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高度IT人材を育成する産学連携の架け橋「トップエスイー」(AD)

4人の修了生が語る「トップエスイー」での学びからもたらされた「さまざまな変化」

高度IT人材を育成する産学連携の架け橋「トップエスイー」 第6回

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 国立情報学研究所が実施している社会人エンジニア向けの教育プログラム「トップエスイー」では、ソフトウェア工学を基礎として開発現場の課題を解決できる人材の育成を目指し、過去11年にわたり多くの修了生を輩出してきた。約1年の講義と演習を通じて得られる成果とは、具体的にどのようなものなのだろうか。今回、2016年度の「第11期」を受講した4人の修了生に、受講を終えた感想を聞いた。

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はじめに

 2005年にスタートした国立情報学研究所のエンジニア向け教育プログラム「トップエスイー」。10年以上にわたって多くの修了生を輩出し、現在は「第12期」が開講中だ。その長年にわたるIT人材育成に対する実績から、平成24年度の文部科学大臣賞を受賞している。

 トップエスイーの基本コースといえる「トップエスイーコース」は、「講義」「修了制作」などのカリキュラムを通じて、ソフトウェア工学の基礎知識をはじめ、先端の技術的トピックに関する知見の習得、3カ月間にわたる修了制作を通じた課題解決能力の養成が行える内容となっている。

 2017年度開講の「第12期」からは、より実践を重視した「アドバンス・トップエスイーコース」が新設され、従来の「トップエスイーコース」は、「ソフトウェア工学の基礎をしっかりと身につけ直したい」「先端の技術トピックに関する多面的な知見を得たい」という受講生のニーズによりマッチしたカリキュラムとして、修了制作が「ソフトウェア実践開発演習」として生まれ変わるなど、再編されている。

第12期からのトップエスイーのコース
第12期からのトップエスイーのコース

 では、実際に1年間の受講を終えた修了生たちは、「トップエスイー」でどのようなテーマに取り組み、何を得たのだろう。また、その後の業務やエンジニアとしての意識に、何らかの変化はあったのだろうか。今回、4人の「トップエスイーコース」第11期(2016年度)修了生に話を聞くことができた。彼らの生の声に耳を傾けてみよう。

出席者

杉本駿氏

 キヤノン株式会社にて、組み込み系のソフトウェア開発に携わる。内製で開発するLSIの設計確定前に、要件として求められている性能が出るかどうか、抽象化したプロトタイプモデルを使い、ソフトウェアでシミュレーションを実施している。

関口敦二氏

 株式会社富士通研究所にて、WebAPIをメインで研究。近年、さまざまな企業が自社の強みを持ったシステムをWebAPI化することにより、顧客やパートナー企業に高い価値を提供する動きが活発になっている。そのような状況で想定される課題について研究開発している。

キヤノン株式会社 デジタルシステム開発本部 通信システム開発センター 通信技術第一開発部 通信技術13開発室 杉本駿氏(左)/株式会社富士通研究所 システム技術研究所 サービス指向型ソフトウェア開発技術プロジェクト 主任研究員 関口敦二氏(右)
キヤノン株式会社 デジタルシステム開発本部 通信システム開発センター
通信技術第一開発部 通信技術13開発室 杉本駿氏(左)/
株式会社富士通研究所 システム技術研究所
サービス指向型ソフトウェア開発技術プロジェクト 主任研究員 関口敦二氏(右)
藤澤克貴氏

 テクマトリックス株式会社にて、C/C++対応の自動テストツール「C++test」における、UIや各種ドキュメントの日本語化、プリセールス、運用サポート、導入支援など、導入や運用に関わるさまざまな業務を行う。

明神智之氏

 株式会社日立製作所にて、ソフトウェアの検証やテストに関する研究に従事。社内やグループ会社で扱う製品に関して検証を実施・支援する業務にも携わっている。

テクマトリックス株式会社 システムエンジニアリング事業部 ソフトウェアエンジニアリング技術部 ソフトウェアエンジニアリング技術一課 藤澤克貴氏(左)/株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ システム生産性研究部 研究員 明神智之氏(右)
テクマトリックス株式会社 システムエンジニアリング事業部 ソフトウェアエンジニアリング技術部
ソフトウェアエンジニアリング技術一課 藤澤克貴氏(左)/
株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ
システム生産性研究部 研究員 明神智之氏(右)

