを切り替える操作です。またブランチを切り替えるという操作に違和感を感じるかもしれません。SVNでは、ブランチを別の場所にチェックアウトして利用し、他のブランチと作業フォルダを共有することはありません。しかしGitでは、作業フォルダでブランチを切り替える操作をすることで、ブランチ対応したファイル内容に置き換わります。
$ git checkout bugfix Switched to branch 'bugfix' ... $ git branch * bugfix master
ブランチ一覧を確認すると、bugfixブランチにアスタリスクがついて、ブランチが切り替わっていることが確認できます。ちなみに、checkoutコマンドに-bオプションを指定するとブランチの作成と切り替えが同時に実施できます(リスト4)。
$ git checkout -b bugfix // ブランチの作成と切り替えを同時実行 Switched to a new branch 'bugfix' ... $ git branch * bugfix master