SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

高度IT人材を育成する産学連携の架け橋「トップエスイー」(AD)

4人の修了生が語る「トップエスイー」での学びからもたらされた「さまざまな変化」

高度IT人材を育成する産学連携の架け橋「トップエスイー」 第6回

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 国立情報学研究所が実施している社会人エンジニア向けの教育プログラム「トップエスイー」では、ソフトウェア工学を基礎として開発現場の課題を解決できる人材の育成を目指し、過去11年にわたり多くの修了生を輩出してきた。約1年の講義と演習を通じて得られる成果とは、具体的にどのようなものなのだろうか。今回、2016年度の「第11期」を受講した4人の修了生に、受講を終えた感想を聞いた。

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

はじめに

 2005年にスタートした国立情報学研究所のエンジニア向け教育プログラム「トップエスイー」。10年以上にわたって多くの修了生を輩出し、現在は「第12期」が開講中だ。その長年にわたるIT人材育成に対する実績から、平成24年度の文部科学大臣賞を受賞している。

 トップエスイーの基本コースといえる「トップエスイーコース」は、「講義」「修了制作」などのカリキュラムを通じて、ソフトウェア工学の基礎知識をはじめ、先端の技術的トピックに関する知見の習得、3カ月間にわたる修了制作を通じた課題解決能力の養成が行える内容となっている。

 2017年度開講の「第12期」からは、より実践を重視した「アドバンス・トップエスイーコース」が新設され、従来の「トップエスイーコース」は、「ソフトウェア工学の基礎をしっかりと身につけ直したい」「先端の技術トピックに関する多面的な知見を得たい」という受講生のニーズによりマッチしたカリキュラムとして、修了制作が「ソフトウェア実践開発演習」として生まれ変わるなど、再編されている。

第12期からのトップエスイーのコース
第12期からのトップエスイーのコース

 では、実際に1年間の受講を終えた修了生たちは、「トップエスイー」でどのようなテーマに取り組み、何を得たのだろう。また、その後の業務やエンジニアとしての意識に、何らかの変化はあったのだろうか。今回、4人の「トップエスイーコース」第11期(2016年度)修了生に話を聞くことができた。彼らの生の声に耳を傾けてみよう。

出席者

杉本駿氏

 キヤノン株式会社にて、組み込み系のソフトウェア開発に携わる。内製で開発するLSIの設計確定前に、要件として求められている性能が出るかどうか、抽象化したプロトタイプモデルを使い、ソフトウェアでシミュレーションを実施している。

関口敦二氏

 株式会社富士通研究所にて、WebAPIをメインで研究。近年、さまざまな企業が自社の強みを持ったシステムをWebAPI化することにより、顧客やパートナー企業に高い価値を提供する動きが活発になっている。そのような状況で想定される課題について研究開発している。

キヤノン株式会社 デジタルシステム開発本部 通信システム開発センター 通信技術第一開発部 通信技術13開発室 杉本駿氏(左)/株式会社富士通研究所 システム技術研究所 サービス指向型ソフトウェア開発技術プロジェクト 主任研究員 関口敦二氏(右)
キヤノン株式会社 デジタルシステム開発本部 通信システム開発センター
通信技術第一開発部 通信技術13開発室 杉本駿氏(左)/
株式会社富士通研究所 システム技術研究所
サービス指向型ソフトウェア開発技術プロジェクト 主任研究員 関口敦二氏(右)
藤澤克貴氏

 テクマトリックス株式会社にて、C/C++対応の自動テストツール「C++test」における、UIや各種ドキュメントの日本語化、プリセールス、運用サポート、導入支援など、導入や運用に関わるさまざまな業務を行う。

明神智之氏

 株式会社日立製作所にて、ソフトウェアの検証やテストに関する研究に従事。社内やグループ会社で扱う製品に関して検証を実施・支援する業務にも携わっている。

テクマトリックス株式会社 システムエンジニアリング事業部 ソフトウェアエンジニアリング技術部 ソフトウェアエンジニアリング技術一課 藤澤克貴氏(左)/株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ システム生産性研究部 研究員 明神智之氏(右)
テクマトリックス株式会社 システムエンジニアリング事業部 ソフトウェアエンジニアリング技術部
ソフトウェアエンジニアリング技術一課 藤澤克貴氏(左)/
株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ
システム生産性研究部 研究員 明神智之氏(右)

