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キーパーソンインタビュー

主要クラウドベンダーの有識者が語る「今どきのPaaS」(後編)―ユーザーにメリットのある「オープン性」って何だろう

ベンダーに聞くPaaSの「美味しい使い方」

 吉田:では最後に、それぞれのベンダーの立場で、どういったニーズのあるユーザーに自社のPaaSを特に勧めたいと思っているのか、どのように使ってほしいと考えているのかについて、聞かせていただければと思います。

 マイクロソフトWindows Azureの場合、1つはWindows Serverをはじめ、これまでマイクロソフトのテクノロジーを使っていただいてきた企業ユーザーですね。オンプレミスからのシームレスな延長線上にある、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドといった形で、うまくWindows Azureを使っていただけると考えています。

 もう一つは、これまであまりマイクロソフトのテクノロジーに縁がなかった、Web開発系、ゲーム系、スタートアップといったユーザーにも使っていただきたいと思っています。こうした方面のユーザーへの訴求はまだまだこれからなのですが、スタートしたビジネスをグローバルに展開することを目指しているような場合に、Windows Azureがしっかりとサポートできるよう、技術面、ビジネス面から支援していきたいと思っています。

「Windows Azure」
「Windows Azure」

 IIJ:私たちのPaaSは現在は試験提供中という状況もあり、今後、ユーザー側のPaaSに対する意識も含めて、特に日本国内のPaaSマーケットの状況をしっかり見る必要があると思っています。

 IIJのお客様は、これまで基本的にある程度の規模感があるユーザーが中心でしたが、PaaSについては、これまでリーチが弱かったスタートアップやSMBなど、これまでIIJ接点が無かったユーザーにも広くお届けできると考えています。まずは気軽に使ってもらい、もしビジネスが成功すれば、ゆくゆくはIIJのIaaSなどにも目を向けていただくきっかけになるのではないかと。

 もちろん、PaaS自体もスケールしていくことを考えていますので、その世界の中で規模を拡大していきたいと考えるユーザーには、そうした仕組みも提供できると思います。

IIJ GIO」(左)と「MOGOK」(右)
「IIJ GIO」(左)と「MOGOK」(右)

 IBM:IBMは企業ユーザーにシステムを提供するのが使命であり、それはクラウドにおいても例外ではありません。現在、企業におけるコスト削減のプレッシャーは非常に大きなもので、特にITインフラやその運用の分野では、システム更改時期に20%以上カットというような場合もあります。一方で、ITの世界にはモバイルやアナリティクスといった、うまく利用することでビジネスを伸ばせる可能性がある新しい潮流も出てきていますが、その取り組みは早くなければチャンスを逃してしまいます。このようなトレンドの中で「コストの削減」と「ビジネスの成長」を両方とも見据えながら、自社のITを整備していきたいと考えていらっしゃるお客様に、ぜひIBMのクラウドサービスを使ってほしいと思っています。

 先ほどの吉田さんの話にも関連しますが、よく日本には、欧米で言うような意味での「CIO」「CTO」がいないと言われます。欧米型のCIOは、自らIT技術に精通し、ビジネスニーズ、アプリケーション開発、インフラストラクチャ、運用の全般に責任を持ちますが、日本ではスキルと権限が複数の組織に分散している場合が多く、最適な技術を選択し抜本的な技術改革を行うことで迅速にビジネスニーズに応えることが相対的に難しくなっています。

 例えば、ITインフラ部門はアプリケーション開発のニーズを十分把握していない、LOB(事業部)に属するアプリケーション開発部門は全社のITガバナンスの経験がない、CIOは広い権限を持っているけれども最新の技術、例えばアジャイル開発やPaaSに精通しておらず、それらを駆使したIT改革が後手に回ってしまう、という懸念があります。

 サイロ化したIT組織では「クラウドによる自動化が進むと、自分たちの仕事がなくなってしまう」といった心配を聞くこともありますが、実際にはそうではなく、より広い視野に立つ戦略的なIT部門が今ほど求められているときはないと思います。幸い、新世代のCIOやCTO、それを支える強力なITチームが現れつつあり、これからの日本を支えるような新サービスに取り組まれています。そういった方たちにはぜひクラウドをうまく活用していってほしいと思います。

IBM Pure Systems」(左)と「Cloud Foundry」(右)
「IBM Pure Systems」(左)と「Cloud Foundry」(右)

