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特集「ソフトウェア開発 自動化ツール」(AD)

アジャイルへの変化に恐怖ではなく喜びをもたらしたい――リックソフト代表取締役 大貫 浩氏 × アトラシアン長沢智治氏 対談

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測定からは生まれてこない「確実に現場の空気が変わる瞬間」

――長沢さんはアジャイル開発の普及に長く尽力してこられました。その間に感じた変化を挙げるとすると何がありますか?

長沢:コミュニケーションのあり方が大きく変わってきたと思います。先ほど話に出た勉強会もコミュニケーションの機会ですよね。情報共有というのは非常に重要なコミュニケーション手段ですから、社内でこれを積極的に進めることは、現場に合った環境づくりにもアジャイルの普及にも大きなカギになると考えています。やり方を変えるためにツールを導入することで劇的に変わった例を、コンサルの現場でもいくつも見てきました。

大貫:プロセス改善のお手伝いをしているときも、そう思う瞬間はありますね、「あ、この会社変わったな」と。

長沢:そう、確実に現場の空気が変わる瞬間がありますね。その1つの例が「無駄な会議が減り、現場での会話が増える」というものです。もっと定性的な表現をすれば「雰囲気が良くなる」「良くないものを良くないと言える」。こういう空気に現場が変わることは非常に重要です。

 隣の人間が何をやっているか分からない、そんな現場でいくら会議をやっても、問題点を洗い出すだけで精一杯で、解決にも向かわないし、雰囲気も良くなりません。ツールを使うとよく“定量的な数値を”ということにこだわりたくなる人がいらっしゃる。気持ちは分かるんですが、現場を見てきて、定性的な変化もすごく大切だなと思うんですよ。

 ツールはまず、現状を見える化する。それから、1つだけでもいいからできることを決める。たとえば「ソースコードのバージョン管理をちゃんとやる」とか、そのレベルで最初は十分なんですよ。そこを糸口にして「ソースコードのコミットのタイミングが人によって違っていた。それくらい同じにしようよ」とか会話が拡がっていく。こういう定性的な雰囲気は、無理に“組織横断的な横串展開”なんかをやるよりも、ずっと浸透しやすいんです。数字はその後からついてきますから。

 ツールを入れるとなると「費用対効果を出せ」と言われるケースも多いのですが、そこは「現状では費用対効果は出せない」と逆に突っぱねてほしいですね。「費用対効果が出せないからこそ、現状を見える化するためにツールを入れる」という提案に変えてもらったほうがよいと思っています。

アジャイル導入による開発現場のビフォー・アフターをあまた見てきたお二人からは「どうすれば・何をすれば開発者に幸せがもたらされるか」を熟知した安心感があふれている
アジャイル導入による開発現場のビフォー・アフターをあまた見てきたお二人からは「どうすれば・何をすれば開発者に幸せがもたらされるか」を熟知した安心感があふれている

共有したいのに誰もが隠す「失敗情報」を出したくなるツール

大貫:ただ、製造業に話を戻すと、そう簡単にはいかない部分もたしかにあるんですよね。先ほども話したように、現場では環境も意識も変わりつつある。世の中が変わっているのだから作り方も変えないといけないと、みんな強く思っている。でも、ツールを入れるだけでは改善しにくい部分があって、それはやはり文化の問題が根強いのかなと。日本の製造業は「正しい情報を記録する」ということにはすごく積極的です。ところが「不確かな情報を共有する」という文化はまったくないんですね。噂とか、思いつきとか、失敗の原因とか、そういうことは記録から除外してしまうんです。

――しかし、現場が欲しがるのはきっと失敗情報でしょうね。

大貫:そのとおりなんです。失敗の情報や不確かな思いつきが誰かの役に立つ、そういうモチベーションをもってもらえるようになれば、きっと製造業の現場はもっと生産的になれるんじゃないでしょうか。そういう意味で、Confluenceは、何か情報を発信したくなるツールだと思います。

長沢:一方、JIRAは隣の人との連携を強化してくれるツールです。現場で誰が何をやっているのか、それを抽象化して見ることができるから、情報共有の速度が速くなります。現場の人は自分の作業に注力しがちなので「成果物」に目が行きますが、情報共有するには「行動」が見えることが大切なのです。そういう意味で、製造業の現場には本当にJIRAを入れてほしいですね。人が本来するべきコミュニケーションを図りやすくしてくれますから。

大貫:JIRAは、情報にステータスを持たせることができますからね。「このバグは直ったのか、直っていないのか。誰がいつ直したのか」ということがすぐに判明します。現場ではJIRAのチケットIDを指して「500番のバグなんだけど」という感じで会話が進むシーンもよくあります。こうしたところでもコミュニケーションが速くなるのを実感できるはずです。

長沢:ツールを入れるだけでコミュニケーションが良くなるとは私も思っていません。でも、JIRAやConfluenceを入れることで、「コミュニケーションがうまくいっていない」ことがあぶり出されるわけです。これも大事な見える化の一環ですね。ツールだけではダメ、でもツールがないと問題の見える化すらできない、ということもよくありますから。

――今日は開発現場、とくに製造業に関してのお話をずいぶんしていただきましたが、最後にアジャイルに悩む開発現場の方々へメッセージをお願いできますか。

大貫:何か作業をアサインされたとき、「どうやってやるのがベストか」と考えると同時に「より短い時間で作業を終わらせるにはどうしたらいいか」を考えてみてほしいですね。そう考えることで、自分に投資すべき技術分野も分かるでしょうし、ツールの有用性も理解しやすくなるのではないでしょうか。与えられた作業を機械的にこなすのではなく、「より良い方法は」「より短く済ませるには」と考える時間を少しだけでいいから常に持つ。こうした姿勢はソフトウェア開発のすべての場面で必要で、組織をより良く変えていく原動力になると信じています。

Atlassian製品を通じてあらゆる現場に“魅力あるソフトウェア開発”をデリバリーしていく盟友のお二人
Atlassian製品を通じてあらゆる現場に“魅力あるソフトウェア開発”をデリバリーしていく盟友のお二人

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株式会社gloops様 | JIRA Software、WBSガントチャート導入事例

 本資料は、Atlassian社のツール「JIRA Software」などを使用して開発プロセスの見える化を行い、劇的なプロセス改善と生産性向上に成功した、株式会社gloops様の事例を紹介するものです。他のツールを使って一度は失敗したものの、JIRA Softwareに変えたことでなぜ成功できたのか。併せて行った導入時の配慮とは何か。同様の悩みを抱える現場の方々のヒントになる内容です。ぜひご覧ください!

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この記事の著者

五味 明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。 Twitter(@g3akk)やFacebookグループ(IT NOW powered by g3akk)でITニュースを日々発信中。北海道札幌市出身 / 東京都立大学経済学部卒

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市古 明典(編集部)(イチゴ アキノリ)

CodeZine編集部3年目の44歳。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より現職。9月から翌年2月まではNFL観戦のため、常時寝不足。...

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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