Shoeisha Technology Media

CodeZine(コードジン)

特集ページ一覧

【デブサミ2016】18-A-2レポート
ヤフー流アジャイル開発の導入・改善ポイント ~ プロダクトオーナー視点のものづくりへの道

  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2016/03/31 14:00

目次

アジャイル開発導入サポートは「ストレスを軽減する」ことがカギ

 こうした変化を促すために、アジャイル開発導入サポートとして、どのようなことを行っているのだろうか。荒瀬氏は、アジャイル開発の「導入サポート」と「改善サポート」の2面からサポートを行っているという。

 スクラムの実践前準備として、アジャイル開発を理解するためのセミナーや勉強会などを行う。そして「スクラムとは何か」「目的は何か」をまずは頭で理解し、「チーム設計」として役割やルール、進め方を決める。そして、荒瀬氏が最も重視するのが「目指すチーム像の設定」を行うことだ。「そもそもなぜスクラムを採用したのか?」その目的を共有し、目的を達成した時つまりは目指す理想のチーム像を思い描く。そして理想のチーム像へ向かうための明確なゴールが何であるか指標を決め、チームの現状を確認した上で、ゴールへの向かい方を協議するというわけだ。

 「必ず、目的と理想のチーム像、ゴールを明確化する。向かう方向が決まってないと、改善内容自体がぶれてしまい、チームの成長も感じられず、漫然とスプリントを回すことが目的になってしまい、結果としてチームの成長が停滞してしまう」(荒瀬氏)

 あとはゴールへの向かい方、向かうスピードをチームで決める。そこで荒瀬氏が行うのは、メンバー同士で各自に期待していることを伝え、メンバーの得意としていることやチームに貢献できること、大事にしていること成長したいことなどを共有し、メンバーのものづくりに対する姿勢を汲み取った進め方を擦り合せることだ。これを行わないと過度な期待や無理が生じ、チームの成長に悪影響が出るという。

 続いてアジャイル開発を実践するにあたり、未経験者がいきなり始めるのは厳しい。そこではじめは荒瀬氏がスクラムマスターを代行し、1~2ヶ月の間にチームがスクラムに慣れると代役を降り、オブザーバー役に切り替わる。定期的にスクラムマスターと1対1で「Impediments List(障害事項リスト)」を中心にチームビルティングを行う。その際、重要になってくるサポートポイントとして荒瀬氏が挙げるのが「ストレスを軽減すること」だという。

 アジャイル開発を導入すると開発プロセスが変わる。言い換えれば働き方が変わる。人によっては大変なストレスを抱える可能性がある。特に「変化を好まない人」のストレスは大きいもの。そこでスクラムの原則は守りつつも状況やチームの立場、メンバーの感情に配慮しながら進めていく。もちろん最初からスクラムのルールを全て守り進めるチームもある。

 「改善サポートはチームの成長を促すことがポイント」と荒瀬氏は言う。チームやプロダクトのビジョンを作るなど、チーム全員が議論に参加する会議のファシリテートを担当することはあるが、基本的にはチームの成長や課題をスクラムマスターと確認し、今後チームが自ら成長するためのサポートに切り替える。

マンネリやアンチに対する有効策は「成長しているか」の評価と実感

 アジャイル開発を実践し、スクラムに慣れてくるとマンネリ化が見られるようになり、「アジャイル開発の形骸化」が生じてくることがあるという。振り返りの場でも毎回同じ課題に対して根本的な解決にならない改善策を繰り返したり、課題を許容するルールを設けたりする。またスクラムルールを守ることにフォーカスするばかりで、目指すべき理想のチーム像に向かうことを忘れ、チームの成長が鈍化し、最悪、成長を放棄することにつながりかねない。

 このようなスクラム実践自体が目的となる「アジャイル開発の形骸化」を防ぐために、「チームの成長度合いやゴールの再認識合わせ」を第一義とし、必要に応じて改善のテクニックやナレッジのシェアなども行うという。

 「スクラムマスターは開発チームと兼任している場合が多く、チーム全体の課題や成長に目が届かず、目下の課題に捉われがち。私たちサポートメンバーは、スクラムマスターがチーム全体を俯瞰し、責任を果たせるようにサポートしている」(荒瀬氏)

 そして荒瀬氏が課題に感じていることは、「社内でアジャイル開発を正しく実践しているか否かわからない状況」に陥ることだという。このような状況では、本来サポートが必要なチームに対して何もサポートができなかったり、正しく実践しなかった故に効果を感じずアジャイル開発を止めてしまったり、アンチになってしまうなどの弊害が生じてくる。それはまさに「ダークサイド」に陥った状態であり、一度陥ると引き戻すにはアジャイル導入前以上に 労力が必要だという。

 そんな背景から 、社内のアジャイル開発が把握しづらい状況に対して「アジャイル開発コミュニティ」を設立。コミュニティメンバーと協力しながら社内の状況を可視化している。また、社内イベントや研修を一緒にオーガナイズしたり、スクラム実践チームの現場のサポートも行っている。さらに、アジャイル開発を通じて組織に影響力を持ち始めたメンバーに対してコミュニティメンバーとしてスカウティングも行っている。

 コミュニティ活動の具体例としては、スクラム導入検討者に対してスクラムの目的や役割、セレモニー等の基本的なルールの理解する説明会、アジャイル開発実践事例発表会やスクラムを体験できるレゴを用いたワークショップ、また、新卒向けの研修も行っているという。既にスクラム実践者に対しては、日々の課題や疑問について参加者同士でディスカッションしてもらい、改善のきっかけや気づきを得るイベント「スクラムマスターズナイト」を提供したり、さらに深くアジャイル開発に必要なスキルやマインドをエバンジェリストや有識者から学ぶアドバンス向け勉強会を行ったりするなど、チームの改善に活かすことができる機会を増やしている。

社内イベントや研修の一例(レゴを用いたワークショップ)
社内イベントや研修の一例(レゴを用いたワークショップ)

 これから実現したいこととして、荒瀬氏はチーム自らチームを評価する「チーム評価アセスメント」を挙げる。チームの現状を把握しやすくし改善に役立ててもらう狙いがあるわけだ。

 さらにもう一つ、アジャイル開発を実践中のチーム、導入検討中のチーム、といったターゲットに合わせたコンテンツ配信にもより取り組みたいと語る。それも、「アジャイル開発 TIPS」「マンガでわかるダメなスクラム」など、気楽に読むことができるコンテンツ配信を行っていきたいという。その意図として、荒瀬氏は「外から改善サポートが必要だと判断するのは難しい場合がある、チームも改善サポートが必要と思わない限り相談に来ない。チーム自身が気付かなければダークサイドに堕ち続けている。気軽に読んでくれそうなコンテンツによって気づきを与えたい」と語る。

 最後に荒瀬氏は「様々な開発手法があるなかで、アジャイル開発がハマるかどうかはわからない。しかし、チームが『やる』と判断した時にすぐ実践しやすい状態にしたい。今後はそのための体制・環境づくりにフォーカスしていきたい」と語った。

お問い合わせ

 ヤフー株式会社



  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

バックナンバー

連載:【デブサミ2016】セッションレポート

もっと読む

All contents copyright © 2005-2019 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5