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エンジニアコミュニティの歩き方

共創とDevRelを活かした開発者のキャリアアップ術とは

なぜ共創が大事なのか

 皆さんがDevRelを通じてどんな情報が得られるのかは分かってきたかと思います。ここからはサービス提供側(企業側)と利用側(開発者側)の双方にとって、共創がどんな意味を持ってくるのかを紹介します。

サービス提供企業側の立場から

 これまで説明して通り、DevRelではまったくサービスに関して知らない状態から、使い始めたり、慣れてきた方を含めて、あらゆる場面に対して情報を提供したり、フィードバックをもらえる体制を整えています。なぜそこまでして開発者と交流し、使い勝手を聞いたりフィードバックを受けたいと思うのでしょうか。それは、開発者にとって使いやすい、使い続けたいと思うプロダクトこそ生き残ると知っているからです。IT業界では、日々新しいサービスが生まれています。今時点では利用するのが当たり前で、圧倒的なシェアを持っているようなサービスでも、来週にはまったく異なるダークホースが現れているかも知れません。また、使わなくなって久しいサービスが閉鎖するアナウンスをしてきた、なんて経験がある人も多いのではないでしょうか。

 開発者に必要とされないサービスはあっという間に廃れてしまいます。逆にいえば、開発者が切望しているサービスを提供できれば一気に伸びる可能性を秘めています。それは一般消費者向けのサービスでも同じだと思うかも知れません。しかし、大きな違いとして、開発者はサービスを使って別な何かを作り上げると言うことです。例えば決済APIについて考えてみてください。決済というのは企業が収益をあげるために最重要な機能だといえます。そして一旦組み込まれた決済APIというのは、基本的にそう簡単に乗り換えることはありません。また、よほどのことがない限り、別なプロジェクトでも同じ決済APIを使うでしょう。一度利用して慣れている技術やサービスは、優先的に選択しやすいのです。だからこそ、開発者に好まれるサービスであり続けないといけないのです。

 開発者に必要とされるために大事なのがフィードバックです。実際に使ってもらって、どうだったかを聞くのが大事です。オンラインアンケートなどでは、表面的な感想しか書いてくれないでしょう。実際に使っている開発者の人たちと対面で、お互いの人となりが分かっている状態だからこそ話してくれることがあるのです。自分たちは製品をよりよいものにしたくて、正直な意見を聞きたいのですという姿勢を示せば、開発者の方も思いの丈を聞かせてくれることでしょう。そのフィードバックは開発チームに送られ、改善や機能追加の指針として用いられるのです。

開発者の立場から

 逆に開発者の立場から考えてみましょう。もし利用しているサービスがあって、使いづらい場面に遭遇したらどう思うでしょうか。少なからずストレスに感じるはずです。そして、そのストレスが頂点に達すると、もう使いたくないと投げ出してしまうはずです。会社で使っていると、自分勝手に投げ出すこともできず、ぐっと我慢して使い続けているのかも知れません。

 しかしフィードバックする方法があるとすればどうでしょう。もちろん、自分の希望がすべて受け入れてもらえるとは限りません。でも、何かしらのアドバイスはもらえるはずです。例えばある機能を使えば自分のやりたいことが実現できるのが分かったり、別なサービスと組み合わせるのをお勧めされるかも知れません。利用しているサービスは無機質なAPIだけかも知れませんが、中で開発している人たちは自分たちと同じ開発者です。彼らとコミュニケーションできれば、双方にとって使いやすいサービスになることでしょう。

 あなたの目的は、そういったサービスを使いこなすだけではなく、これまでにない、あなた自身のサービスを創り出すことにあるはずです。その目的を達成するためにも、我慢を強いられるのではなく、積極的にフィードバックを行ってください。あなたが発信してくれることで、サービスはどんどん使いやすく、便利なものになっていくことでしょう。

キャリアにつながる共創

 開発者側からの共創への関わり方として、ユーザグループをはじめとしたコミュニティでの発信も大きなポイントになります。あなたがはじめてコミュニティに参加した時、多くの開発者が登壇して、自分自身の経験を共有するのを見聞きするでしょう。最初はもちろん、聞く立場で問題ありません。しかし、あなた自身が経験を積んだら、ぜひそれを他の人たちと共有しましょう。聞く立場から発信する立場になると、あなた自身が得られるフィードバックの数が格段に変わります。もしあなたがある問題を抱えていたら、もっとたくさんの人たちが同じ問題を抱えていることでしょう。その問題を解決した経験をブログに書いたり、コミュニティイベントで発表することをお勧めします。きっとたくさんの人たちに感謝されたり、別な解決方法を提案してくれることでしょう。そうやって知見が共有され、さらにいいサービスへとつながるのです。

