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【デブサミ2019】セッションレポート (AD)

Redmine活用でトラブルを防ぎ、プロジェクトを成功へ導くためのコツとは【デブサミ2019】

【15-B-3】【導入事例】Lychee Redmineのユーザが語る!トラブル予防としての使い方

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 規模の大きなプロジェクトになると、大人数ゆえに意思疎通がうまくいかないこともある。気づかぬうちにトラブルが進行し、気づいた時にはもう手遅れ、あるいは致命的な状況になっていることも。どうしたらプロジェクトのトラブルを予防できるのか。Lychee Redmineをトラブル予防の観点でどう活用できるか、フューチャーアーキテクト 品質管理室長 稲垣 哲也氏が解説する。

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フューチャーアーキテクト株式会社 品質管理室長 稲垣哲也氏
フューチャーアーキテクト株式会社 品質管理室長 稲垣哲也氏

トラブル対応は部分最適となり、ゴールを見失いがち

 大規模プロジェクトにおけるトラブル対応は本当につらい。多数の関係者がいても、ほころびが見逃されてしまうことがある。そうしたほころびは手が付けられないほどの致命的な問題へと発展し、いつしか大問題を引き起こす。

 フューチャーアーキテクト 品質管理室長 稲垣哲也氏は大人数が関わるプロジェクトを率いた経験があり、なかには深刻なトラブルもあった。トラブルのリカバリーでは過去の作業状況の説明に明け暮れ、心労も多い。稲垣氏は惨状をいくつもくぐり抜け、トラブルを未然に防ぐための知見を多く蓄えることができた。そうした経験からトラブル予防の標準化や仕組み化に詳しい。

 トラブルやリクエストによりプログラムを修正する時、「部分最適になりがち」と稲垣氏は指摘する。人間は「指摘された部分を修正しなくてはならない」となると、どんどん視野が狭くなってしまう。そうすると、判断基準が不明確になり、本来進むべきゴールから離れてしまう。そのためトラブルが起きると、稲垣氏は3つのことを確認するという。「『何をつくるのか』『どうつくるのか』『どうやって確かめるのか』。必ず上から順番に確認します」と稲垣氏。

 確認時の方法も重要だ。稲垣氏は「手っ取り早い方法は説明してもらうこと」とポイントを挙げる。その時に確認すべきは判断の根拠であり、説明している人とその周囲の人々を観察することも重要だと稲垣氏は言う。自信がなかったり、不安を抱えていたりすると、人間は視線が泳ぐなど表情やしぐさに現れてくる。そうした異変を稲垣氏は見逃さない。

 トラブル対応の場面では、怒る人、悲しむ人、誤解している人、未来を信じられない人、やる気を出せない人、諦めている人……、稲垣氏はそうした悲痛な人たちを目にしてきた。多くの時間を費やし苦痛を伴った経験から、トラブル防止にかける意思を強く持つ。

プロジェクト管理ツールを用いて、整理整頓を徹底する

 稲垣氏は「トラブルは突然出てきません。みんなうすうす気づいているのです」と話す。早めに明確化することが大事だ。トラブル予防の3原則として「整理整頓」「トラブル前提で考える」「自分を過信しない」を挙げた。

 大原則となるのが整理整頓であるものの、実際に徹底しようとすると面倒だ。そこでプロジェクト管理ツールを用いる。稲垣氏が3種の神器として挙げるのが、Redmine、Lychee Redmineのガントチャート、Lychee Redmineのタイムマネジメント。

 整理とは「要らないものを捨てる」こと。Redmineを使うなら、「必要のないチケット(仕事)は削除する」と「終わったチケット(仕事)は明確に終わらせる」に相当する。

 心がけることは3つ。持ち主を決めて「これ、誰のだっけ?」をなくす。ステータスを決めて「これ、終わってるの?」をなくす。そして期日を決めて「これ、やるんだっけ?」をなくす。こうしてやるべき仕事を明確にしていく。

 プロジェクトによっては、本来なら不要なものが増えてしまいがちだ。前のプロジェクトで失敗を経験すると、プロジェクト開始時に「あれもやっておこう」、「これもやっておこう」と仕事を増やしてしまいがち。「積ん読」のように不要なものが増え、それがかえってプロジェクトを煩雑にしてしまう。本当に必要な仕事はどれか、整理することが大事だ。

 余談として、稲垣氏はある製造業の会社を訪問した時のことを挙げた。製造業だと節電を徹底しているため、照明の管理も徹底している。人がいないところは明らかに暗いのだ。時には電球単位で「節電責任者」のタグが付いていて、稲垣氏は驚いたという。しかしこうして担当者を明確にすることでやるべきことを徹底できる。プロジェクト管理でも、あいまいさを防ぐには担当者や期限をきちんと定めておくといい。

