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進化するエンジニア組織

アスクルとリンクアンドモチベーションCTOが語る、テクノロジーで描く開発者体験の向上と未来の事業の話

ディスラプト、破壊的変革に対して、会社としてどのように受け止めているか?

 パネルディスカッションではQ&A方式で、さらに各社の取り組みが具体的に紹介された。

広木:既存の業態に対して創造を仕掛けていくことが、実はディスラプトという表現なんだと思いますが、既存の事業との兼ね合いやディスラプトの方向性・受け止め方について聞かせてください。

内山:アスクルはBtoBのオフィス用品通販のイメージが強いと思いますが、この事業だけで伸ばしていくだけではなく、アセットを持った上で次の事業を作るようなイメージですね。我々はデジタライゼーションがまだまだが足りてないので、現在は基盤作りの段階と位置付けています。

広木:紙の分厚いカタログからWebサイトで選ぶのが当たり前という流れを作ったのも、ディスラプションの一つだったのでは?

内山:実はアスクルのインターネット通販は、かなり早い時期から始めているんですね。FAXからネット通販にジャンプアップ、ディスラプションする大きな取り組みは過去2回くらいやっています。次の3回目のウェーブを作ろうと盛り上がっているのが、今の社内の雰囲気です。

広木:破壊的変革に慣れている、ディスラプションを何回か経験しているという会社のカルチャーは面白いですね。

柴戸:リンクアンドモチベーションはディスラプトという表現ではなく、「Reborn」という言葉を年間テーマとして掲げています。やらなければ生き残れない、つまり必須でやらなければならないという認識ですね。

 モチベーションクラウドを開発したこともそうですが、組織の変革技術を人に、だけでなく、機械にインストールして労働集約性を下げるのは自然の流れでもあるし、動機付けや意思決定など、人でなければならない領域も必ずあると考えていました。人の仕事をなくすというよりは人とソフトウェアの最適解を作る、そんなイメージだと捉えています。

広木:リンクアンドモチベーションがよく使っているモチベーションエンジニアリングという言葉には、「組織改善に対して、再現性のある手法を用いましょう」という意識の高さを感じます。それらに対して、AI活用や自動化は親和性が高いのでは?

柴戸:まさに弊社の基幹技術は、再現性と実効性をいかに高めるかというところが重要なテーマ。これまで培ってきたセオリーやデータと、ソフトウェアの親和性は高いと強く感じています。現在、8,010社、203万人以上の組織人事に関するデータがあるので、活用していきたいですね。

世の中の組織改善の今と未来、課題、今やっていること
世の中の組織改善の今と未来、課題、今やっていること

開発組織の内製化はどのように進めているのか?

広木:リンクアンドモチベーションはモチベーションクラウドを作るときから、アスクルはLOHACOの立ち上げから、内製化を進めていると聞いています。どのようなきっかけで内製化に舵を切ったのでしょうか?

柴戸:内製化を進めた理由は2つあります。一つは、プロダクトをコントロール可能な状態にしておく必要があるというリスク的な観点。規模が大きくなると全部外部パートナーだけに頼るのはリスクも出てくるので、自分たちで作ろうと。それぐらい重要な取り組みだと思っていたというのが1点目です。もう一つは、競争優位の観点ですね。単なる目標設定だけではカバーしきれない部分を凌駕するという意図で決定しました。

 最初は、エンジニアのパソコンのMac導入やシステム関連の予算確定、大規模障害があった際も、エンジニア以外には聞きなれないシステム用語をどう伝えると理解してもらえるかなどの苦労もありました。

内山:実は、LOHACOを立ち上げる前に、BtoCサービスを立ち上げようとして2~3回失敗を経験しているんですね。ヤフーとの提携で開発スピードの大切さに気づき、自分たちの組織もエンジニアの内製化が必要だということで、内製化に取り組み始めました。

 開発スピードは競合サービスとの差をつけるためにも必要ですし、我々の成功率を上げるためにも不可欠です。リリースを1日500回やるのと月1回では、間違いなく1日500回試している方が確率は上がります。仮説検証速度を上げなければ、その確率が100%に近づくことはないので、お客さまにとって良いサービスを作るためにも必要だと考えています。

 また、私個人としては、現場に一番近いのは運用であり、ログを見る人から新しい発想は生まれると考えています。そこを人に頼ってしまうと、なかなか新しいサービスを築けないという点もあると思います。

アクスルのエンジニア組織の変遷
アクスルのエンジニア組織の変遷

広木:今は運用監視業務をかなり内製化させたとのことですが、何か苦労はありましたか?

