ヤフーとリーンスタートアップの関係
DevOpsを成功に導くにはどうすればいいのだろうか。その事例として、渡辺氏はヤフーの取り組みを上げた。そして、基調講演のメインスピーカーであるヤフーCMO(Chief Mobile Officer)室 河合太郎氏を檀上に呼んだ。
河合氏の講演は、DevOpsを実践するアプローチとして、「リーンスタートアップ」を取り上げた。リーンスタートアップとは、トヨタのリーン生産方式をベースに、エリック・リースという人が再構築したもの(渡辺氏)で、人、モノ、金の少ないスタートアップ企業が、資金が尽きる前にイノベーションを起こすための方法論として認識されている。
本来、ヤフーのような大企業にはあまり関係のない方法論だが、河合氏は次のように述べる。
「ヤフーは、3月にCEOが交代し、組織改編のスローガンとして『爆速』を掲げており、ユーザーにとっては『課題解決エンジン』となり、『!なサービス』を提供していこうと目標を掲げています。といっても『!なサービス』については、明確な答えを出せる人は誰もいません。よく企画書に、『市場規模はいくらで初期ユーザーはこれくらいが見込めます』と具体的な数字を示したりしますが、実は、新しいサービスについて、これらはウソ、もしくは希望的観測でしかありません」
河合氏は、だれもが驚くような新しいサービスは、最初に正確な予想やプランを立てるより、あいまいなものを段階的に、試行錯誤を繰り返し確かなものにしていく方が確実だという。リーンスタートアップとは、その方法論の一つであって、新しいチャレンジをするのであれば、企業の大小は関係ないということだ。
逆にいえば、リーンスタートアップのような考え方でイノベーションを起こせなければ、大企業でもベンチャーに抜かれる時代でもあると、ヤフーがリーンスタートアップを実践した理由を説明した。
リーンスタートアップのプロセス――「僕の来た道」
次に河合氏は、具体的なプロセスについての説明に移った。まず、リーンスタートアップでは、アイデアや仮説をつくり、それを検証するための最小限のシステムやプロトタイプ、MVP(Minimum Viable Products)を作り、結果や効果を計測・評価していく。この作業で得られたデータや知見を分析していくことで仮説やアイデアを修正していく。このプロセス(Build-Mesure-Learn)を繰り返すことで、ゴールに近づきイノベーションを達成するという。
原則として、この循環プロセスの1ターンごとに、製品・サービスのデプロイやリリースが発生する。
事例としてヤフーの「僕の来た道」というiPhone用のライフログアプリを紹介した。このアプリは、バックグラウンドで日々訪れた場所や時間などを自動的に記録し、日記スタイルで表示するというものだ。1日のログをとりながら、電池の消耗を気にする必要ない省エネ設計も特徴となっている。もともとのアイデアは、「スマートフォンの位置情報をバックグラウンドで記録し続けると面白いのではないか」という単純な発想(思いつき)だったそうだ。
このアイデア(仮説)をベースに、GPSで位置情報を自動的に記録し続け、地図上に表示したり、時間計測機能などを実装しようということになった。もちろん、それが本当に面白いのか、現実的なのかというリスクが想定され、それを検証するため、GPS情報を記録し地図に表示するだけのアプリを開発し、社内でテストを行ったという。この最初のアプリがMVPである。
