オープンソースで公開された、東京都の新型コロナ対策サイト
関氏がシビックテックに関心を持ったのは、東日本大震災がきっかけだったという。有志による情報サイト開設によって、ソフトウェア技術が社会に役立つ実感を得た。新型コロナウイルス感染症が広がると、その不安な気持ちをぶつけるように開発に取り組んだという。
「Code for xx」は、ITによる地域課題解決を目指す非営利団体だ。世界26カ国に活動する団体があり、Code for Japanはその日本版である。国内でも地域ごとにコミュニティが立ち上がっていて、Code for SapporoやCode for Osakaなど約80の地域で活動がある。
各団体は、コロナ禍をきっかけにいくつものシビックテック・プロジェクトを立ち上げていったという。関氏が参加するCode for Japanが立ち上げたプロジェクトの一つが、東京都の感染動向を知らせる情報サイトだ。行政の情報公開でありがちなPDFやテキストベースでの公開ではなく、視覚的なグラフ描写などを多用している。情報もリアルタイムに確認できる。元ヤフー社長で東京都副知事の宮坂学氏の関与もあって、Code for Japanが情報サイトの開発プロジェクトを担当した。
このサイトの画期的だった点は、「行政のサイトでありながら、コードをGithubに公開したこと」(関氏)だ。Code for Japan側から東京都に「公開するように訴えた」(同)という。
コロナ禍で拡がったシビックテックの波
サイトは大きな注目を集めた。東京都のサイトコードをもとに各自治体でもサイトを公開する動きが普及したのは、オープンソース・ソフトウェアとして公開した成果といえるだろう。開発の協力者も増え、Github上のサイト開発プロジェクトには3週間で224人がコミットした。
ほかにも、コロナ禍ではいくつものシビックテック・プロジェクトが立ち上がった。自治体ごとに病院の満床率を表示するサービスでは、データを作るところからプロジェクトが実施されている。コロナに関連したサポートを検索できるサービスや、食事がテイクアウトできる地域の店舗を検索できるサービスなど、立ち上がったプロジェクトは枚挙に暇がない。
その中でCode for JapanのSlackは、元々500人程度だったメンバーが3000人に増えたという。いくつものプロジェクトが立ち上がり、シビックテックは確実なブームになっていた。
こうした成果が出せた背景について、関氏は「ヒットを打つには、日頃の素振りが必要」と野球に例えて説明する。多くの人々が新型コロナウイルス感染症をきっかけにしてプロジェクトに関与したことだけでなく、それまでに活動してきた積み重ねが素早い成果につながったという。