アドビがクリエイター支援で大事にしている3つの指針
冒頭で、アドビ米国本社 Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデントのスコット・ベルスキー(Scott Belsky)氏が登壇。共同設立したクリエイター向けのポートフォリオサービス「Behance(ビハンス)」が2012年にアドビに買収された際に最初に行ったこととして「リードデザイナーを日本に連れてきた」と振り返る同氏は、その旅で「素晴らしいデザインは引き算で成り立つことが分かり、デザインはすべての体験の重要な要素を占めていることも確認した」という。
続いて、「考え抜かれたデザインは、すべての体験を魅力的で意味深いものにする上で重要。世界中の人たちはそのことを学び始めている」と、クリエイティビティの重要性が今まで以上に高まっていることに言及し、日本に対する期待も示した。
その上で、クリエイティブツールは「よりパワフルでアクセスしやすく精度の高いものになるべき」だと語るベルスキー氏は、アドビのクリエイティブツールおよびクラウドサービス群である「Adobe Creative Cloud」のチームが掲げている開発指針として、「仕事のスピードアップ」「クリエイティビティの解放」「新たな表現への挑戦」の3点を挙げた。
「仕事のスピードアップ」は、いわゆる生産性の向上やスキル習得の支援。例えば、複雑な画像のマスキングや撮影した写真のタグ付けなど、時間のかかるタスクを、2016年に発表された機械学習による人工知能プラットフォーム「Adobe Sensei(アドビ・センセイ)」の支援などにより解決する。
アドビが最近、日本のクリエイティブプロフェッショナル向けに行った調査によると、「7割の人が業務の半分以上が単調な繰り返しやクリエイティブではないタスクであると感じている」「4分の3が、より積極的にAIを駆使した何らかの支援が欲しいと思っている」という考察が得られたという。
イベント終盤のビアバッシュでは、恒例のスニークピーク(将来製品に採用されるかもしれない開発中の機能のチラ見せ)も実施されたが、そこでデモンストレーションされた機能は、どれもAdobe Senseiを活用したもので、具体的な生産性の向上、およびそれによる表現力の飛躍を実感させるものとなっていた。
「クリエイティビティの解放」は、従来から進めているマルチプラットフォーム施策の発展ともいえる。現在、多くの仕事はデスクトップで使っているツールに縛られてしまっているが、着想は机に座っているときだけに得られるわけではない。デスクトップからマルチスクリーンのサービスに進化し、クラウドを通してマルチデバイスで作業を継続できるようになると、クリエイティビティが最大限に発揮される。従来は、モバイルアプリでは機能が一部限定されていたが、その制約から解放されつつあるのが大きな変化だ。後ほど言及する。
「新たな表現への挑戦」は、音声UIや拡張現実(AR)といった新しい表現手段に関するもの。従来も印刷物からウェブへ、ウェブからモバイルへと表現媒体の変革があったが、デザイナーもそのような変化の流れに追随して新しい表現を作っていかないと、重要なチャンスをつかむことができない。それが今では音声UIやARだとし、そこでもアドビが成功の手伝いをするという。
以降、3つの指針の実現方法が、さまざまな製品デモを通して紹介されたが、画像・動画制作のあたりは割愛し、ここでは「Adobe XD」「Photoshop for iPad」「Project Gemini」「Project Aero」をピックアップして紹介していく。