インフラ専門の技術者集団がいち早くリモートワークに移行した理由
grasysのクラウドインフラストラクチャー部門で顧客向け環境のインフラ設計、構築、運用保守を担当する佐藤嘉章氏。2020年8月にgrasysに入社し、入社後1カ月は新人研修のため毎日出勤していたが、新型コロナ感染症拡大に伴い、研修後は週1日出勤のリモートワークとなった。さらに2020年12月からは完全リモートワークに移行することとなる。grasysはエンジニアのリモートワーク環境構築をどのようにサポートしていったのか。
まずは、grasysの業務内容から紹介しよう。grasysはシステムのコンサルティング、システム開発、インフラの設計、構築、運用保守、ビッグデータなどデータの解析や分析の実施を業務とするインフラ専門の技術者集団だ。
3大クラウドサービスであるGCP、AWS、Azureのほか、システムソリューションを提供するHashiCorp、Elastic、Fastly、Palo Alto Networksともパートナーシップを結び、顧客の要望に応じた最適なソリューションを提供している。運用するシステムに対して累計3億人以上のエンドユーザーがおり、月間のVMインスタンスの運用数が4500台。データ分析基盤レコード数が1日に兆単位の実績を上げている。
今回のコロナ禍に関わらず、インフラエンジニアにとってリモート環境は必須だ。特にgrasysはゲームシステムの構築運用を数多く手がけており、24時間365日のサービスを提供している。
そこで、実はコロナ禍に見舞われる以前からgrasysは月に1日のノー出勤制を実施しており、自宅からの完全なリモートワークに慣れる対策をしていた。
さらに、新型コロナ感染症対策も重なり、2020年1月27日からいち早く社員の90%程度がリモートワークを開始した。感染予防のための外出制限や、買い占めによる食料供給不足対策として、同年2月27日に非常食約7日分を社員全員に配布するといった対応もとられた。
オフィスと自宅の差異を無くす工夫
grasysの社内向け業務サーバーは、物理サーバーを構築するのではなく、全てクラウドで管理するツールを利用している。そのため、オフィスとリモート環境の間で差異はなく、全く同じ環境を利用することが可能となっている。
さらに「より良い自宅の業務環境の構築を目的として、2020年4月20日から各社員に10万円の支給を決定。資産管理の手間を考え、賞与として支給されました」と佐藤氏。自宅環境もオフィス同様に整えるべく、投資を行った。
一方、完全リモートワークにより、社員間のコミュニケーションにはいくつかの問題が発生した。
一つ目は、チームでの業務の進捗管理、特にリーダーが、メンバーの実施している業務の進捗をいかに効率よく管理するかという点。二つ目は、まさに今躓いている問題に対して、迅速に解決に導くためのフォローをどのように行うか。三つ目が、社員それぞれの孤独感をどのように解決していくか。これらが非常に大きな問題として挙がってきたのだ。
そこで、スプレッドシートを用いたKPTを毎日実施することに決めた。KPTとは、現在直面している事柄に対し、Keep、Problem、Tryの3項目に分ける、ふりかえりの手法。それを毎日15分から30分程度、チーム単位で実施することにより、メンバー間のコミュニケーション向上を図った。