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次世代Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用

改良の継続と次世代への進化に注目! 「Angular」バージョン8の新機能

次世代Webアプリケーションフレームワーク「Angular」の活用 第22回

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次世代レンダリングエンジン「Ivy」がついに試せるように

 Ivyは、Angularの次世代レンダリングエンジンです。Angular 8では、Ivyのプレビュー版を利用できるようになりました。

 新規プロジェクトでIvyを有効にするには、プロジェクトを生成するng newコマンドの実行時に、リスト7の通り「--enable-ivy」オプションを付加します。

[リスト7]Ivy対応のプロジェクトを新規生成するコマンド
ng new p004-ivy --enable-ivy

 既存のプロジェクトでIvyを有効にするには、tsconfig.app.jsonにリスト8の通り記述します。angularCompilerOptions項目で、enableIvyをtrueに設定します。

[リスト8]Ivyを有効にする設定(p004-ivy/tsconfig.app.json)
{
(略)
  "angularCompilerOptions": {
    "enableIvy": true  // Ivy有効
  }
}

 また、IvyではAOTコンパイル(Ahead of Time、事前にコンパイルを実行する)が高速なので、angular.jsonファイルにリスト9の通り設定して、AOTコンパイルを有効にすることが推奨されています。

[リスト9]AOTコンパイルを有効にする設定(p004-ivy/angular.json)
{
(略)
  "projects": {
    "p004-ivy": {
(略)
      "architect": {
        "build": {
(略)
          "options": {
(略)
            "aot": true, // AOTコンパイル有効

 なお、Ivyを試す場合は、リスト10のコマンドでAngularを更新して、「next」とタグ付けされたAngularの最新バージョンを利用する必要があります。

[リスト10]Angularを「next」バージョンに更新するコマンド
ng update @angular/core --next

 Ivyを有効にすると、リリース用のファイルをビルドする「ng build --prod」コマンドで生成したメインバンドルのサイズが、Ivy無効時より削減されます(図7)。

図7:Ivy有効/無効時、ビルドを実行して生成したファイル(p004-ivy)
図7:Ivy有効/無効時、ビルドを実行して生成したファイル(p004-ivy)

 公式ブログのIvy紹介記事では、Ivyにはファイルサイズ削減のほかに、再コンパイルやテストの実行速度向上、HTMLテンプレートにブレークポイントを設定したデバッグなどのメリットがあるとしています。現在のIvyはプレビュー版で、互換性の確保や不具合修正などの開発が今後も続けられていきます。

GoogleのビルドツールBazelへの対応

 Bazelは、Googleが自社製品のビルドに利用しているビルドツールです。実装の変更に関連したファイルだけを並列処理で高速にビルドできる特徴があります。

図8:Bazelの公式ページ(https://bazel.build/)
図8:Bazelの公式ページ(https://bazel.build/)

 Angular 8では、従来ツールの代わりに、Bazelをビルドツールに利用できるプレビュー版機能が提供されました。AngularプロジェクトをBazelでビルドするには、BazelがPCにインストールされている必要があります。Bazelは、Windows、Mac、Linuxにインストールできます。公式ドキュメントを参照して、インストールを行ってください。

 新規のプロジェクトでBazelを有効にするには、リスト11の通り実行してプロジェクトを生成します。(1)でシステム全体にBazelの対応機能をインストール後、(2)のng newコマンドで、「--collection=@angular/bazel」オプションを指定します。2回目以降のプロジェクト生成時は、(1)は必要ありません。

[リスト11]Bazel対応のプロジェクトを新規生成するコマンド
npm install -g @angular/bazel                 #...(1)
ng new p005-bazel --collection=@angular/bazel #...(2)

 既存のプロジェクトでBazelを有効にするには、リスト12の通りng addコマンドを実行します。

[リスト12]既存プロジェクトでBazelを有効にするコマンド
ng add @angular/bazel

 Bazelを有効にしたプロジェクトで「ng build」コマンドを実行すると、AngularプロジェクトがBazelでビルドされ、結果ファイルがdist/bin/src/prodappフォルダーに生成されます。初回ビルド時はBazelがファイルをキャッシュするため、時間がかかります。2回目以降のビルドは差分ビルドになるため、比較的短時間で終了します。

 AngularのBazel対応はプレビュー版で、今後も開発が続けられます。AngularのBazel対応についての詳細は、公式ブログ記事も参照してください。

そのほかの変更点

 上記のほかに、Angular 8では以下の変更が行われました。

非推奨ガイドの更新

 公式のAPIは、非推奨になってから2回のメジャーリリースまでは利用可能であることが保証されるようになりました。例えば、Angular 8で非推奨になったAPIは、Angular 9、10まで利用できます。

CLIの機能を拡張するAPI

 「ng build」「ng test」といったAngular CLIコマンドの処理を入れ替える「Builder API」が提供されました。前述のBazel対応はこのAPIを利用しています。また、モジュールのインストール時などにAngularの設定ファイルangular.jsonを編集する「Workspace API」が提供されました。

まとめ

 本記事では、2019年5月にリリースされたAngular 8の変更点や追加機能を説明しました。機能追加や速度向上/サイズ削減といった、以前から継続した変更の一方で、IvyやBazel対応といった、将来見込まれる大規模変更の準備が始まったリリースといえます。

 次回は、CSSフレームワークBootstrapに準拠したUI部品をAngularに提供する「Angular Powered Bootstrap」を紹介します。

参考資料

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この記事の著者

WINGSプロジェクト  吉川 英一(ヨシカワ エイイチ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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