モデレーター

吉岡信和氏

 トップエスイー講師。「設計モデル検証(基礎)」「セキュリティ概論」「設計モデル検証(応用)」「安全要求分析」の講義を担当する。

国立情報学研究所 GRACEセンター NIIアーキテクチャ科学研究系 准教授 総合研究大学院大学 兼任 博士(情報科学) 吉岡信和氏
国立情報学研究所 GRACEセンター NIIアーキテクチャ科学研究系 准教授
総合研究大学院大学 兼任 博士(情報科学) 吉岡信和氏

受講のきっかけは「十人十色」

吉岡:まず、皆さんが「トップエスイー」を受講することになったきっかけと、実際に受講してからの印象について教えてください。

関口:弊所の所長は、トップエスイーの設立時にプログラム開発に関わったご縁があります。それもあって、エンジニア教育の場としての「トップエスイー」や、講師の皆さまに対する所長の信頼が厚く、スタート以来、当研究所では毎年、所員が受講しています。第11期は、私に推薦がありました。

 私の現在の所属であるシステム技術研究所は、ソフトウェアエンジニアリングを専門としていますが、私は以前、別の部署でネットワークや運用管理を中心に扱っていました。ソフトウェアエンジニアリングについては、ずっと独学でやってきており、一度、系統的に学ぶ機会が欲しいと感じていたので、いい機会と考え、トップエスイーの受講を決めました。

吉岡:関口さんの場合、最初の段階では、特に講座の方向性などは決めずに、ソフトウェア工学全般について学ぼうと考えておられたのですね。

関口:そうだったのですが、比較的早い段階で講師の方と面談をして、「アーキテクチャ系」「要求工学系」「クラウド系」など、特に「迅速に作るための技術」に関する講義を中心に選択したらどうかと勧められました。

 当初は、なるべく多くの講義を幅広く受けることを希望していましたが、実際にそうしていたら、恐らく消化しきれずに大変なことになっていたでしょう。面談でのアドバイスをもとに分野を絞ったのは、結果的に良かったと思っています。

藤澤:私の所属する事業部では、部の方針として、トップエスイーの第8期から毎年受講生を出しています。第11期に関しても、社内で説明会が開かれ、受講生を募っていました。同僚の修了生からも評判を聞いており、非常にためになったと聞いていたので私も受講することにしました。

 お客さまと接する中で、「品質向上」以外にもソフトウェア全般に関する幅広い知見が必要になる場面が多く、一度、きちんと勉強をしておきたいという思いがありました。

吉岡:受講された講義は、やはり、日ごろの業務とつながりのある「テスト」「検証」に関するものが中心だったのでしょうか。

藤澤:当初はそう考えていたのですが、いろいろと受講しているうちに、近年、さまざまな分野で関心が高まっている「クラウド」や「ビッグデータ」に関する講義に興味が出てきたので、そのあたりを集中的に受講する形になりました。

杉本:私も同じく、同僚の修了生から評判を聞いていたことや、上司からの勧めがあったことが大きいですね。私の場合、大学でソフトウェア工学を学んでいたので、特にアーキテクチャの最新の動向などを改めて学び直してみたいといった思いがありました。

明神:私も同じですね。周囲に過去の受講生がいて、「良かった」と話を聞いていたのが大きかったです。私自身のモチベーションとしては、これまでも現場の課題を解決するために独学で学んではきたのですが、一度系統立ててソフトウェア工学を学んでおきたかったというのがあります。

 私も、受講開始後すぐに教官と面談をして、自分が改めて勉強し直したい思いが強かった「アーキテクチャ」と、自分のスキルを高めるための「形式手法」を中心に学ぶことにしました。

密度の高い講義についていくには本人の「努力」と周囲の「サポート」が重要

吉岡:みなさん、同僚の方から評判を聞いたり、会社での勧めを受けたりして受講を希望してくださったのですね。しかし、通常の業務を行いながらの受講ということで、時間のやりくりには苦労されたかと思います。仕事との両立という点で、会社側からサポートはありましたか。

