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【デブサミ2021】セッションレポート(AD)

エンジニアの社内コミュニティ、リモートワークでどう作る? 実践から学ぶ秘訣【デブサミ2021】

【18-C-8】楽しく学び続けるコミュニティをリモートワークの世界で0から作って育ててきた話

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ライブイベント「朝稽古」でコミュニティを育てる

 では、コミュニティとしてどのような形を目指したのだろうか。

 「フラットな関係にするという点では、新人だけでなくベテランまでを対象にしました。自主的に参加するという点では、任意参加としました。そして、頻繁なコミュニケーションを実現するため、覚悟を決めて、ほぼ毎日イベントを開催することにしました」(山本氏)

 一般的な研修だと、例えば一か月やったら現場に配属になるなど、終わりがある。しかし、Developer Dojoが目指したのは、業務をしながら学び続ける姿だという。体系的な研修と並行して学習イベントを研修期間に限定せず、ずっと続けることを目指している。つまり、学び続ける習慣を身に着けることを目的に、その手段としてイベントを続けるのだ。

 「もうひとつ重要なのが、楽しく学ぶというコンセプトです。ずっと続けるものだから、楽しくないと続かないよね、という会話をよくしていました」(上村氏)

 そのために、15分程度のクリアできるようなテーマを用意して、実際に手を動かしてコードを書き、簡単に達成感を味わえるようにした。そこで立ち上げたのが「朝稽古」というライブイベントだ。

 この朝稽古を、月曜日から木曜日の週4回、10時半~11時にビデオ会議ツールを使って開催してきた。そのため、小さな問題をたくさん用意した。技術的な領域はバックエンドからフロントエンドまでバラバラだが、今業務で必要になるもの、この辺りを知っていると役立ちそうといったもの、作る側が楽しいものなどを作ろうとしたという。

 朝稽古の流れは、次のようになっていた。テーマについてまず教え手が実演して、それから学び手がそれを練習する。そして、最後にその内容をまとめるというものだ。時間にして約30分。ちょっと物足らないくらいのほうが、イベントとしては続くのではと考えたという。その結果、これまで75回以上朝稽古を開催して、毎回30人以上が参加したそうだ。

 また、生きた知識を増やせたといった効果も得られた。生きた知識とは、自分の知っている他の技術との関係性が理解できるようになり、問題の解決に使える知識のこと。そこで、ちょうど取り組んでいる技術を扱うように心がけることで、開発業務の課題に対してすぐに効果を出せるようになったのだ。

 さらに、メンバー同士で学んだことを話題にしたり、一緒に復習したりと、共通の話題が増えたことで、リモートワークに伴う孤独を解消しやすくなる効果もあった。

月曜から木曜までの週4回30分ずつ、ビデオ会議ツールを利用して開催した
月曜から木曜までの週4回30分ずつ、ビデオ会議ツールを利用して開催した

教え方の不安を減らす工夫で、教え手を増やす

 一方で、教え手の体制に課題が出てきたという。

 「3人だけで30人に教えるのは簡単ではありません。それに、こういったコミュニティでは、教え手がもっとも深く勉強できるので、教えるという行動で学ぶ人を増やしたいと思っていました」(山本氏)

 そこで、教え手を増やすため、教え手の2つの不安を減らす工夫をしたという。まず「教える前に何をすればいいのかわからない」という不安である。初めて教える人には、問題の作り方や題材の選び方がわからないといった不安があるのだ。

 しかし「問題を毎回用意する必要はない」と山本は説明した。インターネット上には良質なコンテンツがあり、9月に入社した人に向けて以前にやった問題を再演してもいい。さらに、過去の問題や他の人が作った問題から派生して、新しい問題を作ってもいいのだ。

 2つ目は、「教えている時に伝わっているのかわからない」という不安だ。オンラインのやり取りでは、表情や身体の動きを把握しづらく、その反応をもとに修正するのが簡単ではない。リアクションを得る工夫が必要になるのだ。また、コミュニティのSlackチャンネルには175人が参加しており、感想をつぶやくにはハードルが高くなっていた。

 それに対しては、意識的に大きなリアクションをしてくる人が現れた。そのような人を、『ガヤ芸人』と呼ぶことでコミュニティの中で大事な存在として位置づけた。さらに、Slackでは、分報チャンネルと呼ぶ個人チャンネルに感想を投稿してもらい、それをシェアすることでリアクションを集めた。

 また、アンケートで定量的なデータも取った。これは、朝稽古の問題を評価するものではなく、内容の難易度や元々の理解度、自分の業務への関係度などを測定して、バランス調整をするためのものだ。Slackチャンネルでは実名で投稿しているので、アンケートは匿名でもOKとしている。

 「このような工夫をすることで、朝稽古を始めてから4か月で、教え手を当初の3人から12人に増やすことができました。これは無理して増やしたのではなく、自分からやりたいという人が増えてきた」(上村氏)

 「当初はベテランが中心だったんですが、あとから増えた教え手は、入社2年目といった若い人が多いんです。たぶん、教えたいというより『学ぶために教え手になりたい』ことが大きなモチベーションになっているんじゃないかと思います」(山本氏)

小さなコミュニティを、もっと増やしていきたい

 今後は、Developer dojoのコミュニティを成長させるというよりも、小さな多くのコミュニティを作り、そだてていきたいと山本氏は説明した。コミュニティメンバーが175人もいると、やりたいことは人それぞれであり、一つのコミュニティでは限界があるからだ。Works Human Intelligenceのエンジニアコミュニティは、ほかにもTechBlogコミュニティで昨年末のアドベントカレンダー活動を行ったり、Kotlin Dojoのように特定のプログラミング言語に対応して活動したりしているという。

 最後に、山本氏は「個人をコミュニティに合わせるのではなく、コミュニティに個人を合わせていくため、あらたなコミュニティの立ち上げを支援していきたい」と語った。また、上村氏は「コミュニティへの貢献やメンタリング活動が評価につながる仕組みを作りたい」と語った。

 このセッションで、山本氏と上村氏は、単に新人研修を行ったというのではなく、本質的な課題を解決するためコミュニティを作ったと説明した。技術を学ぶ人にとっては、コミュニティで学ぶ楽しさを感じられ、技術を教える人にとっては、コミュニティ作りの重要性とコツをつかむことができたセッションだった。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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