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サービス開始直後に1.2億円調達したブロックチェーンアプリ開発クラウド「ACCEL BaaS」の裏側を探る!

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 近年、金融をはじめとする多くの業界から注目を集めている技術に「ブロックチェーン」がある。ビットコインのような仮想通貨システムを構成する重要な技術の一つとして脚光を浴びたブロックチェーンだが、その仕組みをどのように自分たちのビジネスに適用できるのか、さらに、どう実装すればいいのかといった点で検証が進められていないという企業も多いのではないだろうか。

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 スタートアップに対する技術投資事業を展開するTECHFUNDは、企業によるブロックチェーンアプリケーションの開発を加速させることを目的としたクラウドサービス「ACCEL BaaS」のベータ版を6月21日にリリースした。ACCEL BaaS(アクセルバース)の概要や提供の目的について、TECHFUNDの共同創業者CEOである松山 雄太氏とリードエンジニアの早川 裕太氏、加えて、ACCEL BaaSにおいてTECHFUNDと協業を行う日本マイクロソフトのテクニカルエバンジェリスト、増渕 大輔氏に話を聞いた。

左からTECHFUND 早川氏、松山氏、日本マイクロソフト増渕氏
左からTECHFUND 早川氏、松山氏、日本マイクロソフト増渕氏

コストとスキルの両面で敷居が高かったブロックチェーンを身近なものに

――――TECHFUNDが「ACCEL BaaS」の提供に至った経緯について聞かせてください。

松山:TECHFUNDは、スタートアップを技術的に支援するアクセラレーターとして2014年から活動しています。そうした中で、昨年あたりから「ブロックチェーン」を活用したいのでサポートしてほしいというリクエストを非常に多くいただくようになりました。

 スタートアップだけでなく、エンタープライズ企業からの引き合いも増え、当初はそれらを個別にサポートしていたのですが、案件数が増えるに従って、複数の企業がブロックチェーンの活用において共通して持っているニーズや課題が見えてきました。そこで、より広くそうした要望に応えていくことを目的に、ブロックチェーンアプリケーション開発に必要となる機能をクラウドベースで利用できる「ACCEL BaaS(Blockchain as a Service)」の提供に至りました。

 ACCEL BaaSでは、ブロックチェーンを利用したアプリケーションを作りたいときに、必要な機能をAPIから呼び出すだけで実装できる「簡単さ」を最大の特長としています。

TECHFUND, Inc. 共同創業者 CEO 松山雄太氏
TECHFUND Inc. 共同創業者 CEO 松山 雄太氏

――――ブロックチェーンをサービスに実装するにあたって、一般的にどのような部分が難しいとされているのでしょう。

松山:デベロッパーがブロックチェーンアプリケーションを実装する場合、ゼロから自分でブロックチェーンを作るのではなく、既存のプラットフォーム上にアプリケーションを構築するというのが一般的です。

 現在、最も有名な「ビットコイン」をはじめとして「Ethereum」「NEO」「Lisk」「NEM」といったさまざまなプラットフォームがありますが、実装にあたっては、それぞれのプラットフォームやプロトコルの機能的な特徴、長所や短所、実装に使える言語の違いなどについての知識が必要となってきます。

 従来の一般的なシステム開発やモバイルアプリ、Webアプリなどの開発とは異なる、新たな知識やスキルが求められる点が、ブロックチェーン活用の「難しさ」の原因の一つになっています。

早川:また、ブロックチェーンの実装にあたっては、その環境構築にも手間がかかります。リソースに求められるスペックも高く、検証環境を整えて、開発に着手するのにさえ、かなりの時間とコストがかかるといった状況がありました。

 結果的に、ビジネスやサービスのニーズに合ったプラットフォームの選択にさえ十分な時間が割けない状態で、適性よりも一般に知名度の高いプラットフォームでプロジェクトが走り出してしまい、最終的に頓挫するといった例も多いようです。

