現場で役立つ、実践的な力が身に付くことを期待
まずは2015年度、2016年度とトップエスイー修了生を輩出されている、東芝デジタルソリューションズ株式会社 官公ソリューション事業部の古賀茂樹氏と2016年度の修了生である井無田輝氏に話を伺いました。
――まずは事業部の紹介をお願いいたします。
古賀茂樹氏(以下、古賀):東芝デジタルソリューションズ株式会社は、東芝グループの4つの注力事業領域である「社会インフラ」「エネルギー」「電子デバイス」「デジタルソリューション」のうち、「デジタルソリューション」事業領域の中核企業としてシステムインテグレーションおよびIoT/AIを活用したデジタル・サービスソリューションを提供しています。官公ソリューション事業部は、その名の通り官公庁向けに、行政内部の業務効率化や国民向けサービス向上に資するシステムを提供しています。システムインテグレーターとして、お客さまが業務で使用されるシステムについて、それぞれ固有なご要望を確認し、システムの提案、構築、運用、保守まで、ライフサイクル全般にわたってサポートしています。また近年では、AIやIoTなどをシステムに組み込み、官民でのデータ利活用を推進することが求められており、従来のITとは異なる領域においてのデジタル・トランスフォーメーションにも力を入れています。
――貴事業部からは、トップエスイーに受講生を2015年、2016年と送り出していただいてます。その経緯をお話しいただけますでしょうか。
古賀:2011年ごろから始まった社内の教育制度の見直しに伴い、私たちの事業部でも、教育制度を議論する委員会が立ち上がりました。私も副委員長の立場として、技術者の育成についてさまざまな議論を行ってきました。その中でスペシャリストだけではなく、全体をまとめることができるITアーキテクト、プロジェクトマネージャーといった人材育成が必要であり、技術者レベルの底上げと同時にトップの育成も必要だと考え始めました。
同じタイミングで、トップエスイー代表の本位田真一先生にトップエスイーをご紹介いただきました。トップのアーキテクト育成にこれはいいなと。トップエスイーは、「ソフトウェアエンジニアリングの技術・理論・ツールを使いこなすスーパーアーキテクトを育成する」教育を実施されていますよね。まさにスーパーアーキテクトの育成が弊社にも必要であると考えました。
――ありがとうございます。そのスーパーアーキテクト育成においてトップエスイーに求めるものは、アカデミックな体系的知識でしょうか、より実践的なものなどを重視した教育でしょうか。
古賀:どちらかと言えば、より実践的なものですね。技術者教育に関して、社内でもアカデミックで体系的なものはあったのですが、もっと自分で手を動かして成果を出すようなことが必要だと考え、そちらをトップエスイーに期待しました。
普段の業務や本などを通した自己啓発などでは得られないことなどを、修了制作といった実践的な活動から得てもらいたいです。修了制作のテーマは、かなり業務と密接なものを選定できると聞いています。経験論だけではなく、実務的なものをロジカルに説明できるようになるのは非常に魅力的ですね。
通常ITアーキテクトというものは、現場で一つひとつ経験しながら――ある意味痛い目に遭いながら、育っていく部分があります。トップエスイーを受講することによって、痛い目に遭う前に、あらかじめ勉強していたことを実際の業務に役立てることができるのではないかと思います。
井無田輝氏(以下、井無田):私の修了制作も、最初から現場で使えることを想定して取り組みました。現在はまだ試行中の段階ですが、実践で活用できるものにしていくつもりです。
また、演習がカリキュラムとして組まれている講義も多く、座学だけでは得られない内容を習得することができました。
メインで受講していた要求工学の講義は特に面白く、お客さまからの要求をチームに伝える際、講義で学んだゴール指向の考え方は非常に役立ちました。また、チームで取り組んだ演習では、メンバーそれぞれの職種や所属企業によってさまざまな観点があることを体感できました。
――そういった意味で、トップエスイーは実践的と捉えられるのですね。その他に期待することはありますか。
古賀:他社との人脈を得られることについても期待しています。普段仕事をしていると、このような形で他社の方と接する場面というのは少ないですから。
