Appleが開催するWWDCとは
Worldwide Developers Conference(以下、WWDC)とはAppleが毎年6月ごろに開催するイベントです。直訳すると「世界開発者会議」となり、具体的にはAppleが提供する端末を対象とした開発を行う開発者に向けたイベントとなります。しかしWWDCではiOSやwatchOSの最新機能の紹介も行っている(図1参照)ため開発者に留まらずAppleファンとしても嬉しいイベントです。そのため、WWDCの開催時には製品に使われているテクノロジーなどの内部的なアップデートだけではなく、新機能などの外部的なアップデートも各メディアに大きく取り上げられています。
WWDCにて発表される内容はセッションごとに分かれています。例えばKeynoteのようにOSのアップデートに主眼を置いたものや、それ以外のテクノロジーのアップデートについて解説するものなどが存在します。Keynoteでは1時間ほどでiOS、iPadOS、watchOS、およびmacOSの新機能や今年度の目玉機能がフィーチャーされます。それ以外のセッションでは、新しく登場したAPI、Build Systemの説明、あるいはUIのパフォーマンス最適化についてなど、より技術に特化したさまざまな内容についてフィーチャーされています。なお、全てのセッションはWWDC公式サイト(英語)から確認することができます(図2参照)。さらに公式のApple Developerアプリを使えばセッション発表者の発言内容の全文を読みながらセッションを見ることができて便利です。日本語の字幕にも対応しています。
さて、このようにWWDCは参加者からすると大変嬉しいイベントですが、なぜこのようなイベントが毎年開催されるのでしょうか。
その目的はAppleが提供するテクノロジーを開発者が理解し、正しく使えるようになることだと考えられます。WWDCでは多くのアップデートが公開されますが、それだけではiPhoneやApple WatchなどのAppleデバイスを使用するエンドユーザーが十分にアップデートを利用できない場合があります。
例えば、今回発表されたSharePlayを使うことによって、FaceTimeを介して映画や音楽などのコンテンツを共有できるようになりました。これによりFaceTimeを使って友人と通話している最中に同じ動画をシーケンスバーを同期させながら視聴することができます。
「Meet Group Activities」というセッションの中では、SharePlayに対して次のように言及されています。
> Our goal is for every play button throughout the system to work with SharePlay.
WWDC公式サイトより引用
この発言から、AppleはSharePlayによる体験を拡充していきたいと考えていると読み取れます。しかし、SharePlayを介してコンテンツを共有するためには、そのコンテンツを保有するアプリ側で対応を行う必要があります。具体的には、GroupActivitiesという新たに発表されたフレームワークを導入する必要があります。つまり、各開発者が自プロダクトに対して組み込まない限り、エンドユーザーに最新の機能を十分に提供できないのです。
また、セッションの他にDeveloper Labsというコーナーを利用してテクノロジーについての理解を深めることができます。Developer LabsではAppleのエンジニアと1on1形式でテクノロジーに関して質問および相談することが可能です。Appleが提供するフレームワークは基本的にOSSではないため、Appleのエンジニアと話すことは内部の挙動について深く知るいい機会となります。
最後に開催形式についてですが、2020年度からオンラインでの開催となり参加費も無料となりました。なお、2019年まではサンノゼにて開催されており、チケットを購入し現地に赴くことで参加できました。現地に行ってカンファレンスの熱気を感じたり参加者同士のコミュニケーションを楽しんだりできないのは残念ですが、オンラインで手軽に参加できるのは便利ですね。