すべてのプロダクトがAIを利用するようになる
インテリジェントエッジとインテリジェントクラウドにはAI技術も欠かせない。「すべての人々がより多くことをできるようにする」というミッションを掲げるマイクロソフトは、これからの企業やユーザーは自由にAIが使えるべきであるとして、AIの民主化も進めている。AIの存在がより身近になれば、人や企業のできることの幅が広がるからだ。
マイクロソフトは25年以上AIの研究を行ってきたが、昨年、AI研究を含むすべての研究開発部門を統合して「Microsoft Research & AI」を立ち上げた。すべてのプロダクトにAIを取り込むことが目的だが、これからの製品開発のスタンダードとなることを目指している。例えば、Office 365にはすでにAIを応用したアシスタントが実装されている。
AIの民主化では、5つのサービスを提供している。AI研究の最先端に近いところでは深層学習フレームワークであるCNTK(Cognitive Toolkit)、機械学習用のインフラであるAzure Machine Learning Studio、認識APIサービス、チャットボット、パーソナルアシスタント(Cortana)が代表例だ。認識APIは画像認識や音声認識、翻訳機能を提供しているが、ニューラルネットワークを利用した翻訳サービスが人気だと言う。機械学習サービスでは、AIの専門家でなくてもデータの機械学習分析が可能であり、ファイナンスの部門が売り上げ予測を営業部隊より正確に計算するという事例もでていると言う。
日本のアジャイル導入はハードルが高い
アプリ経済では、スピード感をともなった開発とサービス展開(デプロイ・運用)が求められる。従来型のパッケージ販売やシステム構築は時代遅れとなり、製品の開発プロセスそのものも変える必要がある。Visual Studioが、DevOpsによる開発プロセスに対応し、マルチデバイス、マルチプラットフォームに対応し、さまざまなクラウドサービスを前提とした開発もできるように進化しているのはそのためだ。
しかし、伊藤氏は、日本ではまだ開発プロセスの改革、DevOpsに対する認識が不十分で、アジャイルの導入は難しいとも指摘する。
「これからの企業が生き残るには、エッジ、クラウド、AIを使いこなす必要があるが、そのために欠かせないアジャイルは、日本での導入難度は残念ながら主要先進国ではトップクラスだ。不確実性を忌避し、長期指向、男性社会、個人の自立が低いといった特性が、アジャイルのようは変革を困難にしていると思われる」
伊藤氏は、ホフステードのパワーディスタンス分析(パワーディスタンスが大きいほど貧富の差が激しい階級社会とされる)をもとにした評価から、以上のような厳しい指摘をする。その指摘は、日本の単位時間当たりの生産性の低さにも現れている。米国を100とすると日本は62であり、GDPが伸びない原因の一つともされている。
ITプロフェッショナルの現場での課題
これらの問題は、ITプロフェッショナルの現場では、次のような問題点として顕在化していると言う。
- IT技術者が重要視されていない
- IT技術者の能力が生かされていない
- 時間を無駄にしている
- 給料が低い
- 労働時間が長い
- 従業員満足度が低い
では、どうすればいいのか。「DevOpsの時代、企業のITシステムやサービス開発をSIに丸投げしているようではダメだ。すべての企業はソフトウェアカンパニーであるべき。そしてソフトウェア開発力が企業の競争力となる。そのためには企業の貴重な財産であるITプロフェッショナルを生かす投資をすること」と伊藤氏はいう。
「投資する余力がないから困っている」という声が聞こえそうだが、なにもしなくても、旧来の大型開発案件の多重請負で成立していた市場は、モバイル・クラウドファースト時代の到来とアプリ経済の拡大とともに確実に縮小していっている。開発プロセスを変革させ、DevOpsに対応できるかどうかが、生き残るためのこれからの企業価値として問われている。