――確かに、トップエスイー受講生の間で講義の後に飲み会をしたり、一緒にご飯を食べたり、悩み相談をお互いにしたりなどといったこともよく聞かれますね。
トップエスイーの受講が、社内評価制度のインセンティブに
――トップエスイーの受講生はどのように選抜されるのでしょうか。
古賀:私たちは事業部として受講生を送り出しています。弊社の教育体系には入社から3年目、6年目、10年目の年度に、技術発表などを行う「ワークアサインメント」と呼ばれる制度があります。6年目の修了者の中でトップの成績をおさめた者を、トップエスイーの受講生として送らせていただいています。
――なるほど、まさにトップの育成ですね。6年目の修了生となると、受講生の年代は30代前後になるのでしょうか。
古賀:そうですね。中堅と呼ばれる年代の者が多いです。
――井無田さまもこうした経緯で受講されたのでしょうか。
井無田:はい、上司から話をもらいました。私が受講する前年度に選抜された同僚からも話を聞き、実践的な講義だけでなく、普段触れることのないアカデミックな内容がある点も魅力に感じました。
――ありがとうございます。業務とトップエスイーの両立は大変といった声をよく聞きます。工夫された点はありますか。
井無田:一つの分野の講義は決まった曜日に集中して開講されていたので、事前に調整することができました。また、業務扱いで受講できていたこともあり、職場の理解と制度は重要だと感じました。私の場合はモバイルPCを使用して、一部の業務については社外で対応しました。
――職場のサポートがあるからこそ、集中して取り組むことができるのですね。では先ほど触れられた、ワークアサインメントの制度についてもう少し詳しく説明をお願いできますでしょうか。
古賀:弊社では、社員全員に対して入社から3年目(初級)、6年目(中級)、10年目(上級)に一定の技術・知識基準を満たしているかの審査が行われます。技術者においてこの審査の項目は、技術報告書の執筆や発表の他、情報処理の資格、TOEIC、特許など多数あり、それらに合格しなければなりません。
――かなり厳しい基準ですね。その全ての項目を満たしていて、さらにその成績トップの方をトップエスイーに送られているのですね。
古賀:そうですね。ワークアサインメントは社員にとって非常に大変なので、トップエスイーを受講できる権利が、ワークアサインメントを頑張るためのインセンティブにもなればいいなとも考え、選考を行っています。
――お話を聞いていると、人材育成に非常に力を入れている印象を受けます。全社的に取り組んでいるのでしょうか。
古賀:はい。弊社は、具体的な製品だけを売っているわけではなく、人材が資本なので、付加価値の創造と提供ができる人材の育成に力を入れています。また、我々の官公ソリューション事業部だけでなく、東芝デジタルソリューションズの全社員がワークアサインメントに取り組んでいます。
――トップエスイーの受講の効果、修了生の成果というものは感じられますか。
古賀:修了生には半期に1回開催される事業部のプロジェクト発表会で、トップエスイーでの経験を発表してもらっています。発表を聞くと、それぞれ苦労したと思われるものの、本人にとっても非常に良い経験となった印象を受けます。
事業部でのトップエスイー修了生はまだ2人と始まったばかりの取り組みで、組織全体に対しての効果はまだはっきりとしていません。しかし、繰り返し受講生を送ることにより、例えば受講者の集まりなどができてそこからイノベーションが生まれる、といったことも期待できるのではないのかと考えています。
――ぜひそうなるよう、トップエスイーの講師ともども頑張りたいと思います。本日はありがとうございました。
東芝デジタルソリューションズ株式会社 会社概要
東芝デジタルソリューションズ株式会社は、東芝グループの4注力事業領域(「社会インフラ」「エネルギー」「電子デバイス」「デジタルソリューション」)における「デジタルソリューション」事業領域の中核企業としてシステムインテグレーションおよびIoT/AIを活用したデジタル・サービスソリューションを提供します。
東芝グループが140年以上にわたり培ってきた“ものづくり”と、産業現場の知見を生かしたIoTやAIなどの先進技術を結集し、デジタル変革の推進によって、お客様と共に新たな価値を創造(共創)していきます。