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チームをブーストし、仕事をドライブするモブプログラミング【デブサミ2020】

【13-E-8】チームをつくるモブプログラミング ~内側と外側から語る~

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2020/04/27 11:00

目次

仕事を加速させるため、モブプログラミングに必要なもの

 次に安井氏は、モブプログラミングで仕事を加速するために必要なポイントについて解説した。

 モブプログラミングでよりよい仕事の成果を生み出すには「よりよい成果」とは何かを定義する必要があると言う。コードを書いた行数やコミット数で個人の生産性を測ることや、単純な実装期間の長さで測るといった機械的な指標では、モブプログラミングの良さは把握しづらい。

 モブプログラミングの真価は、皆の知識を生かせて、結果的に全員の総和以上の成果が出せることにある。皆のエンゲージメントを引き出してモチベーションを上げることができ、コミュニケーションが非常に密になるといったメリットがある。これまで以上に素晴らしく、使いやすい機能ができたことや、よりユーザーのニーズをくんで創造的なアウトプットが出せたことなどが挙げられる。あるいは、皆の知識が深まったなど、なかなか表面的には測りにくい部分が成果になる。

 モブプログラミングを導入する動機には、2つの側面がある。仕事の成果を向上させるためと、メンバーの教育や知識の伝達など「チームに生かす」ためだ。

 モブプログラミングが上手になったチームを見ると、実は仕事またはチームではなく、仕事のピークとチームのピークが近づいてくるそうだ。チームとして得意なやり方でやることで、仕事も進む上にチームの力も増していく。その結果、モブプログラミングが上手なチームは、仕事とチームの両方の効果が重なり合い、そのピークが限界を突破している感じがするという。

 そう考えると、モブプログラミングでは、「教育を重視しましょう」「仕事を重視しましょう」などではなく、両方を目指すことによってチームをブーストしつつ、仕事をドライブできるやり方になっていく。

モブプログラミングで、チームのブーストと仕事のドライブの両方を目指す
モブプログラミングで、チームのブーストと仕事のドライブの両方を目指す

 そこで欠かせないのが「心理的安全」であり、これは仲良しクラブのなれ合いのことではない。「対人リスクを取っても安全であるというチーム全員の信念」という考え方だ。

 対人リスクとは、「ここが分かりませんと言うとバカにされる」「失敗すると怒られる」「おかしいと言うとめちゃくちゃ反対される」といった対人的にネガティブな可能性のことをさす。心理的安全性では、そういった行動をとってもリスクにさらされないが、チーム全員の信念として共有されている必要があるのだ。

 心理的な安全性があると、情報共有と建設的な衝突が発生する。問題が起きた場合、「じゃあどうしよう」と皆が考えて活発な意見を出し、実験して、失敗しても誰も攻められることなく新しいことに挑戦していける。それが活発に起こって学習につながっていく。

 皆が時間と場所を共有して活発な議論を繰り広げるモブプログラミングでは、このような心理的安全性が非常に重要になってくる。

 最後のクロストークでは「仕事を分担して進めるよりも 、生産性は落ちてしまうのではないか?」といったことを話題に取り上げた。

 これに対して安井氏は、「単純作業ならモブプログラミングのメリットはないと思います。仕事の成果に対する評価を見直してから、モブプロすべき仕事を選ぶ必要があるでしょう。その上で生産性を考えると、適切な人数は意識するべきだと思います。今チームに10人いるから10人でモブプログラミングする、などのように短絡的に決めない方がいいですね」と述べた。

 次に、「ほどよい学習状態に、身をおくために工夫していることはあるのか?」といった議題について及部氏は、「自分のチームでもよく実感するのですが、学習するとそれができるようになって快適になる。快適なところは楽なので、ついつい同じ位置に身をおいてしまう」と悩みを打ち明けた。

 それに対して安井氏は、「チームが安定している状態は、よく見るとめったにありません。周囲ではいろいろなことが起きているので、個人が見つけて対策して、チーム全体に影響しないようにしていることが多いと思います。それをあえてモブプログラミングとして取り組むように切り替えるといいのではないでしょうか」とアドバイスした。

 モブプログラミングと言うと、一緒に集まって同じ画面を見ている形式だと思われがちだが、それは形態の一部にすぎない。実は、一緒に行動するかどうかはさほど重要ではないという。

 最後に及部氏は、「『達人プログラマー』という本の中で、『自分たちで選択ができるし、自分たちでやめることもできる、そういう自律的なチームが達人チームだ』という言葉が出てきます。それを目指して、僕らは普段から腕を磨いています。仕事をしていると、どうしても視点が『私とあなた』になってしまうことがたくさんあります。『あなたにとって、これは生産性が悪い』とか『私はこれがやりたくない』といった話をしてしまいがちです。もちろん、個人の主観や意見は大事ですが、それだけではなく、『私たちチーム全体で今どうすべきなのか』といった話ができるようになっていくことが、僕らの目指しているチームであり、モブプログラミングの姿なのだと思います。なので、皆さんへのメッセージはこれだけです。『モブプロはチームだ!!』」とアドバイスを贈り、セッションを締めくくった。



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著者プロフィール

  • 可知 豊(カチ ユタカ)

    フリーランスのテクニカルライター 興味の対象はオープンソースの日常利用、ライセンス、プログラミング学習など。 著書「知る、読む、使う! オープンソースライセンス」。 https://www.catch.jp

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