明神:部署の方針として「トップエスイー」の受講を勧めているということもあり、ある程度、仕事量を配慮してくれるといった形でのサポートはありましたね。

関口:私の場合も、所長が推薦しているということで、受講に対する職場での理解は得られていました。受講がある場合、そちらを優先的に認めてもらえるというのはありがたかったですね。職場としての勤務形態も自己裁量制になっているので、その範囲内で修了することができました。

藤澤:講義のスケジュールはあらかじめ決まっているので、講義がある日の外出や出張などは、基本的にほかのメンバーに事情を説明して、交代してもらっていました。同僚のサポートもあり、講義には休まずに出ることができました。

杉本:私も上司に考慮してもらい、講義がある日は、そちらを優先することが認められました。ただ、ちょうど年初の修了制作が佳境に入るタイミングと同時に業務が忙しくなり、その時期だけは連日夜中まで起きて、業務と修了制作をこなさざるを得ませんでした。こればかりは、仕方がないですね。

個性豊かな講師陣が展開する実践的な講義やアドバイスは「独学」に勝る

吉岡:実際の講義や指導の内容については、いかがでしたでしょうか。

関口:講師のみなさんには、エンジニアとしての実務経験が豊富な方も多いので、授業がいわゆる「テキストの読み上げ」にとどまらず、現場でのリアルな問題意識に基づいた話が聞けた点がとても勉強になりました。

 少しマニアックな話になってしまうのですが、私には「クラウド実践演習」の中で学んだ「Infrastructure as Code」についての知見が興味深かったです。これはクラウドの運用管理を人手で行うのではなく、コードを利用して自動化するといった、近年注目を集めている考え方です。講義の中では実際に「Jupyter Notebook」というフレームワークを使って受講生がクラウドを作り、運用手順を体験しました。これまでも、そうした手法やツールがあるという知識は持っていましたが、実際に手を動かして、コードとドキュメントを一体化し運用効率を高めていくアプローチを習得できたことは良かったと思います。

藤澤:私も、「クラウド」や「ビッグデータ」に関するトピックは、業界全体の動向として、自分でも多少は勉強していました。しかし、普段の業務とあまり関係がないこともあって、実際に使って何かを作ってみるところまでは進めていませんでした。トップエスイーの講義として受講したことで、実際にそれらを使いながら理解を深めたり、業務の中で扱っている方の話が聞けたりしたのは良かったと思います。

明神:私の場合は、夏期休暇中の集中講義として開講された、証明支援システムである「Coq」に関する授業(定理証明と検証)が良かったですね。実は以前、Coqに関心を持って独学でやろうとしたことがあるのですが、難しすぎて挫折してしまいました。トップエスイーでもCoqに関する講義を受けてみて、やはり難しかったのですが(笑)、一人で取り組むよりも理解が深まったと感じています。

「トップエスイーの講義を受けて、独学で取り組んだ際よりも理解が深まりました」(明神氏)
「トップエスイーの講義を受けて、独学で取り組んだ際よりも理解が深まりました」(明神氏)

 ほかにも「アーキテクチャ」系の講義は、関心の高い受講者が多く、授業での議論が盛り上がって面白かったですね。実際に分析、設計を行う演習では、自分のやり方と人のやり方を見比べながら、違いがどこから出てくるのか、どうすればより良くできるのかと、考えるきっかけを得ることができて勉強になりました。

藤澤:トップエスイーには、さまざまな企業から受講生が参加しているため、そうした方々と知り合い、情報交換ができたのは良かったですね。修了後に交流会を開いて、SNSでグループを作ったり、一部の人で旅行に出掛けたりなど、活発な交流が続いているケースもあるようです。

個々の業務課題の解決に向けて取り組める「修了制作」

吉岡:トップエスイーコースの修了要件には、講義での単位取得のほかに「修了制作」を発表する必要があります。(編集部注:2017年度の第12期よりソフトウェア実践開発演習に変更)みなさんの修了制作のテーマと進め方について、教えていただけますか。

藤澤:私の修了制作のタイトルは「カバレッジとミューテーションスコアの収束を元にした最適な因子間の組み合わせの強さの特定手法の提案」というものです。私は業務の中で、ソフトウェア開発における「単体テスト」の重要性を啓蒙しています。修了制作では、テスト手法のひとつであるオールペア法をとりあげ、オールペア法で生成したテストパターンに対し、妥当なテストケースを得るためには、どのくらいの因子を組み合わせる必要があるのか、その判断のための手法を作ることに取り組みました。

