いまの睡眠時間で、より良く眠れる方法がわかる
2017年に流行したキーワードに「睡眠負債」という言葉がある。十分な睡眠を取っていないと、心身に悪影響が出る危険性を指摘した言葉だ。
この言葉が流行した背景には、社会が睡眠について真剣に考えるようになったことが挙げられる。睡眠にまつわる書籍が次々と出版され、睡眠時間や質に注目が集まったことがあるが、その火付け役となった本が『スタンフォード式 最高の睡眠』だ。
著者の西野精治氏は、米スタンフォード大学医学部精神科教授であり、スタンフォード睡眠・生体リズム研究所の所長を務める。今回のセッションは残念ながら欠席で、その代わりにサンマーク出版で本書の編集を担当した梅田氏がプレゼンを行った。
梅田氏によると、この本の最大の特徴は、「科学的に実証された方法で睡眠の質を高めるプラン」に終始していることだという。既存の睡眠本によくあるような「睡眠が大切」というメッセージや、「正しい睡眠とは」という理想論に寄らず、いまの睡眠を高めるための具体的な方法論を、さまざまな実験データを基に解説しているのが本書だ。
プレゼンでは、本書のエッセンスともいえる「眠りの質を上げる方策がいくつか紹介された。たとえば「最初の90分をしっかり眠る」というルールがある。眠りを中断させる断眠実験から導き出されたルールで、最初の90分中に睡眠が途切れると後が続かないが、最初の90分にしっかり眠れれば、眠気が解消されて成長ホルモンも8割くらい出るという。
また、睡眠時には手足の体温が上がり、体の深部体温が下がる生理システムになっている。そこで夜寝る前に冷やしトマトなどを摂取して内臓温度を下げることは非常に有効だ。なお、就寝時の靴下は「避けたほうがいい」(梅田氏)という。
梅田氏は最後に、「本書を読めば、睡眠時間がいまのままでも、ぐっすり眠れますし、目覚めもすっきりしますし、あと日中の眠気や、睡眠不足対策もできるということを保証します」と語り、プレゼンを締めくくった。
ゲスト審査員が選んだのは、睡眠と機械学習
ここまでのプレゼンを受け、会場参加者はスマホや投票用紙で最終投票を行う。その間に発表されたのが、ゲスト審査員による特別賞だ。
ゲスト審査員のひとりである、スマートニュース株式会社 執行役員 メディア事業開発担当の藤村厚夫氏は、『スタンフォード式 最高の睡眠』を選出。自らも昼間の眠気に悩まされることがあるという藤村氏は、この本を読んで初めて「ナルコレプシー (narcolepsy) 」という概念を知り、睡眠について考える良い機会になったそうだ。そして何よりも、「大事な時に昼寝をしてしまう社員に勧めたい必読の書」(藤村氏)とのことで、この本の選出に至ったという。
続いて、マイクロソフト株式会社コマーシャル・ソフトウェア・エンジニアリング本部 テクニカルエバンジェリスト 千代田まどか氏が選んだのは『機械学習入門』だ。かわいいものが好きで、「楽しくないと、本は読めない」と語る千代田氏は、「楽しく読めて、イラストもかわいい」と、本書を絶賛。また、笑いの絶えない、ユーモアあふれる大関氏のプレゼンが決め手となり、特別賞に本書を選んだ。
最後に、丸善ジュンク堂書店 営業部 平木圭太氏から、ゲスト大賞を発表。選ばれたのは、大関氏の『機械学習入門』だった。その理由として平木氏は、「入門書といわれる本が多いが、本当に初心者や専門家以外を対象にした書籍はほとんどありません。本書は、プレゼンでお話しされていたとおり、入門書として本当にわかりやすい内容になっていることが決め手となりました」と説明する。また、巻末にはリファレンスとして、数式が載った参考書も紹介しており、「良質な入門書として、書店として推したい一冊」(平木氏)と絶賛した。
そして大賞に選ばれたのはこの2冊
続いて、いよいよ会場参加者による投票結果の発表となった。プレゼンターを務めたのは、翔泳社 代表取締役社長の佐々木幹夫氏。
まず技術書部門では、楽しいプレゼンと、初心者にもわかりやすいと評判の『機械学習入門』に決定。授賞式で書名を発表された大関氏は感涙にむせび、一緒に会場に訪れた愛妻を紹介すると共に、オーム社の編集者や営業担当者、イラストレーターなど、本書に関わった人すべてに謝辞を送った。
ビジネス書部門の大賞を獲ったのは、2016年からビジネス書ベストセラーとしてランクインしている『職場の問題地図』。著者の沢渡氏は、大きな声で「ITエンジニア、最高です!」と叫び、受賞の喜びを表現した。
最後に翔泳社 佐々木氏が「年を経るごとに著者のプレゼンが楽しく質も向上し、毎年興奮して見ています。そして、この企画を5回も開催できたことに喜びを感じています。今後も、著者と編集者、情熱と知恵のつまった本がたくさん出てくると思うので、また来年もここに来て投票してください」と呼びかけ、イベントを締めくくった。また来年、どんな書籍が登場するのか、いまからとても楽しみだ。