 コミュニティでの発信やブログ記事でのサービス認知度向上に貢献したりすると、ベンダーが提供するチャンピオンプログラムでエキスパート認定されることがあります。MicrosoftであればMVP、IBMであればIBM Champion、LINEであればLINE API Expertといった具合です。AWS SamuraiもJAWS-UGの発展に寄与した人たちに贈られる、有名な表彰プログラムです。個人としてのプレゼンスを上げることができ、開発者としての活躍の場が広がることでしょう。

 ハッカソンに参加して賞をとって、それをきっかけに新しいキャリアが開けたという方も大勢います。限られた時間(大抵1〜2日間です)の中でインパクトのある作品を仕上げるには、個人はもちろん、チームでの集中した取り組みが欠かせません。普段の仕事はあらかじめ決められたタスクをこなすのに必死かもしれませんが、ハッカソンではあらゆるリソースが不足しています。それらを短い時間で解決し続けないといけません。日常とは違う、新しい体験につながることでしょう。

 現在、新しいテクノロジーが次々と登場し、キャッチアップしていくのも大変な状態です。今の自分には関係がないからと無視していると、あなた自身の開発者としてのスキルがあっという間に陳腐化してしまいます。業務という枠を超えて新しい技術を学び、試し、自分の力にしていく際にはコミュニティやDevRelの力を借りるのがお勧めです。それは将来のあなたのキャリアに貢献してくれるでしょう。もちろん、あなたが成長した際にはコミュニティに貢献し、恩返しすることをお忘れなく。

DevRelに興味を持ったら……

 開発者をサポートし、鼓舞し、一緒にプロダクトを作り上げていくのがDevRelです。エバンジェリストやアドボケイト、コミュニティ、ブログなどに興味を持ったら、ぜひDevRelについても学んでみてください。日本ではDevRel Meetup in Tokyoという私が主催しているコミュニティがあります。さらにコミュニティに特化したDevRel/Community、初心者向けのDevRel/Beginners(CommunityとBeginnersはDevRel Meetupと同じグループから参加できます)、英語版のDevRel/Englishなどがあります。興味があるコミュニティから参加してみてください。

 また、こういったDevRelの活動は日本だけでなく、海外でも行われています。そうした知見を世界中から東京に集めて行われるのがDevRelCon Tokyoになります。2020年は2月28日(幕張)、29日(赤坂見附)で行われます。

 スピーカーの人たちは、恐らく開発者の方であれば聞いたことのある企業の方々ばかりでしょう。Google、Microsoft、IBM、Red Hat、Arm、Dropbox、GitHub、Tableau、Cloudflare、Shopify、Twilioなどです。日本からもメルカリ、楽天などの方が登壇されます。日本と海外の違いとして、マーケティングの考え方であったり、雇用とチームマネジメントのあり方、さらにコミュニティがオンライン寄りであるといった点が挙げられます。一年に一回しか行われないカンファレンスのチャンスをお見逃しなく。ここでの体験がきっかけでDevRelの道を歩み始めた人たちは大勢います。海外の雰囲気を知ると同時に、ぜひキャリアアップを目指してみてください!

DevRelCon Tokyo 2020

DevRelCon Tokyo 2020のWebサイト
DevRelCon Tokyo 2020のWebサイト

 DevRelCon Tokyoは2017年からはじまり、今年で4回目になります。DevRelCon自体、グローバルなカンファレンスとしてロンドン、サンフランシスコ、中国そして日本で行われています。各地、毎回規模を拡大し、参加者層もスタートアップからエンタープライズまで幅広い人たちが集まっています。DevRelCon Tokyo 2020ではYAPCやbuildersconの主催者で知られる牧さんや、Debian JP Projectの創設メンバーとして知られる鵜飼さん、Women Who Code TokyoのTuttiさんがキーノートをつとめます。さらにGoogle、Microsoft、IBM、Arm、Dropbox、GitHub、Tableau、Cloudflare、Shopify、Twilioなど有名企業の方々が多数登壇します。彼らのDevRelにおける経験、テクニックを学べる唯一無二の機会になります。ぜひご参加ください。

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この記事の著者

中津川 篤司(株式会社MOONGIFT)(ナカツガワ アツシ)

 株式会社MOONGIFT代表取締役。ニフクラ mobile backend、hifive 、CloudGarage エバンジェリスト。プログラマ、エンジニアとしていくつかの企業で働き、28歳のときに独立。2004年、まだ情報が少なかったオープンソースソフトの技術ブログ『MOONGIFT』を開設し、毎日情報を発信している。2013年に法人化、ビジネスとエンジニアを結ぶエバンジェリスト業「DevRel」活動をスタートした。ソ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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