TECHFUND, Inc. データサイエンティスト 早川裕太氏
TECHFUND Inc. データサイエンティスト 早川 裕太氏

――――そうした課題を「ACCEL BaaS」ではどのように解決できるのでしょうか。

松山:ACCEL BaaSは、Ethereumをはじめとする複数のブロックチェーンプラットフォームに順次対応していきます。プロジェクトに最適なプラットフォームを比較検討したり、サービスを展開したりといったことが、クラウドベースで非常に簡単に行えるようになります。

早川:クラウドの利点として、個別の環境構築や運用管理の手間が不要な点もメリットとして挙げられます。アプリケーションからは、ACCEL BaaSに用意されているAPIを叩くだけでブロックチェーン機能を使うことができます。そのため、一般的なWebだけでなくモバイルやIoTなど各アプリケーションにも簡単に導入できます。

 企業がブロックチェーンを活用するにあたって、敷居が高かったさまざまな要素をACCEL BaaSで吸収できるため、特に技術検証やPoC(概念実証)の実施にあたっては、便利に使っていただけると考えています。

――――現状では、どのようなプラットフォームやプロトコルに対応していますか。

松山:サービスでのブロックチェーン活用を考えた場合に、基本的なウォレット機能や、トークンの転送に加えて重要なのが「スマートコントラクト」です。スマートコントラクトは、ブロックチェーンにおいて、特定の条件での処理を自動実行するための仕組みになります。

 こうした、スマートコントラクトのようなプログラムを保存するプラットフォームとして優れているのが「Ethereum」です。ACCEL BaaSでは、現在Ethereumに対応しており、今後はEthereumと同等のレベルでスマートコントラクトに対応しているNEOやLiskといったプラットフォームから、順次対応を進めていく計画です。

早川:スマートコントラクトは、ブロックチェーンを活用する上で非常に便利なものですが、実際に開発する場合には、セキュリティ的にとてもシビアな設計が求められる機能でもあります。

 ACCEL BaaSでは、そうした開発上の手間を減らせるよう、コントラクトのテンプレートを提供しています。プラットフォームやユースケースによって微妙に異なる設定については、テンプレートに対してGUIで変更を加えられるようになっており、アプリケーションからはAPIとして呼び出すだけで使えます。

 ちなみに、このテンプレートについては公開しており、ユーザーが内容を見ることもできます。一方で、ユーザーが「自分で書いたスクリプトをプラットフォーム上で走らせたい」と思えば、それも可能になっています。

仮想通貨、金融業界だけではない「ブロックチェーン」の使いみち

――――先ほど、「この1年ほどで急速に案件が増加した」と伺いましたが、企業は「ブロックチェーンをサービスに取り入れる」ことで、どのようなことが可能になると期待しているのでしょうか。

松山:一般的に言われているブロックチェーンのメリットとしては、分散されたシステム上で、互いに監視をしながらデータや、その処理プロセスを担保していくことに由来する「耐改ざん性」や「公正性」などがあります。そのメリットにいち早く目をつけたのは金融業界でしたが、近年ではこうした「耐改ざん性」「公正性」が重要な意味を持つ他の業界でもブロックチェーンを取り入れようという動きが活発になっています。

 身近な例を挙げれば、懸賞や人気の高いチケットなどに対する、応募から抽選、結果発表までのプロセスをスマートコントラクト上で公開するようなことを考えているプロジェクトなどがあります。

 また「デジタルコンテンツの流通」にも、ブロックチェーンを活用したいというニーズが出てきています。複数の企業がコンソーシアムとしてプラットフォームを共有することで、例えばゲームのアイテムのようなコンテンツの価値を、特定のゲームや企業内だけでなく、複数の会社間で共有したり、流通させたりするようなことも可能になると考えられます。

 ACCEL BaaSでは、このような「抽選」や「コンテンツ流通」に利用できるテンプレートもあらかじめ用意しています。もし、こうした分野でのブロックチェーン活用を考えているのであれば、すぐに検証が可能です。

 そのほかにも、クラウドソーシングのような人材業界での活用も考えられます。人材の紹介や派遣を行っているような企業が、ブロックチェーンで企業と人材を直接結びつけるプラットフォームを構築することで、旧来の中間業者としてのビジネスモデルから脱却しようとする動きも出てきているようです。

