アプリケーションにおけるクラウド選択の自由と柔軟な組織文化を目指して
こうした状況を受け、同社が打ち出した戦略的指針は「全てのアプリケーションにクラウド選択の自由を」というもの。どのクラウドにも依存しないOpenShiftのコンテナ技術により、クラウドのポテンシャルを最大化するとした。具体的には、以下の4つを軸に事業を推進していく。
「フォーカス」では、OpenShiftに関して、ユースケースを業界ごとに分け、そこに特化した提案を行っていく。特にデジタル化が進む金融や行政、5Gに注力していくほか、産業別にコンテナ基盤の提案も行う。また、認定技術者育成にも力を入れる。
「As a Service」はマネージドサービスのことを指しており、AWSやMicrosoft、IBMおよび国内7社のクラウドベンダーからのサービス提供が可能になっている。先月発表された「Red Hat OpenShift Service on AWS(ROSA)」の一般提供も記憶に新しい。
また自動化領域では、特にKubernetesサービスの包括管理による、OpenShift、Amazon EKS、Azure Kubernetes Service、GKEの一元管理など、ITシステム運用の自動化・自律化を推進する。加えて、SAPシステムや、IBM Zなどのメインフレームのオープン化、UNIXのクラウドへの移行を軸にRHELを拡大し、従来のコアビジネスにおいてもさらなる拡大に努める。
さらに、これら4つの軸と並行して掲げられたのが組織文化の変革支援だ。特にDXにおいては、社内の業務効率化と、新たな製品サービス提供のためのテクノロジーの導入、2つの領域における成功のためにオープンな組織カルチャーの変革が必要であると提言する。
目指す組織カルチャー像は3つ。まずはリリースし、改善を積み重ねる組織。柔軟に改善・活用が可能な、アジリティのある有機的な組織。そして、「誰が言ったかではなく、何を言ったか」で評価される、最も良いアイデアが選ばれる組織だ。俗にいう「PoC貧乏」に陥る日本企業は、欧米に比べて多いという。現状を変えるには、このような柔軟な組織カルチャーを身に付けられるかにかかっている。
これらの戦略的指針の説明後には、5GにおけるNTTドコモとNECとの協業の強化についても説明があった。レッドハット同様「オープン」をキーワードに、通信分野において世界規模の価値を提供していくとしている。
今回の発表で、技術と組織、2つにおける「オープン」に各社が注目している事実は、技術者としても注目すべきところだろう。今まで当たり前にやってきたことを、他の領域に応用するだけで価値を生むことができるかもしれない。2021年、技術者のそうした一歩が大きな成果に繋がることに期待が寄せられる。