吉岡:藤澤さんの修了制作は、第11期の最優秀賞を受賞されましたね。修了制作は受講期間終盤の3カ月を使って行いましたが、具体的にはどのように進められたのでしょうか。

藤澤:取り組みたいテーマについてのアイデアは持っていたのですが、ゴールをどこに設定するかがなかなか決まらず、最初の1カ月半は指導教官とひたすら議論をしながら方向性を決めることに費やしました。テストそのものについては、私が日ごろ扱っている製品を使うことを決めていたものの、テストパターンをどうやって作り出すかの部分については、OSSを使って、そのコードなども読み込みながら考え、大量にデータを流し込んでは、結果を評価するといったことを繰り返しました。トライ&エラーを続けて、最終的に論文にできる結論が出たのが締め切りの4日前といった状況で、最後は締め切りとの駆け引きに苦労しましたね。

杉本:私も自分の業務における課題解決をテーマに選びました。タイトルは「高抽象度SW/HWモデルによる並行性能検証シミュレータ」です。新しいハードウェアの性能評価にあたっては、設計に基づいたモデルを作成するなどの作業が必要になるのですが、その際の環境構築に非常に手間と時間がかかっているという課題があります。その解決のために、機能を捨象し、性能にフォーカスした、より効率的にシミュレーションが可能な機構を作ることに取り組みました。

 私の場合はテーマを決める際、まず指導の先生に私の業務内容や環境を理解していただくのに少し時間がかかりましたが、1~2週間に1回程度と、頻繁に打ち合わせしていただき、丁寧に指導してもらいました。結果的に、できあがったものは自分が当初考えていた以上の精度があり、当初の予定よりもさらに先までの成果を得ることができました。

明神:私のタイトルは「形式仕様記述を用いたテスト手順の自動生成」です。システムテストを行う際には、さまざまな前提条件を用意する必要があり、その手順を作っていかなければなりません。しかし、実際の現場でテストを行う人は、テストそのものをやりたいわけで、手順の作り込みにはあまり時間をかけたくありません。その手順を自動生成することで、より作業を効率的にしたいと考えました。実際に仕事をする中で「こんなツールがあったら役に立つだろうな」と感じた経験から出たアイデアでした。

 作りたいもののイメージはあったので、テーマ決めはスムーズでした。しかし、それをどう実現するかを考える段階になって、どの手法を使うべきかなどの選択肢が多く出てきてしまい、その絞り込みに悩みました。制作時間が短い中で、どこにフォーカスし、どのように進めていくかという部分で、教官にいろいろとアドバイスをいただきました。

吉岡:修了制作については、日々の業務を通じて「これをやりたい」と明確なテーマを持って取り組んでくださる方が多いですね。しかし、限られた時間内で、どこまで実現できるかを考えると、テーマのどの部分にフォーカスするかは非常に重要です。その点で、トップエスイーの教官は有用なアドバイスを提供できると思います。

関口:私は「マイクロサービスにおける設計・実装パターン抽出」というタイトルで、システムをマイクロサービスアーキテクチャにしようとしたときの課題を解決するための手法を見つけていくことに取り組みました。マイクロサービスを作る中での課題と対策を、パターン化を通じて明確にしたいという試みです。制作にあたっては「評価」の過程が難しかったですね。パターンで記述したものが本当に有効どうかは、多くの事例を通じて検証する必要があり、時間がかかるという問題がありました。結果的に評価のプロセスが完全とは言えないものの、ある程度の成果は得ることができました。

 現在、私は主にWebAPIを通じたシステムのサービス化を研究しています。マイクロサービスアーキテクチャは、その構成要素のひとつです。研究課題の発見や、実際の展開においてどのような課題が生まれる可能性があるかなどを考えるにあたり、修了制作での取り組みは生きていると思います。

吉岡:今、関口さんからも少しお話がありましたが、トップエスイーでの取り組みを、日ごろの業務にどのように生かすかといった観点で感じていることがあれば、ほかの方もご意見をお聞かせください。