 ニフティ:ニフティクラウド C4SAについて言えば、現在のユーザー層は大きく2つのパターンがありますね。ニフティクラウド C4SAではWordPressの一斉起ち上げなど、アプリケーションの部分まで含めたサービスを提供していますので、本来、あまりシステム部分には関わっていなかったデザイナーさんが、サイトデザインと合わせてサーバの調達と管理を一手に引き受けて、ニフティクラウド C4SA上でお客様に提供されているといったケースが1つ目です。

 もう一つはやはりデベロッパーですね。スタートアップで利用されることももちろん多いのですが、最近の傾向として「サンデープログラマー」とでも言えばいいのでしょうか、開発者の方が個人で新技術の検証や勉強に利用されているというケースもあるようなんです。実際に、週末にアクセスが多くなるといった傾向も出ています。

 ニフティクラウドについては、もちろんがっつりスケールさせたり、専有サーバを立てたりして使っていらっしゃるお客様が大勢いらっしゃいます。こうしたいくつかの利用パターンについて、それぞれに訴求していこうと思っています。

「ニフティクラウド C4SA」(左)と「ニフティクラウド mobile backend」(右):
アイデアをカタチにする、ニフティの特化型クラウドサービス
「ニフティクラウド C4SA」(左)と「ニフティクラウド mobile backend」(右)

 NTTCom:われわれのお客様としては、まず、短期的にキャンペーンサイトを展開したり、ビッグデータを一気に解析したいというニーズがあります。こうした特にPaaSに向いた利用ニーズに対しては積極的に推していきたいですね。

 また、われわれならではの強みとして、ソフトウェアパッケージを持っているベンダーさんや、そのディストリビューターさんが、ユーザーにクラウド上でその製品を提供したいと思った場合に、単純に動作させるだけでなく、個々のユーザーさん向けにカスタマイズして提供するといったことをサポートできるというのがあります。われわれはインフラに強みをもっており、そうしたケースの場合はVPNでオンプレミスと繋ぎたいといった需要もありますので、近い将来VPN接続機能の提供を考えています。

 さらに、Cloud Foundry自体に興味を持って、その活用法を模索していらっしゃる方の支援も行っていきたいと思っています。最近ではソフトウェア開発において、これまでの外注中心のモデルに対する反省に基づき、できる部分を内製化していきたいという思いを持っている方が、最終的なインフラ部分を構成するパーツとしてCloud Foundry興味を持つというケースも増えてきています。

 ただ、Cloud Foundryは動かすことは簡単でも、それを実際に使える形で社内に適用し、運用していくのには手間がかかります。多くの場合は、そこで途方に暮れてしまうんですね。そういった意志を持ってCloud Foundryに取り組もうとされている方に対しては、ぜひ同じ志を持つ仲間として、お手伝いをさせていただきたいと考えています。

Cloudn PaaS
「Cloudn PaaS」

 Salesforce.com: Force.comHerokuに共通して言えるのは、とにかく「インフラを気にしたくない」という方に使っていただきたいですね。サーバやネットワーク、ミドルウェアなどに煩わされず、その分の時間をその上で何かを作ってビジネスを展開したり、差別化をしようというお客様には一番ふさわしいサービスだと思います。

 Force.comは正直なところ、他のPaaSよりクセは強いのですが、うまくはまれば、他のサービス以上の劇的な生産性向上が見込めます。もちろんフィットしずらい業務もたまに存在はしますが、9割方のニーズには応えられると思っています。

 オープンなテクノロジで構築されたHerokuもPaaSの中ではクセはあります。例えば、インスタンスの上げ下げなどのコントロールは、利用者側では行わずHeroku側が自動処理します。その方が開発者が楽にアプリケーションを管理出来るからなのですが、その代わりにWeb層はステートレスに作っておかなければなりません。なぜそのようなアーキテクチャにしているのかといえば、Webシステムを開発する際のノウハウとして、それがベストプラクティスと言われているのだからなんですね。そういう意味で、“ベンダーロックイン”でなく“ベストプラクティスにロックイン”されたい方にはHerokuはお勧めです……というと、ちょっとポジショントークになってしまいますが(笑)。Heroku自体は非常に良くできたプラットフォームなので、そうしたクセを理解した上で、生産性向上を図りたいという方にぜひ試していただきたいです。

「Force.com」(左)と「Heroku」(右):
「アイデアをアプリケーションに変える為の最速のプラットフォーム」/Salesforce Platformには、
モバイルに対応したクラウドアプリケーションを作成するための全てが揃っています。
「Force.com」(左)と「Heroku」(右)