内山:LOHACOのサービスは90%ぐらい内製化されましたね。BtoB通販のASKULのサイトはこれからリニューアルを進めていきます。内製化したばかりの頃は、急にアラート通知の携帯電話が鳴るようなトラブルも多かったのですが、エンジニアも増え、アラートが鳴ることも減ってきました。今は開発に集中するための組織作りに集中している感じですね。

開発者体験(Developer eXperience)を向上させるための工夫

広木:開発者として気になるのはDeveloper eXperience、開発者体験だと思いますが、現在どんな工夫してますか?

内山:CTO協会が作っているDX Criteriaレポートを活用しています。昨年はメトリクスが課題だったので、メトリクスのスキルを上げる取り組みをしました。ほかにも評価制度を再構築し、スペシャリストが評価される仕組み作りを進めています。例えば、ある技術に特化している人をエバンジェリスト認定を行う制度を構築中です。

 エバンジェリストには予算を割り当てる予定です。その予算は知見を深めるための自分への投資でもいいし、知見を広める活動に使ってもいいというものです。

広木:それはすごい。ちなみに今欲しいのは、何のエバンジェリストですか。

内山:いろいろありますけど、KotlinやTypeScriptといったプログラミング系の方が協力いただけるとうれしいですね。弊社のアセット的にはJavaを使える人だったのですが、若手エンジニアたちがKotlinをやりたいと言うので、勉強会で1プロダクトを作ってみたら「Kotlinいいね」と。全社でKotlinにしようと始めたのが数年前ですが、今は新しいプロダクトを作るときは基本Kotlinという感じです。

柴戸:私たちもCTO協会のDX Criteriaやメトリクスによって、ケイパビリティを向上させる取り組みは常に行っています。エンジニアに限らず、ちゃんと尊重されて成長を実感することはとても大事。エンジニア同士や、営業との関係性などにも配慮しています。現在は、会社全体の規模に対して、エンジニア組織規模は小さいこともあって、社内で上下関係ができないようにバランスを取り、一人ひとりが成長貢献を感じることができるという点は、やはり重要だと思います。

広木:コアビジネスがあるところから内製化したエンジニア組織に入社すると、マイノリティになる部分やビジネスサイドの抵抗感などを気にする人もいるかもしれません。エンジニアとしての働きやすさに対しては、どのように取り組んでいますか?

柴戸:弊社はお互いにリスペクトし合う風土や、「その人のいないところで言えないことは話さない。」という陰口禁止の文化があるので、働きやすいと思います。コンサルティング会社ということもあって、全員のITリテラシーが高いわけではないですが、任せてくれるので逆にやりやすい面もあります。会社組織のセオリーやノウハウ、ナレッジはプロの会社なので、その点には自信がありますね。

内山:エンジニアがこれまでにやってきたディスラプト、失敗も含めて破壊的変革が認められているし、会社もDXを公言しています。そういう意味では今がチャンスであり、我々の中では風が吹いてきた、この風は爆風にしたいと考えているので、働きやすいと思います。

 既存サービスのディスラプト、開発者体験の向上などに取り組み、新たなサービスを創出すべく内製化を進める両社では、エンジニアの仲間を求めている。エンジニアとしてキャリアアップする場としても魅力的な選択肢となるのではないだろうか。

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この記事の著者

馬場 美由紀(ババ ミユキ)

 エンジニアとテクノロジーが好きな編集・ライター。エンジニア向けキャリアサイト「Tech総研」「CodeIQ MAGAZINE」、Web技術者向けの情報メディア「HTML5 Experts.jp」などでライティング、コンテンツディレクション、イベント企画などを行う。HTML5 開発者コミュニティ「h...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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