藤澤:講義や修了制作の内容をそのまま生かせる業務というのは、あまりないかもしれません。しかし、そこで得た「考え方」については、生かせる部分が多いだろうと思います。例えば私の場合、修了制作で扱った「ミューテーション解析」などは、「ソフトウェアの品質向上」をソリューションとして扱う会社として、今後、取り組んでいきたいテーマでもあります。日々の業務以外に、組織として将来的に目指すべき方向を考えるための「指針」のひとつとして、トップエスイーで学んだことを生かしたいと思っています。

杉本:私は組み込み系のソフトウェア開発に携わっていますが、トップエスイーで学んだ設計手法、プロダクトラインの考え方などは、自分で直接使うことがなかったとしても、業務を進めていくにあたって「知っておくべき考え方」だと思うようになりました。上流から下流までの工程について幅広い知識があることで、自分の業務を新しい視点で見られるようになったと感じています。

明神:私の場合は、本来は上流工程で用いる「形式仕様記述」について、テスト工程などのさまざまな工程で活用するアイデアを、修了制作という機会で実証することができたのが大きかったですね。また、これは業務とは直接関係ないかもしれませんが、ここでの修了制作の成果を、VDM(Vienna Development Method)のツール・応用に関する国際的なワークショップ「Overture Workshop」の場で、論文として発表させていただくことができました。論文の投稿は初夏で、既にトップエスイーを修了した後でしたが、担当の教官に原稿のレビューなどを通じて全面的にサポートしていただけたことは、大変感謝しています。

「ソフトウェア工学」を学ぶことで日本企業の競争力はもっと上げられる

吉岡:では最後に、トップエスイーの修了生として、これから受講する人、受講を検討している人、そして、トップエスイーそのものに対して、メッセージをお願いします。

関口:開発に携わるエンジニアが「ソフトウェア工学」をしっかりと学ぶことで、まだまだ日本企業には、競争力を高める余地が多く残されていると思います。ぜひトップエスイーのようなプログラムを、より多くの企業、エンジニアが活用するようになり、それが日本全体の競争力向上につながっていってほしいと思います。

「トップエスイーのようなプログラムを、より多くの企業とエンジニアが活用するようになり、日本全体の競争力向上につながればいいと思います」(関口氏)
「トップエスイーのようなプログラムを、より多くの企業とエンジニアが活用するようになり、
日本全体の競争力向上につながればいいと思います」(関口氏)

杉本:トップエスイーだけでなく、その修了生の役割として、ここで学んだことを「いかに自分の周囲に広げていけるか」といったことがあると思います。例えば、私はここで「モデル検査」が非常に有効なツールであることを知りましたが、多くの企業では日々の業務の中で「モデル検査をやりたい」と言っても、その有効性を組織に認めてもらうのには多大な手間がかかるのも現実でしょう。そうした状況を変えていくためにできることを、修了生の立場からも考えていきたいです。

明神:世の中にはソフトウェア開発に関するさまざまなツールや手法があり、現在は独学でも、それらをある程度使えてしまう状況だと思います。ただ、その裏にある理論や裏付けを深く理解しているかどうかは、使いこなせるレベルの高低や、実際に役立つものを組織に広げていけるかどうかに関わってきます。「トップエスイー」は、そうしたことを学ぶことができる絶好の場であり、魅力的なプログラムです。ぜひ受講し、さまざまなものを得ていただきたいと思います。

吉岡:ありがとうございました。

トップエスイープロジェクトリーダー、国立情報学研究所 本位田真一氏のコメント

国立情報学研究所 副所長 GRACE(先端ソフトウェア工学・国際研究)センター長 東京大学 大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻/創造情報学専攻 教授 英国UCL(University College London) Visiting Professor 本位田真一(ほんいでん・しんいち)氏
国立情報学研究所 副所長 GRACE(先端ソフトウェア工学・国際研究)センター長
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻/創造情報学専攻 教授
英国UCL(University College London) Visiting Professor 本位田真一(ほんいでん・しんいち)氏

 2017年度よりトップエスイーは、「トップエスイーコース」と「アドバンス・トップエスイーコース」の2コース制となりました。

 トップエスイーコースでは、ある程度の現場経験を積んだ方たちを対象に、ソフトエンジニアリングを学術的な視点から幅広く体系的に見る機会を提供しています。技術者は一生勉強、常に技術を極めていかなければなりません。トップエスイーコースは、受講生の「技術者として、次の10年の足場を固められる機会」になればと考えています。本年度からは、受講者がグループで課題に取り組む「ソフトウェア開発実践演習」が始まりました。

