世界に向けて勝負するのは必要以上にビビらなくてもいい
五味 このHUEという製品も、日本だけではなく世界で使ってほしいという目的で開発されたと伺っています。日本のユーザだけじゃなくて、世界を相手に開発していくとなると、これまでとは違ったUI、技術や機能も求められてくると思うんですが。
廣原 まず、全世界で使える製品ということですが、マーケットが広がったということ以外、日本の大企業で使える製品を作るというこれまでのプロセスと、変わりはないと思います。それは、ユーザの業務やユーザ自身を理解して、そこにある煩わしさや問題をソフトウェアで解決するというプロセスです。すでに数年前から、日本と同じように海外でも、展示会や個別のデモなどを通じてユーザの声を聞き、ユーザの業務やユーザ自身を理解しながら開発を進めています。
五味 作っていくプロセスは日本も海外もあまり変わらない。井上さんはいかがですか?
井上 去年、廣原さんが、アメリカで開催された世界最大規模のHRに関する展示会「HR Technology Conference & Expo」に初めて参加して、帰ってきた際の第一声が「思ったより海外製品はしょぼかったよ」だったんです。そこを自信満々に言うのも、プロダクトマネジャーとして重要かなと思います。海外を見てぶれまくってしまうと、作ってる側も何なんだって思いますし。
廣原 確かにそのようなことを言ったかもしれないですけども……。僕、実はあまりグローバルな人間ではなくて、僕にとってアメリカはすごく憧れの国なんです。Googleも、Microsoftも、Appleも、Facebookもアメリカ生まれで、アメリカにはすごくいい製品があるだろうと期待値が高かったんですね。きっと僕らなんて足元にも及ばずで、勉強したいという思いで行ったんです。
だからこそ、じっくりと競合製品の説明を聞いてみたんですが、自分が考えていることと大して変わらないなって。同じようにお客さまの声を聞いて開発して、同じような業務を同じように工夫しようとしているっていうことが分かったんです。なので、「同じようなものでしたよ」という意味で言ったんですね。僕らでも頑張れば同じようなことができると感じたんです。
五味 HUEをより世界に向けて発信させていくためには、どういったことが重要なんでしょうか。
廣原 ビビらないっていうことですね。アメリカってなんとなく、もう雲の上の存在だと思ってしまいがちですが、アメリカが100点で日本が1点、ということはなくて、日本もアメリカと同じようなことはできる。それは、ユーザもアメリカ製を選びがちなように、なんとなく欧米の方がいいという先入観だけであって、これをなくすことがまず一つ。
次に、日本もアメリカも関係なく、どこでも使えるようにし続けることだと思います。ただこれも簡単ではないので、諦めちゃうんですよね。だから、やっぱりアメリカはすごいとかって言っちゃうんですけど。とっても難しいことですけど、続けることで光が見えるというか、一歩進められる可能性があるかなと思っています。
五味 井上さんはいかがですか?
井上 あまりにも現実的すぎるかもしれないですけども、お金って重要だなと思います。お金があるから人を雇用できるし、ソフトウェアも向上する。プログラマの美学としては、小さくてきれいなソフトウェアが好きなんですけど、世界でやっていこうとすると、規模の経済は重要だなと思います。きっと20代の自分だったらそういうのは嫌だなと思ってしまうかもしれませんが、それもソフトウェア業界の一つの実態だなと感じます。COMPANY Forumのような4万名もの大規模カンファレンスを開催できる程度には日本でも大きくなっているし、レベルの高い優秀な技術者の採用もグローバルで成功するくらいまでにはなっている。この条件がそろっているのは、それなりに大きいなと思います。
五味 海外と一口に言っても、アメリカ、それも西海岸のイメージが強かったのが、今は捉える範囲が広くなっていますよね、ワークスさんでも上海、シンガポール、東南アジア圏にも進出されていると思います。HUEのような製品を出すには、多様な市場を一口に海外と言ってしまうのは危険でしょうか。それとも、日本も含めて海外が一つになっているというように捉えたほうがいいでしょうか?
廣原 いろんな国の情報を調べているのですが、例えば東南アジアで、欧米や日本より素晴らしいERPがすでにあって使われているイメージはないですね。この領域では、やはり欧米か日本が中心です。中国もレベルが高いですが。ただ一方で、コンシューマ向けのITサービスは、東南アジアでも日本と同じような感じです。スマホでタクシーが呼べますし。
井上 中国は進んでますよね。
廣原 中国は別格じゃないですかね。個人的には、今、一番ITが進んでいるのは中国じゃないかと思います。
五味 シンガポールに行ったときにも、ずっとみんなほとんど現金を出さないで、常にカードやスマホで決済していましたね。海外の話題は、第3部で続けさせていただければと思います。