全天球撮影と災害コミュニケーションへの応用
つづいて、全天球撮影と災害コミュニケーションへの応用例についてご紹介いたします。災害時に自治体や関係省庁が管理するライブカメラから得られる現地情報は、状況把握の観点から重要です(図4)。しかし、ほとんどのライブカメラはアングルが固定されており、その場所がどのような状況に置かれた地域であるかを、詳しく知ることはできません。
そこで、ライブカメラが設置された場所で全天球撮影を行って合成することで、これらの情報の補完を試みることにしました。まずは、ライブカメラが設定された場所での撮影データをご覧ください(図5)。今回の撮影では、Occipital 360 PanoramaをApple iPhone上で利用しています。
さらに、先ほどのライブカメラと全天球撮影で得られたデータを合成してみましょう(図5)。いかがでしょうか? いずれも同一時間に取得したデータをもとに、その場で合成を行った結果です。アングルが固定されたライブカメラでは見渡せなかった、背面および周辺のすべての空間情報を確認できました。ライブカメラと全天球撮影したカメラの特性によって、やや色彩が異なっている部分もあります。とはいえ、いままでは見ることもできなかった情報を、しっかり確認することが可能となったので、そのような点については評価できます。
さて、これらデータ合成に関しても課題はありました。前述の全天球撮影におけるカメラの高さに起因する情報量の差です。ライブカメラの設置場所は高さ数mの鉄柱にあり、全天球撮影は人間の身長の高さでした。空間情報をしっかり保存しようと考えたときは、この微妙な高さの差によっても情報量の差が出てくることをご理解いただけたのではないでしょうか。
今後も弊社研究所で、さまざまな空間情報の収集と表現方法の検証を行っていく予定なので、また結果が出てきましたら共有いたします。
さて次回は、身近でおこる災害とその状況把握について、実際にあった災害を元にしてご紹介いたします。日々起こる災害に対して、どのように接していくかの参考にしていただければと思います。