 一方、整頓とは「秩序を持って配置する」こと。Redmineなら、「あらかじめトラッカーの種類をそろえておく」、「あらかじめチケットの単位をそろえておく」となる。

 稲垣氏は「整理整頓の一番の障害はプロジェクトごとのローカルルールです」と指摘する。プロジェクトごとに特殊なルールができてしまうと、それが思わぬトラブルの元となる。稲垣氏は「ローカルルールはナンセンス。ベストプラクティスを全社統一基準にすべきです」と強調した。

ガントチャートで依存関係、タイムマネジメントで間に合うかを確認

 プロジェクトを安全に進めていくには「年末大掃除は厳禁」と稲垣氏は断言する。「いつかやる」は現実的ではない。仕事は止められないし、1日で終わる保証はないからだ。毎日の整理整頓を習慣化する方がはるかに楽だ。

 問題はどうすれば「きれいな部屋を当たり前」にできるのか。稲垣氏は「そのためにLycheeのガントチャートとタイムマネジメントを使っています」と言う。

 ガントチャート活用では依存関係が重要になる。WBS(Work Breakdown Structure)で重要なのは優先順位と遅延を可視化することが大切だ。

 稲垣氏は「優先順位の決定はリーダーの重要な仕事です」と断じる。こうしたツールを用いて進ちょくを確認し、優先順位を見極めていくのがリーダーの責務だ。「メンバーからのエスカレーションを期待しないこと」と稲垣氏は念を押す。開発メンバーの立場になって考えてみるといい。環境にもよるが、「できそうにありません」とはなかなか言えない。本当に困ってから告白されたとしても、後になればなるほど対処は難しくなる。そのためリーダーは、ガントチャートで普段からチェックし、誰のどの仕事が遅延しているのか、何を優先して処理すべきかを判断していくことが大事だ。

 タイムマネジメントでは「予定段階で勝てる計画なのかを確認することがポイント」と稲垣氏は言う。どんな仕事でも言えることだが、開始前からやることが多すぎると分かっているものは当然ながら期日を守れない。始まる前から破綻していたら、計画を見直す必要があるということだ。

 もし「なんとかなる(少しくらい残業すれば間に合う)」と楽観的なバイアスが働くと、プロジェクトは大抵悪い方向へと進む。予定段階から、(残業をせずとも)期日に間に合うかどうか、きちんと可視化して確認する必要がある。

 「1週間のスケジュールに現実味があれば、そのなかでつじつまを合わせることができます」と稲垣氏は言う。時間は増えることはないし、人間の効率が突然上がることもあまり期待できない。無理のない計画であることが重要だ。

みんなで共通の課題を解決し、共通の目的へと進むプロジェクトがすばらしい

 稲垣氏は「リーダーは環境を維持する強い意志を持ちましょう。そしてほころびを見つけたら即対応することが大事です」と話す。Redmineで標準を死守し、ガントチャートで依存関係を確認し、タイムマネジメントで勝てる計画かを確認していく。

 最後に、トラブル予防の3原則をおさらいしてみよう。まずは「整理整頓」。不要なものを捨てて、秩序を持って配置する。大抵のトラブルは小さなほころびを見過ごすから、致命的なものへと発展してしまう。見つけたらこまめに対応することが大事だ。面倒に思えるかもしれないが、結果としては最も安上がりだということを肝に銘じておこう。

 そして「トラブル前提で考える」。いわゆるリスクマネジメントだ。トラブルが起きることを前提にしないと、予防を考えなくなり、トラブルを招いてしまう。トラブルは考えたくないので、目をそらしがちだ。しかしそれが後になって災いをもたらす。トラブルの元となるリスクにきちんと目を向けて、リスクを管理していこう。

 もう1つ「自分を過信しない」。稲垣氏は「1人で抱え込まず常に上司とコミュニケーションしておくことです。上司も人間ですから、いきなり深刻な状況を打ち明けられたら困惑します」と指摘する。「もっと早く言ってよ!」と言い争いになれば、物事はうまく進まなくなる。早め早めに相談することが大事だ。

 「プロジェクトというのはみんなで共通の目的を持ち、課題を乗り越えていくため、得られるものが多く、すばらしいものだと考えています。プロジェクトを率いるリーダーのみなさんには、リーダーとしてプロジェクトをひっぱり、成功していただきたいです。そのために今日の話が役に立てばうれしいです」(稲垣氏)

お問い合わせ

 株式会社アジャイルウェア

 フューチャーアーキテクト株式会社

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/11427 2019/04/11 12:00

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