LINEが注力する4つの領域
LINEのミッションは「CLOSING THE DISTANCE」だ。訳すと「距離を近づける」。LINEのやりとりを通じて心の距離を縮め、関係性を深めていく。対象は人だけに限らず、人と情報、人とサービスとの距離も縮めていこうとしている。
現状ではLINEプラットフォームにアクセスする端末は主にスマートフォンだ。また、現在はFintech関連サービスや、AI領域の開発も精力的に進めている。LINE 上級執行役員 サービス開発担当 池邉智洋氏は今後LINEが注力していく分野として、「LINEプラットフォーム」「Clova」「FinTech」「ファミリーサービス」を挙げる。
「LINEプラットフォーム」はプラットフォームとしてのLINEアプリケーション。今ではLINEはメッセンジャーだけではなく、各種アプリケーションのプラットフォームとして機能している。重要なプラットフォームとなるので拡張性、安定性、信頼性などが求められ、今後も強化していく必要がある。次の「Clova」はLINEが開発しているAIスピーカー。人間の音声で操作するためには、音声の認識や分析など自然言語処理などの技術が必要になる。
「FinTech」というと、モバイル送金・決済サービス「LINE Pay」がまず思い浮かぶが、それだけではない。LINEは昨年ごろからLINEアプリ上で損害保険に加入できる保険サービス「LINEほけん」、LINE上から身近なテーマに投資ができる「LINEスマート投資」、「LINE」上から利用できるLINE版の家計簿・資産管理サービス「LINE家計簿」といった金融系サービスを相次いでリリースしている。ほかにも日米を除くグローバルで仮想通貨交換所「BITBOX」を提供開始した。なおLINEではLINE Payのための自社決済端末「LINE Pay据置端末」をハードウェアから開発することもしている。
さらにLINEは金融機関との金融事業に関する発表も相次いでいる。2018年3月には野村ホールディングスと金融事業について業務提携検討開始、2018年11月にはみずほフィナンシャルグループと新銀行設立検討開始、2018年12月にはタイのカシコン銀行と提携しタイのユーザーに向けた金融サービスを提供開始する予定などを発表している。これからの金融サービスを大手金融機関とともに検討している。金融系サービスの拡充や発展から目が離せない。
「ファミリーサービス」では、主にニュースやマンガなどのコンテンツサービスの拡充を目指す。
関西のエンジニアや学生とのタッチポイントを作るために京都を選定
池邉氏によるとLINEでは「常に100くらいのプロジェクトが並行して走っている」とのこと。これを世界各地にいる約2200人のエンジニアが回している。現在、LINEの開発拠点がある国は日本のほかに韓国、中国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア。日本国内の開発拠点は東京、福岡、そして2018年6月から京都が加わった。
なかでも京都は少し独特だ。営業などの部署も抱える東京や福岡と異なり、「ほぼ開発者のみ」だからだ。開発者しかいないため、より開発に集中できるというメリットがある。
では、なぜ京都か。その理由として池邉氏は「関西圏のエンジニアおよび学生とのタッチポイントとするため」と話す。京都にオフィスを構えることで、社内外向けに実施する勉強会やイベントなどを通して、関西圏のエンジニアとの接点を持ちやすくなる。地域の技術コミュニティを活性化することで、ゆくゆくは優秀な人材を採用することにもつながる。また京都には関西圏でも技術系の大学が多いため技術に長けた優秀な学生とも接点を持てる。さらに、海外での知名度もあり、京都で働きたいと考える外国人エンジニアも多い。
現在では、LINE KYOTOには20名超のエンジニアがいる。数年内に100人規模へと拡大していく予定で、徐々に人を増やしているところだ。2019年9月ごろをめどに現在と同じく京都市内の新しいオフィスに移転する予定だという。
LINE KYOTOでは、デベロッパードリブンで開発が進められるプロダクトに注力している。具体的には開発者向けのLIFF(LINE Front-end Framework:LINE内で動作するWebアプリのプラットフォーム)やSDKの開発などである。