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プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

Go To Eatキャンペーンでの神対応はどのようにして生まれたか? Rettyのプロダクト開発と組織改革の裏側

新体制になって半年後の新型コロナ対応で、LeSS導入の効果を実感

――そこに、新型コロナウイルスが襲来したというわけですね。

野口:コロナ自体は全くいいことではないけど、この体制になって半年のところで来たのは、開発チームにとっては不幸中の幸いというか、いい経験になったと思います。新しく組織を作って、半年間試行錯誤して“試す前に実践に追い込まれた”という感じですね。

 当時ネット予約改善に注力していましたが、昨年3月の新型コロナウィルス感染拡大を境に、ユーザーも店舗もぱったりと動きがなくなり、正直、何をすればいいのかわからずにいました。でも、飲食店がみんな困っているのは明らかだったので、状況を把握するためにオンラインで飲食店に話を伺うことから始めました。さまざまなお困りごとが明らかになり、その中でRettyができることして、まずは「テイクアウトのニーズへの対応」に取り組み始めたわけです。

常松:まずはコロナ対応についてメディアに出し、そのタイミングで管理画面やアプリなども対応し、段階を踏んで各機能・各インターフェイス、分析チームも効果を並行して進めていく必要がありました。テイクアウトへの対応にかかったのは2~3週間くらいだったでしょうか。

野口:対応は業界でもすごく早い方だったと思います。実際、急激にテイクアウトで検索されることが増えたのですが、最初は良くても持続しないのは明らかと判断し、一定機能が整ったところで、Go To Eat機能リリースに向けて全社で大きく舵をきりました。

 まず飲食店が本当に困っているという実感、そして数百億円という予算規模の大きさもあり、特にRettyは70万店舗が登録されていて、他社サービスに登録していないような小さな店も多い。うちがやらねばという使命感も感じて、手数料無料も含め、トップの意思決定は早かったですね。ただ、当時はポイントシステムを設けていなかったので、本当に間に合うか、かなり不安はありました。

常松:10年間のRettyの歴史で最大のプロジェクトだというので、プロダクトマネージャーの野口とエンジニアリングマネージャーの私という体制でいろいろと工夫しながら進めました。まず行ったのは、情報共有です。開発、営業、経理まであらゆる部分が影響するプロジェクトであり、行政とのやりとりの中で仕様変更が頻繁に生じる可能性が高かったので、私たちが受け取って社員に伝達していては漏れがあると思われました。

 既に社員がリモートワークメインだったこともあり、Slackに「Go To Eatチャンネル」を1つだけ作って、すべての情報をオープンに共有し、何かあったら教えあおうというスタンスにしたんです。議事録はGoogleドキュメント、仕様はGoogleスプレッドシート1枚にまとめ「ここに情報がなければ聞いてください」としました。さらにミーティングもGoogle Meetで行い、関係者はもちろん、興味がある人は誰でも聞けるようにしておきました。

野口:リモートになって良かったのは「聞き専」で他の仕事をしながら参加できることですね。それで効率性が高まったと思います。またすべての情報が公開されているので、一人ひとりが判断して自分の仕事を進めることができた。それも迅速性につながったと思います。

常松:それから、キャンペーン自体がいつ始まるかわからなかったので、サービスを段階的に対応できるようなスケジュールを組み、8月以降いつでもできるようにスタンバイしておきました。一生懸命働いてすごく忙しかったけれど、混乱はなかったですよね。結果として、10月1日のGo To Eatキャンペーンスタートで業界一番に対応し、大きな不具合もありませんでした。そして、一番飲食店に寄り添えたサービスになったという自負があります。

野口:以前の組織だったら多分1年はかかっていたでしょう。まずはプロジェクトチームを組織して、トップを決めて役割を決めて……。そして、変えることでもめていたと思います。

常松:そう、セクションで分かれていると他の状況が見えないので「何のためにやるのか=WHY」がわからなくなってしまうんですよね。でも、新しい組織ではチームでWHYが握れていたので、みんなが一斉にそれに向かうという感じでした。

 例えば、「Go To Eat」で問い合わせがすごく増えてカスタマーサポートが大変な時期もありました。その時に、何をすべきなのか、部門横断で短時間の打ち合わせを行っただけで、自然とおのおのがサポートチームを支援するための「サポートページを充実させる」「導線を変える」「メールでのサポートを送る」などの施策にすぐに移ることができました。

プロセス・組織の改革を継続し、さらに「User Happy」なサービスを目指す

――組織とプロセスの改革ができていたからこそ、全社的な開発が迅速にできたというわけですね。組織を変えるにあたって課題を感じている方、躊躇している方にアドバイスをいただけますか。

常松:アドバイスと言うより、アプローチのアイデアとしてお伝えしたいのは「まずは試しに小さく変えてみよう」でしょうか。Rettyが最初に行ったのも3チーム10人からでしたから。失敗と思ったらまた変えればいいという前提でまずはやってみる。

野口:それと、いい事例を作ることですね。私もスクラムを学んだつもりでいて、間違ったやり方をインストールしていたところもあって「施策の数を担保しない」「見積もりを検証しない」というのが不安でした。でも、常松が自信を持って取り組む様子を見て、私も改めて勉強し直して取り組むことができました。リーダーが自らマインドセットを変えていくという努力は必要かもしれません。

常松:私も3チーム目、4チーム目と融合させるたびに不安はありましたよ。面白いことに、先に新組織に入っていたメンバーは新たに人が入って組織が変わっても平気なのに、後から参加したメンバーほど不安がるんです。それでも少しずつ成功体験を重ねるうちに、誰もが自信を持って取り組めるようになりました。

野口:ちょっと難しかったのが過渡期の評価でしょうか。もともとは施策の数などアウトプットで評価を行っていたのが、所属が変わるとがらっと変わるわけですから。戸惑いもあったと思います。

常松:でも、もともとアウトプット評価にエンジニアリング部門としては違和感がありました。例えばネット予約がうまく当たったとして高い評価を得るのは企画であるべきで、エンジニアとしては不具合や障害の有無や、リリースの速さなどが評価対象になるべきでしょう。その意味では、現在の方が理にかなった形だと思っています。

――これからのRettyのプロダクト開発について、展望をお伺いできればと思います。

常松:全社で「ユーザーを考えたプロダクト開発」を理想に掲げていますが、隅々までできているかといえば、まだ改善の余地はあると考えています。飲食店に直接行っている営業からのフィードバックが反映されるのにまだタイムラグがあり、全く障害がなくなったわけでもない。そこを地道に改善し、ユーザーにも飲食店にも、そして働く私たちにも「いいプロダクトだな」と実感できるようにしていきたいですね。

野口:今回は特にネット予約にフォーカスされましたが、投稿という体験、検索する体験など、あらゆる体験をつないで総合型のグルメサービスとして体験のブラッシュアップを行っていきたいと考えています。

 そしてもう一つは、データをもっと生かしたデータドリブンなサービスにすることです。口コミのデータがかなり蓄積しており、さらにネット予約のデータも蓄積されれば、それらの分析からリコメンドに生かせるのではないかと感じています。

 食べる楽しみとして外食の重要性を実感した今、それを支援し活性化することで日本をハッピーにできるようなサービスにしていきたいと考えています。

――本日は貴重なプロダクト開発の裏側を伺うことができました。ありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/13417 2021/02/09 11:00

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