早川:特にBtoCのサービスにブロックチェーンを取り入れる場合、ユーザーにまずウォレットを用意してもらい、そこに資金を振り込んでもらって、はじめて処理が始められるという点で、スタートまでの敷居が高いことも課題の一つでした。

 ACCEL BaaSは、APIベースで利用できるので、あらかじめアプリにウォレット作成の機能を組み込んでおき、企業側で少額の初期費用を負担する形をとれば、従来よりもエンドユーザーの負担を減らしながら、ブロックチェーン機能を使い始めてもらうことが可能になります。ブロックチェーンアプリケーションの利用拡大にも有効だと考えています。

増渕:マイクロソフトではこの数年、主に金融領域を中心として、ブロックチェーンに関する多くの検証実験やサポートに携わってきました。その中では、仮想通貨の発行だけでなく、データやプロセスの「信頼性」を社会に対して証明するために、業界でコンソーシアムを作り、ビジネス上のトランザクションをブロックチェーンで記録していきたいというニーズがありました。

 こうしたニーズは、この1年ほどの間に金融業界以外にも急激に広がっています。同じようなニーズのある案件が増えてくると、それぞれに対して個別にシステムを作るのではなく標準化された機能を備えたクラウドを用意することに、よりメリットが出てきます。

 我々がそうしたことを考えているときに、TECHFUNDも「ACCEL BaaS」という形でブロックチェーン基盤のクラウド化を考えていることを知り、それ以来支援をさせていただいています。こうしたクラウドサービスによって、より多くの企業が技術検証や実験をより手軽に行えるようになると、新たな利用シーンや活用シナリオの発見につながり、ブロックチェーンの普及にも貢献できるだろうと考えています。

早川:また、これは将来的な計画になりますが、TECHFUNDはスタートアップを技術的に支援するアクセラレーターとして、ICO(Initial Coin Offering)による資金調達を支援するためのプラットフォームを展開し、そのプラットフォーム内でACCEL BaaSを活用していただくことで、世界中に製品を拡販させていくことも視野に入れています。

日本マイクロソフト株式会社 テクニカルエバンジェリスト 増渕大輔氏
日本マイクロソフト株式会社 テクニカルエバンジェリスト 増渕 大輔氏

ACCEL BaaSのインフラに「Microsoft Azure」を選んだ理由

――――ACCEL BaaSは「Microsoft Azure」上に構築されているということですが、インフラとしてAzureを選ばれた理由は何ですか。

松山:一番大きかったのは、Azureのセキュリティ面での実績ですね。金融機関をはじめとする多くのエンタープライズ企業がクラウドプラットフォームとしてAzureを選んでいることが、ACCEL BaaSを広く使ってもらう上でもプラスになると考えました。ACCEL BaaSではユーザーのAPIキーを管理したり、トランザクションなどの個人情報を保管しますので、セキュリティ面で実績のあるAzureを採用させていただきました。

早川:また、マイクロソフト技術チームによる手厚いサポートも、サービスの開発、運用の両面で非常に助かっています。

――――ACCEL BaaSの料金体系はどのようになっていますか。

松山:APIに対するリクエスト数ベースでの課金となっています。現在は、初期の1000リクエストまでが無料で、それ以降については1万リクエストごとに20ドルです。

 現在、環境構築からアプリケーション実装までが可能なブロックチェーンエンジニアの市場価値は非常に高くなっています。特に優秀な人の場合、月単価で200万円を超えるケースもあるようです。もちろん、環境構築や運用のコストも別途必要になるので、その総額は膨大になります。

 ACCEL BaaSを使っていただければ、従来のWeb系エンジニアの方でも、APIの使い方さえ覚えていただければ、そうした手間やコストをかけずにブロックチェーンを組み込んだアプリケーションの開発、検証が可能になります。

 TECHFUNDでは、別途、ビジネスへのブロックチェーン適用に向けたコンサルティングなども承っています。これまでより手軽にブロックチェーンアプリケーションを作れる環境の提供と合わせてユースケースを増やしていく中で、ブロックチェーンという技術のより良い使い道や、最適な運用スタイルが発見できるだろうと期待しています。

――――ありがとうございました。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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