慣れた不便から解放されよう
New Normalを体現しているのはエンジニア
「デブサミのテーマはWe are New Normal。New Normalを体現しているのはエンジニアだと思います。これまでに挙げた課題は、エンジニアのどんな手法が有効だと思いますか?」
2つ目のテーマは、近藤さんの熱い一言から始まりました。
それを受けて新井さんは次のように語ります。「GitHubでソースコードを管理し、クラウドを駆使し、Trelloを使い、Zoomでミーティングして……という働き方をエンジニアチームは以前からやっていた。それがコロナ禍で世の中に広がっていった。エンジニアドリブンで広まっていったツールをどんどん使っていくとよい」
「DX」という言葉が急激に浸透していったときに、ある種の違和感を覚えたエンジニアは少なくないのではないでしょうか。変革もなにも、そんなことは当たり前にやってるんじゃないのか? という想いだったり、DXってDeveloper eXperienceじゃないの? というモヤモヤだったり。
エンジニアは魔法使い!?
そのようなエンジニアの当たり前が浸透していくためには、セキュリティの壁など技術的な課題に加え、文化的な課題を解決していく必要があります。
この文化の壁を乗り越える手段として、新井さんは「モブプロ・ペアプロ」を提案していました。キーボードのショートカットのような細かい点から始まり、実際の画面を共有しながらナレッジを共同化していく手法です。新井さんは、エンジニアが「こんなこともできるよ」と実際にやってみせる様子を指して、エンジニアは魔法使いのような存在、とも言います。
この提案には、近藤さんも「モブプロは、リアル世界よりもリモートワークのほうがむしろやりやすいかもしれませんね。画面への距離が全員同じなので」と同意を示していました。
デベロッパー発のルネッサンス
「デベロッパー発のルネッサンスの時代だ」
沢渡さんは、そう熱く語ります。KPTのようなふりかえり、Slackのようなチャットツール。これらは、デベロッパーの枠を超えて市民権を得ていると言えるかもしれません。では、これらの後に続くにはどうしたらよいか。どのように市民権を得ていくのでしょうか。
ある場において、「当たり前」として認識されているものは、そもそも「不便」として認識されません。その最たる例としてよくやり玉に上がるのが「ハンコ」。
こういった「当たり前」と認識されているけど実は不便なものは、Box Japanの安達徹也さんにより「慣れた不便」と名づけられています。沢渡さんはこれに感銘を受け、「慣れた不便」という言葉をよく使っているそうです。
「職場における慣れた不便に名前をつける。そうすることで、個人の不満ではなく世論になっていく」――。これにはなるほど、と唸らされました。
たとえばスマートフォン。スマートフォンは、「便利だ」という知識ではなく「便利だ」という体験が先にあったからこそ広く普及していきました。この例になぞらえて、エクスペリエンスファーストで快感体験をつくる、つまりカスタマーサクセスを目指すことが大切になっていきます。
マーケティング、ブランディングの考え方を使って、ファンを増やしていく。そういった考え方が、今後変革を担うエンジニアには求められていくんだな、ということを感じました。