モデレーター

吉岡信和氏

 トップエスイー講師。「設計モデル検証(基礎)」「セキュリティ概論」「設計モデル検証(応用)」「安全要求分析」の講義を担当する。

国立情報学研究所 GRACEセンター NIIアーキテクチャ科学研究系 准教授 総合研究大学院大学 兼任 博士(情報科学) 吉岡信和氏
国立情報学研究所 GRACEセンター NIIアーキテクチャ科学研究系 准教授
総合研究大学院大学 兼任 博士(情報科学) 吉岡信和氏

受講のきっかけは「十人十色」

吉岡:まず、皆さんが「トップエスイー」を受講することになったきっかけと、実際に受講してからの印象について教えてください。

関口:弊所の所長は、トップエスイーの設立時にプログラム開発に関わったご縁があります。それもあって、エンジニア教育の場としての「トップエスイー」や、講師の皆さまに対する所長の信頼が厚く、スタート以来、当研究所では毎年、所員が受講しています。第11期は、私に推薦がありました。

 私の現在の所属であるシステム技術研究所は、ソフトウェアエンジニアリングを専門としていますが、私は以前、別の部署でネットワークや運用管理を中心に扱っていました。ソフトウェアエンジニアリングについては、ずっと独学でやってきており、一度、系統的に学ぶ機会が欲しいと感じていたので、いい機会と考え、トップエスイーの受講を決めました。

吉岡:関口さんの場合、最初の段階では、特に講座の方向性などは決めずに、ソフトウェア工学全般について学ぼうと考えておられたのですね。

関口:そうだったのですが、比較的早い段階で講師の方と面談をして、「アーキテクチャ系」「要求工学系」「クラウド系」など、特に「迅速に作るための技術」に関する講義を中心に選択したらどうかと勧められました。

 当初は、なるべく多くの講義を幅広く受けることを希望していましたが、実際にそうしていたら、恐らく消化しきれずに大変なことになっていたでしょう。面談でのアドバイスをもとに分野を絞ったのは、結果的に良かったと思っています。

藤澤:私の所属する事業部では、部の方針として、トップエスイーの第8期から毎年受講生を出しています。第11期に関しても、社内で説明会が開かれ、受講生を募っていました。同僚の修了生からも評判を聞いており、非常にためになったと聞いていたので私も受講することにしました。

 お客さまと接する中で、「品質向上」以外にもソフトウェア全般に関する幅広い知見が必要になる場面が多く、一度、きちんと勉強をしておきたいという思いがありました。

吉岡:受講された講義は、やはり、日ごろの業務とつながりのある「テスト」「検証」に関するものが中心だったのでしょうか。

藤澤:当初はそう考えていたのですが、いろいろと受講しているうちに、近年、さまざまな分野で関心が高まっている「クラウド」や「ビッグデータ」に関する講義に興味が出てきたので、そのあたりを集中的に受講する形になりました。

杉本:私も同じく、同僚の修了生から評判を聞いていたことや、上司からの勧めがあったことが大きいですね。私の場合、大学でソフトウェア工学を学んでいたので、特にアーキテクチャの最新の動向などを改めて学び直してみたいといった思いがありました。

明神:私も同じですね。周囲に過去の受講生がいて、「良かった」と話を聞いていたのが大きかったです。私自身のモチベーションとしては、これまでも現場の課題を解決するために独学で学んではきたのですが、一度系統立ててソフトウェア工学を学んでおきたかったというのがあります。

 私も、受講開始後すぐに教官と面談をして、自分が改めて勉強し直したい思いが強かった「アーキテクチャ」と、自分のスキルを高めるための「形式手法」を中心に学ぶことにしました。

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密度の高い講義についていくには本人の「努力」と周囲の「サポート」が重要

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この記事の著者

高橋 美津(タカバシ ミツ)

PCやネットといったIT分野を中心に、ビジネスやゲーム分野でも執筆を行うフリーランスライター。Windowsユーザー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/10550 2017/12/14 14:54

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