チームが機能するようになるまでの3段階はこう進む
チームは成長して生産性を高め、強くなっていく。そうした過程があることを知っておこう。山田氏はタックマンモデルをベースに成長段階を図で示した。
まずは基礎知識を知るために何らかの教育を受け、続いて「形成期」で互いを知り始め、「混乱期」で衝突しながらもお互いを理解し、「統一期」で同じ方向を見られるようになり、最終的には「機能期」にたどり着く。機能期ではチームは自律的に動き、チームとして高い能力を発揮できるようになる。理想の機能期にたどり着くには大きく分けて3段階があると山田氏は示す。
第1段階:「分からない」状態からアジャイルの基本を理解する
ここではアジャイルのマインドセットを理解する段階となる。目安としては3〜5スプリントくらい。まずは基礎知識を習得してから、アジャイル開発の知識が経験を通じて強化され、理解度が向上していく。ここでは基本的な進め方を理解していくのが重要だ。
この段階では「開発メンバーはスプリントレビューまでプロジェクトオーナーに相談してはいけないと思っていた」とルールが理解できてなかったり、用語の定義やイベントの理解があいまいなので、チームの行動がちぐはぐになってしまったりする。まだ勝手が分からない状態だ。山田氏は「よくあることなので、恥ずかしいことではありません。スクラムマスターやアジャイルコーチがその都度丁寧に説明していけばいいのです」と話す。
第2段階:サイクルができつつある中で適切に振り返る
ここでは役割ごとに効果的な動きができるようになっていく。アジャイル開発の進め方に慣れてきて、自律的なチーム運営が始動しつつある段階だ。目安としては3〜7スプリントくらい。このくらいになると、チームが要件を消化するスピード(ベロシティ)が安定してくる。
この段階では、フィードバックを「怒られているような気がする」とネガティブに受けとめてしまいがちだ。また、表面的な課題の洗い出しで満足してしまい、本質的な問題にたどり着かないなども起こりがちだ。一方で、チームのサイクルができつつあるのに「まだできていない」と、成長しているのに気づかないということもよく見受けられる。こういう時にアジャイルコーチは「フィードバックは批判ではないよ」と教え、「ちゃんとできているよ」と気づかせてあげるといい。
第3段階:新たなチャレンジが生まれる自律的なチームへ
ここでは自身の役割を超えて、相互に支援ができるようになってくる。チームが自律的になり、積極的なチャレンジもできるようになる。目安としては5〜10スプリントくらい。良い意味でスクラムマスターもアジャイルコーチも、そろそろ教えることがなくなってくる。
この段階になると、チームの能力が高まりプロダクトオーナーからストーリーの配給が追いつかなくなることがある。チームからストーリーが生まれることもある。参考として山田氏はバックログカンバンを出した。多くなってしまったストーリーもタスクのようにカンバン式に管理していくのもいい。
自分の組織がアジャイルに何を期待するか再認識しよう
ここからはアジャイルチームを支える組織に目を向けてみよう。アジャイルチーム内に成長があるように、受けいれる組織もアジャイルチームとともに適応ししていく必要がある。
ありがちな上層部の声として「うちは他社と違って特殊だからね。アジャイルが使いものになるか?うちのビジネスに合うか?見極めたい」がある。山田氏は「『うちは特殊』とみなさん言います」と語る。
組織にアジャイルを適用させようとすると、「進捗管理」、「契約」、「品質」、「人材獲得」などがキーワードとなり、どうしてもウォーターフォールとアジャイルの違いにとらわれてしまいがちだ。
当然ながらウォーターフォールとアジャイルには違いがある。しかしその違いにばかり執着すると、本質的なことを見失う。ウォーターフォールに最適化された組織をアジャイルに合わせようとするとハードルは高くなり、混迷してしまう。そんな時は立ち止まって考えてみよう。
「なぜ、アジャイルをやりたいのでしたっけ?」
おそらく発端には「アジャイルがもたらすXXXXXに期待をしている」があったのではないだろうか。期待しているものを再認識して、その良さを引き出すためにどのように課題を解決していくか考えるといい。ただし効果は「やってみないと分からない」と山田氏は言う。経験を積み重ねていくと、徐々にアジャイルな組織文化が形成されてきて、効果が形になってくる。
アジャイルに期待することに目を向けると、キーワードが変わってくる。例えば「自律的なチームの獲得」、「新技術をサービスに載せるベースづくり」、「プロダクト価値の向上」などがある。こうした期待から小さな改善を積み重ねていくと、いつかは「大きな偉大な一歩になる」と山田氏は語った。