すべてのアプリケーション開発のために進化する.NET
デモが終了し、話題は.NETの今後へと移った。先述したように.NET 2015は2つのラインで提供される。一つは従来の.NET Frameworkと互換性を保った新バージョン.NET Framework 4.6。そしてもう一方の.NET Core 5は、オープンソース化、クロスプラットフォーム化が特徴の新しいフレームワークだ。.NET Core 5のクライアントサイドでは.NET Nativeというデバイス最適化、ネイティブコンパイル、小フットプリントなど、モバイルアプリケーションの開発に適したフレームワークが提供されるという。また共通仕様の部分では、Roslyn(ロズリン)というクロスプラットフォーム環境で動くコンパイラが提供された。このRoslynは新しいVisual Studioの重要なポイントとなっているのだそうだ。
デモには登場しなかったが、2015年中に正式リリースが予定されているVisual Studio 2015についても、ダイジェストで紹介された。Visual Studio 2015の特徴的な変更点のひとつは、インストール時にさまざまなサードパーティ製のツールを一緒にセットアップできることだ。「Visual Studio 2015のインストーラーでは、AndroidのNDKやSDK、エミュレータ、さらにはGoogle Chromeなどを追加機能として選択インストールできる」と井上氏。実際、追加機能としてChromeを有効にしてVisual Studio 2015をインストールしたところ、デスクトップにChromeのアイコンができたと言う。Chromeがセットアップできるようになっているのは「クロスプラットフォーム開発において、Chromeは必須のツールだからだ」と井上氏は言う。ChromeだけではなくApache AntやGitも同様にインストールされる。これらのことから分かるとおり、Visual Studio 2015はすべての開発者があらゆるアプリケーションを作れるように変わっているのだ。さらに井上氏は「Webアプリケーション開発のテンプレートも変わった」と続ける。Bower(Twitter社製クライアントサイドパッケージマネージャー)やGrunt(Node.jsベースのビルドタスク自動化ツール)、npm(Nodeパッケージマネージャ)などのサードパーティー製ツールが使えるという。
「このようにVisual Studioはマイクロソフトのツールだが、マイクロソフトのテクノロジーの中だけで閉じられているわけではない。Windowsはもちろん、LinuxやMacでも開発ができるような形で提供していく。それが我々の方向性。すべてのアプリケーション開発のために、これが現在のマイクロソフトが掲げているメインのテーマだ」と井上氏は力を込めた。
現在、Visual Studio 2015が学べるセミナーを全国各地で開催しているという。また「時間を取って行くのは難しい」という人には、オンラインラーニングサイト「Microsoft Virtual Academy」を提供しており、ここでも「.NETやVisual Studioについて学べる」と井上氏は言う。井上氏も同サイトの講師として登場しているという。さらにもっと深い話を知りたいと言う人は、5月26日~27日にザ・プリンスパークタワー東京(東京都港区)で開催される「de:code」に「是非参加してほしい」と井上氏は会場に呼びかけた。de:codeはインフラ技術者、開発者をはじめ、ITに携わるすべてのエンジニアのための技術カンファレンス。今年が第2回目なのだそうだ。有料(4月28日までは早期割引で6万8000円)。昨年以上のセッションが用意されているという。こちらも期待できるイベントとなりそうだ。