 Engine Yard:われわれもPaaSだけに「アプリケーション開発に専念したい」という強いニーズを持つ世界各国のお客様から支持を得ていますが、そのお客様を大きく2つのタイプに別けることができます。一つ目は「インフラ層もプラットフォーム層も気にせずにアプリケーション開発に専念したい」というお客様、二つ目は「インフラ層は気にしたくはないが、プラットフォーム層は開発中のアプリケーション機能に伴うチューニングをかけたい」というお客様です。

 Engine YardのPaaSの特長として、データベースサーバーなどわれわれがチューニングをしたコンポーネントを、複数の選択肢からニーズに合うものを選んでクリック感覚で手に入れることができる容易性があります。そしてそれらを、Chefの仕組みや管理者権限によるSSHアクセスで、アプリケーションの特性に合ったお客様ご自身のチューニングで磨きをかけることも可能です。このような特長から、後者の「インフラ層は気にしたくはないが、プラットフォーム層は開発中のアプリケーション機能に伴うチューニングをかけたい」というお客様に非常にマッチするサービスであると言えます。

 また、われわれが特にこだわっていることは、常にご満足いただけるサポートや付加価値あるサービスを提供することです。トライアルユーザーへのライブチャットによるタイムリーなサポート、24時間365日のアプリケーション監視サポート、スポット対応のペアプログラミングサービスなど、多くのメニューを取り揃えています。このような支援体制で安心感を得たい方にもマッチするサービスであると思います。

 加えて、将来、OpenStackやCloudStackをインフラ層とするEngine Yardをリリースした後は、日本でデータセンターを展開するインフラパートナーとの協業も拡大してく予定です。それに伴い、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドのニーズを求めるお客様にも応えたいと考えています。

Engine Yard」:信頼性と拡張性に富んだ商用PaaS
「Engine Yard」

 TISeXcaleの場合、ターゲットはスタートアップなどの小規模の企業や、大きな企業であっても試験的にスモールスタートするプロジェクトなどを想定しています。小さい規模でスタートして、そのサービスが成長すれば、当然サービス固有の要件が増えていくのですが、その際はTISが提供するIaaSや、AWSのインテグレーションサービス、データセンター利用、SI案件につなげていければいいと考えています。そういう意味では、TISが従来リーチできていなかった潜在顧客層に対してアピールするという役割です。そのため、PaaSであるeXcale単体で収益化することももちろん目指してはいますが、eXcaleをきっかけとして、将来的にもTISとおつきあいいただけることを期待して事業を進めています。

 eXcaleを使っていただきたいユーザーは、やはりデベロッパーです。事業立ち上げの際、スモールスタートの場合は特にデベロッパーが中心となっていることが多いと思いますが、「開発者を楽にする」というコンセプトに基づいて、コアな事業に関する部分以外についてはわれわれが引き受け、システム全体もDRY(Don't Repeat Yourself)の原則に則って使っていきましょうとご提案しています。

 サービスを提供する中で「中身」を気にされるお客様が多かったことから、問い合わせがあったものに関しては基本的に公開しています。また、我々のサービスが提供するスケールの方法は、横展開をスピーディに行う「スケールアウト型」が大前提です。メモリを増やしたり、CPUを強化したりといった「スケールアップ」をするような仕組みは現在は提供していません。この方針は、今後も変わらないと思います。お客様には、そういった点を考慮して実装していただければと思います。そういう意味では、基幹系のアプリケーションよりも、ゲームやコンシューマー向けWebサービスなどのアプリケーションを動かすことに向いたサービスだと思います。

「eXcale」:PHP, Node.js, Ruby, Javaに対応した自動でスケールするPaaS
「eXcale」

 吉田:個人的には、今回の座談会にご出席いただいたベンダーさんのPaaS、IaaSについては、すべて使わせていただいています(一同:笑)。各社の代表の方が話してくださった、各PaaSの特長や「美味しい使い方」というのは、実際に使った経験があると、さらによく理解できると思うんですね。

 ただ、実際には「フットワークが軽い」と自称しているエンジニアの方でも、PaaSについては、使ってみたことがないという方が多いような印象を持っています。ぜひ、ユーザーの視点で、一つ一つのPaaSをより掘り下げて使ってみて、その中から、自分たちのニーズに合ったサービスを選んだり、使い方を洗練させていったりしてほしいと願っています。本日は、長時間にわたり、ありがとうございました。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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柴田 克己(シバタ カツミ)

フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いているの...

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