優先順位はつけない SaaS事業におけるデザイナーの関わりかたとは
――BtoBのSaaS事業だからこそこだわっていること、意識していることはありますか?
この図は、私なりにSaaSビジネスにおけるデザイナーの関わりかたをまとめたものです。
デザイナーが携わる領域にはおおきくふたつあると思っており、ひとつはプロダクト本体の開発、もうひとつは、プロダクトを知ってもらい、受注し、活用してもらうというサイクルそのものです。
そのなかでイメージしやすいのは、UI設計などプロダクトのデザインかと思います。ですがSaaSビジネスでは、そのプロダクトがPRやマーケティングの文脈でどのように知られ、営業活動につながり、受注に至ったあとどうやってカスタマーサクセスに結びつけていくのかといった過程が必ず発生します。そういったプロセスに、あまりデザイナーが参画してこなかった印象があったのですが、私はその過程にもデザインが必要なのではないかと考えていました。
ただし、そのどちらにも優先順位をつけるべきではないとも感じていました。ふたつに分けてしまうと必ずどちらを先にやるべきかという順番が生まれてしまいますし、大体の場合、プロダクト開発の優先度が高くなりがちです。
ですが当然、開発だけやっていれば良いというわけではない。いくら管理画面のUIが優れていてもCMやLP、営業資料がイマイチだったら興味を持ってもらえないですし、いくらCMなどで上手く見せても、管理画面が使いづらかったらガッカリしますよね。
だからこそ、PC画面の中だけでUXが完結するのではなく、お客さまがプロダクトを知って、興味を持って我々に連絡し、発注し、実際に利用してもらい成果が出る。そのプロセスすべてがUXだと思っています。
ただ、デザイナーの得手不得手を考えると、そのふたつを分けて捉えることで効率が良くなる面もあります。たとえばビジネスコミュニケーションデザインについては、グラフィックデザインやウェブデザインとしての側面が強いため、ビジュアル表現が得意な方にお願いしています。一方、プロダクトのUIデザインでは、いかにロジカルにつくり、人に説明することができるかという点も重要になる。そうなると当然、ビジネスコミュニケーションとは異なるスキルセットが必要になるはずです。
――では、ビジネスコミュニケーションのデザイナーは、具体的にどういった役割を担っているのでしょうか。
たとえば、Letroというプロダクトがメディアに取りあげられる時、どういった画像が掲載されるとより魅力や機能がしっかり伝わるか。またメンバーがインタビューを受ける時、どのような場所で撮影をしてもらうことが効果的か。そしてそれが記事として掲載されたとき、どのような画像でシェアされるべきか。それらを考え画像を作ることもひとつの役割です。この場合必要になるのは、ビジネスコミュニケーションの視点で広報メンバーと連携することです。
またマーケティング領域では、たとえばリアルのセミナーであれば会場の装飾をしたり、パンフレットや登壇スライド、申し込み用のLPもふくめてデザインをすることで統一感のある訴求が可能になりますし、セールスの分野では、ダウンロード用のホワイトペーパー制作にもデザイナーが関わっています。