モバイルアプリやソーシャルデータの分析にも対応
続いて野間氏は、別の顧客のケースを紹介。モバイルやアドテク/マーケティング関連のある企業では、「Webページのユーザーの動きを分析に活かしたい」「ソーシャルでの評判(クチコミ)を取り込みたい」「ユーザーの位置情報を活かしたエリアマーケティングを実施したい」といったニーズがあったという。また、モバイルアプリ開発においては変更の柔軟性や拡張性の高さから、NoSQLのドキュメント(JSON)DBを使うのが前提であり、そのデータをいかにリレーショナルDBに持ってきて分析できるようにするかというのも課題だった。
このケースでは、Bluemix上で提供されるNoSQLデータベースの「Cloudant」とdashDBを組み合わせて採用。Cloudantは、Apache CouchDBをベースにしたNoSQLのDatabase as a Serviceで、モバイルアプリのデータで広く利用されているJSONドキュメントをそのまま格納できる。
「CloudantとdashDBは、自動連携できる機能を備えている。モバイルアプリのユーザーが残したさまざまなログはJSON形式でCloudantにどんどん蓄積していき、分析はdashDB側で行えばよい」(野間氏)
連携の操作も簡単だ。dashDBのコンソールから分析対象となるCloudantのデータソースを選択すると、JSONデータが取り込まれてリレーショナル表に変換され、分析可能な状態となる。基本的な設定はこれだけで、一度定義しておけば、以降はCloudant側のデータが更新されるとdashDBのリレーショナル表にも自動的に反映され、リアルタイムで連携されるようになるという。
また、位置情報の計算は高コストで、従来はデータを取得していても分析・活用するのが難しかったが、dashDBではGeospatial(地理情報)分析機能を標準で提供。CloudantとdashDBを組み合わせて導入した先の企業でも、スマートフォンから取得したユーザーの位置情報を分析して、マーケティングに活用できるようになったそうだ。
野間氏は、ソーシャルデータの分析についてもデモを交えて説明。Bluemix上で提供されるサービスとして、Twitterデータの検索API「Insights for Twitter」がある。このサービスと連携して、dashDBのデータベースに直接Twitterのデータをロードできるという。設定も他のさまざまな操作と同様に簡単で、dashDBのメニューから「Load Twitter data」を選択し、抽出するキーワードなどを指定、あとは画面の指示に従って進めていくだけでTwitterのデータが取り込まれた。
さらにユニークな機能として、ツイートの内容が「ポジティブか、ネガティブか」を判別することも可能だ。たとえば“IBM”を含むツイートについて、ポジティブ/ネガティブの割合を調べたり、ネガティブなツイートのみを抽出するといったこともできる。
最後に、野間氏はセッションのまとめとして、dashDBなどを活用したデータ分析で注意すべき3つのポイントについて触れた。
1つ目は、最適なサービス/テクノロジーの見極めについて。dashDBは大量のデータを高速に分析処理できるものの、決して万能なデータベースではない。列指向DBの特性として、やはり通常の行指向DBと比べると、更新や削除などのトランザクション処理は弱い。どんな分析をしたいのか、その目的に対してどんなサービスやテクノロジーが最適なのかを見極めることが重要となる。
2つ目は、「パフォーマンス」という言葉に惑わされないこと。データ分析というとパフォーマンスを重視しがちだが、野間氏によれば「データベースの性能自体には、それほど極端な差があるわけではない」という。ただし、手軽に使えるはずのクラウドデータベースでも、表の設計や索引作成、チューニングなどに意外と手がかかってしまうケースは少なくない。スペック上のパフォーマンスばかりでなく、「いかに早く使い始められる状態にできるのか」にも目を向けるべきだ。
そして3つ目は、データモデルの重要性について。dashDBではあまり細かいことを考えなくても素早く手軽に分析を行えるが、「それだけでは次のステップに進むのは難しい」という。
「逆説的な言い方になるが、簡単・手軽な分析だけでは行き詰まってしまう。たとえば、将来的に機械学習で予測分析なども視野に入れているなら、データモデルの設計が大事。手軽なクラウドサービスの分析をスピード重視で使いながらも、さらに先を見据えて、しっかりとしたデータモデル作りに取り組むことが重要」と述べ、野間氏はセッションを閉じた。
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