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いまさら聞けないクラウドのアレコレ

いまさら聞けないクラウドのアレコレ(3)
~クラウド使いが乗り越えるべき壁~

スタートアップ企業における設計思想の違い

 前々回、純増ベースで2015年にはODM企業から市場に直接供給されるサーバー売上シェアは10%に近づくことが見えてきました。誇張した表現を恐れなければ、これは「世界の1割のコンピューティング資源がネットワークを通じて毎年新たに供給される」ことを意味していると筆者は感じています(図7)。

図7. ODM企業から直接提供されるサーバー売上シェアの伸び率
図7.  ODM企業から直接提供されるサーバー売上シェアの伸び率

 このような背景の中で、スタートアップ企業はコンピューティング資源を「保有」するか「利用」するか、さまざまな観点から選択を迫られることになります。

 つぎにご紹介するのは、Dropbox社におけるシステム基盤の変遷です(図8)。

 Dropbox社は2013年時点で、サービス向けシステム基盤をパブリッククラウドからデータセンターと併存させたハイブリットモデルへ転換した先端的なケースです。

図8. Dropbox社におけるシステム基盤の変遷(2013年時点)
図8. Dropbox社におけるシステム基盤の変遷(2013年時点)

 この発表を私も現地の海外カンファレンスで直接聞いていましたが、彼らの主張としては、「クラウド事業者の都合によらず、サービス停止タイミングを明確に管理したかった」という強い意向が述べられていました。すでに、パブリッククラウドを利用している読者の方であれば日常となっているかとは思いますが、パブリッククラウドでは定期メンテナンス・障害対応・緊急アップデートなど、クラウド事業者の都合によりサービス停止が発生します。1人のシステムエンジニアとして立ち戻って考えれば、これは至極当然のことのなのですが、パブリッククラウド上でサービス提供を行っているスタートアップ企業にとっては、やはりそのサービス停止への対応にも方法論や告知というものがあります。スタートアップ企業の経営的な思想にもよりますが、「なにを優先してシステム基盤を運営するか」は、やはり千差万別です。

 続けて「システム基盤の運営」という観点から「人」に着目して見ていきましょう。

 図9は、Pinterest社におけるシステムエンジニア数の増加率を示したものです。設立当初まもない頃は、とても小さいサービス向けシステム基盤を設立者と二人三脚しながら管理運用していき、それが管理するコンピューティング資源が加速度的に増大し、またサービス内容が拡充するに従って、人員も急速に伸びていることが図示されています。

図9. Pinterest社におけるシステムエンジニア数の増加率(2013年時点)
図9. Pinterest社におけるシステムエンジニア数の増加率(2013年時点)

 筆者は個人的にこの数字をまとめているときは安堵がありました。それは「コンピューティング資源が増えると人も必要になっている」という部分にです。お客様に提供するサービス種別によっての違いはありますが、企業によっては「クラウドなのだから、システムエンジニアをそれほど必要としない」という認知がIT業界には存在しています。これは決して嘘ではありませんし、至極まっとうな我々が向かうべきIT業界の姿なのだと筆者は思ってはいます。しかし「ものには限度がある」という点を、このように数字で見せつけられると、まだまだ我々が進むべき道は半ばなのだと再認識し、さらなる改善へ技術革新の方向性が見いだせます。

 やや脱線した内容ですが、IT業界にあるクラウドに対する「認知」として、図10のような違いが意外と明確に理解されていないという点も筆者は気にしています。

 パブリッククラウドの多くは完全な「従量制」です。そこでマーケットに対して表現されるのは、コンピューティング資源の性能のみであったり、ストレージの容量単価であることがあります。しかし、コンピューティング資源をインターネットを介して利用するには、通信量は決して無視できない要素です。

図10. ネットワーク回線でみるクラウドコンピューティングの違い
図10. ネットワーク回線でみるクラウドコンピューティングの違い

 経営を論じるときよく言われる言葉に「ヒト・モノ・カネ」があります。クラウドという言葉が世界を包み込むようになってから8年。私たちは、その便利で新しいコンピューティング資源の使い方にも、そろそろ慣れていく時期に来ているのです。

次回予告

 さて次回も『いまさら聞けないクラウドのアレコレ』と出して、私たちを取り巻くコンピューティング環境の変化と実際を解説していきます。ご期待ください。

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この記事の著者

松本 直人(マツモト ナオト)

1996年より特別第二種通信事業者のエンジニアとしてインターネット網整備に従事。その後システム・コンサルタント,ビジネス・コンサルタントを経て2010年より,さくらインターネット株式会社 / さくらインターネット 研究所 上級研究員。(2016年より一時退任)研究テーマはネットワーク仮想化など。3~5年先に必要とされる技術研究に取り組み、世の中に情報共有することを活動基本としている。著書: 『モノのインターネットのコトハジメ』,『角川インターネット講座 ~ビッグデータを開拓せよ~』など多数。情報処理学会 インターネットと運用技術研究会 幹事

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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