 トップエスイーの多くの講義科目には演習があり、グループ演習も多数あります。こうしたグループ演習は、トップエスイーでしか得られない貴重な経験の一つだと考えています。通常の講義科目のグループ演習は、講師が与えた課題を解くという形態が一般的です。しかし、ソフトウェア開発実践演習では、自分たちで課題を練り上げていくことから始めます。異なるバックグランドを持った他社の受講生たちと、グループでさまざまな意見を交わしながら、あらゆる視点や角度から課題の発見・設定から解決までを共同で行います。この演習では、課題の発見と解決に関する実践力、応用力などの総合的な能力を身につけることができると考えています。

 受講生の反応も非常に良く、演習の期間を延長してもう少し続けたいといった申し出もあります。グループワークだからこそ、たどり着けた課題もあるようです。普段業務を行っている技術者が、外に出て技術について他人と意見を交わすこと自体が非常に良い経験になっており、さまざまな発見があるようです。いわゆる、技術に関するコミュニケーション能力の育成にも役立っているのではないでしょうか。

 アドバンス・トップエスイーコースは、具体的な課題を持って研究を行いたい、研究を広げたいという方はもちろん、教科書に載っていないような最新技術も含めて、基礎から深くしっかり学びたい方を対象にしています。「アドバンス」というと、トップエスイーコースのさらに上のレベルというイメージになりがちですが、必ずしもそうではないことを実際に開講してから改めて感じました。

 自身の興味に応じて、ある最新の技術分野に関して一点集中で学び始め、それを掘り下げていくのが、アドバンス・トップエスイーコースです。しかしそれには、同時にその周辺の既存技術や知識を網羅的に学ぶことが必然となります。アドバンス・トップエスイーコースの受講生は、修了の単位としてトップエスイーコースの講義を受講する必要はありません。しかし、トップエスイーのどの科目も自由に受講できるため、必要に応じてさまざまな科目を自分で選択して受講しています。

 その意味では、トップエスイーコースもアドバンス・トップエスイーコースも、ソフトエンジニアリングを学術的な視点から幅広く体系的に見る機会を提供している点は変わりません。比較的ボトムアップで知識を得ていくのがトップエスイーコース、一つの最新の技術分野を取っ掛かりにして網羅的に知識や技術も身につけていくというのがアドバンス・トップエスイーコースであると思います。

 どうしても仕事の現場では約束できること、確実なことをやっていくのが優先されてしまいます。それよりさらに先の、うまくいくかまだ分からないけれど、イノベーションにつながるかもしれない新しい技術分野に積極的に取り組むという点も、「アドバンス」トップエスイーコースであるといえます。

 トップエスイーでは、ほぼ全ての講義がリアルタイムで遠隔受講可能になっています。講義のすべての回を遠隔で受講することもできますし、例えば今週は出張で北海道にいるから遠隔受講し、来週は神保町で対面講義を受けるといったことも可能です。また、当日どうしても業務が長引き、移動していると講義に遅刻してしまうなどという場合も、急きょ、その回だけ遠隔受講に変更するということもできます。このように、より柔軟に、幅広く、たくさんの方にトップエスイーでの充実した機会を提供できるようになっています。ぜひトップエスイーで、自分の技術者としてのキャリアを磨いてください。そして、それを職場に持って帰り、自社にイノベーションを起こすような技術者になってください。

[本位田氏インタビュー:著・聞]河井理穂子(国立情報学研究所・埼玉工業大学)

2018年度受講生を募集中です!

 ハイレベルのエンジニア育成に定評がある「トップエスイー」は現在2018年度の受講生を募集中です。受講を検討中の方、受講に意欲がある方は、こちらのページをご覧ください。2018年度の受講申し込みは、2017年12月18日~2018年2月28日の期間で受け付けています。

 また、トップエスイーでどのようなことを学べるのかは、CodeZineの連載記事も参考になるかと思います。こちらも併せてご覧ください。

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/10550 2017/12/14 14:54

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング