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【デブサミ2021】セッションレポート

ニューノーマルは「デベロッパー発ルネッサンス」の時代! #ここアジャ 著者陣が語るレガシー組織の変え方【デブサミ2021】

【19-B-1】デベロッパーからはじめるレガシー組織の景色の変え方~旧ノーマルからニューノーマルへ

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半径5m以内の変化のファンを創る

慣れた不便に名前をつける

 最後のテーマは「半径5m以内の変化のファンを創る」。エンジニアはどのように変化を実現していくことができるかについて語られました。

 「さっき先取りしてしまったけれど」と、沢渡さん。

 慣れた不便に名前をつけ、新しいやり方に率先して取り組むこと。そこから快感体験や成長体験を生み出し、カスタマーサクセスを遂げること。たとえばメールからチャットへ、「IT使える俺ってかっこいい!」という体験を作り上げる。こういったことの積み上げが、半径5m以内の変化へのファンを創っていく。我々ソフトウェアエンジニアは、特に近年、カスタマーサクセスを重要視しています。であれば、半径5m以内の人々をカスタマーとして設定することで、その人たちをファンにするための戦略が立てられます。

 「情シス部門も、この状況で困っている。同じようなサービスがたくさんあり、オンラインホワイトボードだけでも相当ある。これを、エンジニア主導で提案していってあげるとよいのでは」と、新井さんは語ります。

 一方で、こういう変化に対して後ろ向きな人たちがいることも事実です。そういった人たちが、なぜ抵抗を感じているのでしょうか。

サンドボックスの中で小さく成功体験を積もう

 何か変化を起こすときに、全社をいっぺんに変えようと考えてしまい、物怖じしてしまう。これは無理からぬことです。責任も伴う意思決定になるわけですから。

 一方でエンジニアは、新しいことに取り組むとき「サンドボックス」からはじめます。外部には影響を与えず、自由に色々試せる環境、サンドボックス。これを一緒にやることで、変化への恐怖心を和らげることができるのです。

 そして、沢渡さんが「大袈裟にやっちゃうと時間がかかってしまう」、新井さんが「小さい成功は楽しい」と語るように、サンドボックスの中で小さく成功体験を積むことこそが、大きな変化へ向けて必要なアクションなのだと強く感じました。

3つのファンを作る

 それでは、半径5m以内の「ファン」とは、具体的にどのようなファンを作っていけば良いのでしょうか。それは「技術のファン」「サービス/プロダクトのファン」「カルチャーのファン」の3つ、と沢渡さんは示します。

 「カルチャーのファンは、どのような切り口から入るのがいいのでしょうか」近藤さんがそう問いかけると、沢渡さんからは「問題を解決するところから入るのが良いでしょう」という回答がありました。実際に直面している問題や課題に対して、デベロッパーが持っている知恵や技術を使って解決する。そういった状態を作ることこそが、ファンを作り上げていくのです。

 「相手の課題を解決するということは、マーケティングそのもの。カルチャーを作っていくことは、ブランディングそのもの」沢渡さんのこの比喩はイメージしやすく、デベロッパーが明日から行動していくその背中を力強く押してくれるでしょう。

さいごに

セッション終わりのリラックスした登壇者たち
セッション終わりのリラックスした登壇者たち

 充実したパネルディスカッションの最後に、新井さんと沢渡さんから「ニューノーマルを体現している」エンジニアへメッセージがありました。

 新井さん「書籍の8ページに『過去に流した涙を笑顔に変えたい』という言葉がある。人間、万事塞翁が馬。過去はどうあれ、未来を作っていくのが我々エンジニアです」

 沢渡さん「ニューノーマルとは、デベロッパールネッサンスの時。幸か不幸か、世の中は過渡期です。デベロッパーがやっていることが市民権を得られる時が来ているので、デベロッパーの輪の中に止まらず、ともに良い体験を作り上げていきましょう。オープン&コラボレーションで世の中を良くしていきましょう。デベロッパーズルネッサンス!」

 「デベロッパーの輪の中に止まらず」というメッセージが、いつまでも胸に刺さっていました。自分たちの流儀を理解しない人たちに対して「わかってないよね」と線引きするのではなく、「ファン」になってもらうためにこちらから働きかける――。そういったデベロッパー側からの越境こそが、旧ノーマルからニューノーマルへの架け橋となるのです。

Ask the Speaker

 セッション後は、Ask the Speakerが開催されました。残念ながら、新井さんのマイクが不調で、沢渡さんのみの回答となりました。

 質問「『辞書登録をしてメールの作成を効率化するのではなく、チャットツールに変革していく』といったような大きな変化を起こしたいけど、急な変革は恐怖心があるから小さく改善したい……この規模感のさじ加減、どういう塩梅がいいのか、勘所をお聞きしたいです」

 沢渡さん「講演でも話しましたが、まずは身の回りの問題に名前をつけるところからです『めんどくさいの解決』から始めて、ひとつうえの階層のひとたちが抱えている課題を解決するというアプローチが良いでしょう」

 質問「受託開発型組織でサービスやプロダクトのファンを掴むにはどうしたらよいでしょうか?」

 沢渡さん「受託開発でも、課題の管理の仕方やタスクをさばくやり方などから新しいチャレンジをすることはできます。変化のファンを生んでいくことは十分可能で、新しいやり方を投げ込んで体験してもらいましょう」

 モデレーター「最後に参加者のみなさんに伝えたいことは?」

 沢渡さん「あきらめの言葉は何も生まない。小さく変えていってほしい」

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この記事の著者

小田中 育生(オダナカ イクオ)

 開発(Develop)を愛する人たちの集まり、DevLOVEによく出没する人。 所属する企業においては、研究開発のディレクションとエンジニアがいきいきと働けるDX(Developer eXperience)を重視した風土づくりという両輪を回し続けている。 近年はアジャイル開発に助けられているが、一番助けてくれているのはいつも一緒にいるチームメンバーたちだったりする。 Twitter:@dora_e_m note:https://note.com/dora_e_m 著書『いちばんやさしいアジャイル開発の教本』(インプレス)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/14029 2021/05/14 11:00

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