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医療業界未経験のエンジニアも活躍できる
「NEXT Stage ER」や「NEXT Stage ICU」「NSER mobile」など、救急医療に特化したITソリューションを提供しているTXP Medical株式会社。
同社の最大の特長は、代表取締役の園生智弘氏をはじめとする現役の救急医がエンジニアとして開発に携わっていること。また同社のVPoE(Vice President of Engineering)を務める水島克幸氏は前職で電子カルテの開発に携わるなど、医療系システムの開発経験を持つ。だがこれまでの連載でも分かるように、園生氏も水島氏も「当社では医療系システムの開発経験がない人でも最前線で開発してくれている」と言い切る。
FileMakerエンジニアの菅氏はその一人。医療系の開発経験はないが、現在自治体向けのコロナ入院患者調整システムの開発と運用に加え、NEXT Stage ERの病院向けカスタマイズを担当している。菅氏は以前、製造業の工場で品質管理を担当していた。
「工場では製造履歴を紙で管理していました。何か問題が起きると、倉庫に行ってその履歴を表計算ソフトでまとめてお客さまに報告していたのですが、その作業をもっと楽にしたいと考え、導入したのが Claris FileMakerでした。FileMakerに触れたことで、その面白さに気づき、フリーランスのFileMakerエンジニアに転身。Next Stage ERが誕生した背景が、品質管理を担当していた頃の自分と重なり、共感しました。当時は医療の知識は全くありませんでしたが、FileMakerエンジニアとして新しいジャンルに挑戦したいと考え、TXP Medicalへの入社を決めました」(菅氏)
一方、室園氏が担当しているのは、Microsoft Azureなどの他のデータベースからFileMakerにデータを取り入れるAPIの開発だ。水島氏が以前務めていた電子カルテの開発会社にSES(システムエンジニアリングサービス)として派遣され、5〜6年、電子カルテの開発に携わっていた。
「その電子カルテの開発会社のアドバイザーを園生さんが務めていて、人となりがわかっていたこともあり、面白そうなことをやっている会社だと思っていました。SESとして次に話をもらった現場は、医療とはまったく異なる分野。もう少し医療系でキャリアを積みたいと考えていたとき、水島さんから声を掛けてもらいました。それがTXP Medicalに参画するきっかけとなりました」(室園氏)
FileMakerの経験は問わない
菅氏とは異なり、医療システムの開発経験を持つ室園氏だが、TXP MedicalのキーテクノロジーであるFileMakerについては、「製品名は知っていましたが、触れたのはTXP Medicalに入社してから」と明かす。現在、室園氏が担当しているプロダクトが同社の「問診システム」と「日本ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計」ページだ。
いずれもFileMaker側と各プロダクト側が、APIでデータ連携される仕組みの開発である。FileMaker エンジニアではない室園氏は「例えば、ボタンを追加するなどの画面の変更もGUIで気軽にできるので、使いやすいソリューションだと思います。また、パラメータを送信する際はJSON形式の文字列を使うので、非常に独特だと思います」とFileMakerについての印象を語る。
一方の菅氏が初めて触れたのはFileMaker Pro 12。「すごく面白くて夢中で触りました」と、その魅力を次のように語る。「FileMakerの一番の魅力は、思いついたアイデアや考えを短い時間で形にできること。API連携も容易にできるので、できることの幅も広いです。また、FileMaker好きな人たちとコミュ二ティで盛り上がることもできます」(菅氏)
現在、Claris FileMakerの最新バージョンは19。TXP Medicalでも社内のクライアントを管理するツールや、菅氏が担当している山口県のコロナ入院患者調整システムのフロントエンド部分など、最新バージョンを活用して構築している。
「FileMaker 19 では cURL、JSON、JavaScript関数が使えるため通常よりも高速な処理が可能になり、UIもリッチにできるようになるなど、さらに魅力的なソリューションとなりました。新しい機能を生かして、FileMaker単体では実装できないUIのセットを用意し、既存の製品に簡単に乗せられる仕組みを作っています」(菅氏)
医療用語には慣れが必要だが、これまでの開発経験は確実に生かせる
室園氏と菅氏は共に、TXP Medicalで本格的に医療系システムの開発に従事している。過去の経験はどう役立っているのか。「前職で電子カルテを開発していたので、基本的な医療関係用語は分かるのでその辺は、医療系システムの経験のない人よりスムーズに仕事ができていると思います。ですが、現場の医師が使う略称などは分からないことも多いです」(室園氏)
「今まで製造業やEC事業などでFileMakerを使った外部連携の仕組みを開発してきました。そのときに培った経験が引き出しとなり、医療系システムでの問題や課題解決に生かされています」(菅氏)
業界外から医療業界にチャレンジする際に直面する課題の一つは医療の専門用語だが、TXP Medicalなら、社員に医療従事者がいるため、わからないことがあれば、聞ける環境にある。
「TXP Medicalはリモートワークなのに、周囲とうまくコミュニケーションがとれるのか」と思うかもしれない。それも取り越し苦労だ。「私の工数の50%以上は各メンバーとのコミュニケーションに使っていると言っても過言ではありません」と水島氏。メンバーとのコミュニケーションを重要視し、オンラインミーティングツールやチャットツールで頻繁に会話をしながら、各エンジニアが何に困っているのか理解するように努めている。ベンチャーでありながら、離職率が非常に低いのもTXP Medicalの特長と言えるだろう。
やりがい、面白さについては、「作ったモノがバグなくスムーズに動き、ユーザーから『使いやすくなった』『便利になった』などの言葉をいただけたとき」(室園氏)、「自分が作ったモノが社会の中で使われていることが見られること」(菅氏)と話す。
TXP Medicalではこれからも現場の痛みや課題に根ざした、現場感のあるプロダクトを次々に出していきたいという。「企業の規模が大きくなると、クイックな開発ができなくなるところも多い。だが当社はたとえ組織が大きくなったとしても、スピード感を持って、現場の要望に応えていく。それが当社の価値だと考えている」(園生氏)
特にTXP Medicalが得意とする救急の領域ではなおさらだ。これまでのようにウォーターフォールでじっくり仕様を決めて開発するのでは、激動の時代に合ったシステムの開発は難しい。同社ではユーザーの声を聞き、アジャイル開発でその要望にあったシステムを開発できる体制を引き続き追い求め続けていく。
エンジニア個人の裁量の幅が大きく、ベテランになっても現場での開発ができるところも、TXP Medicalの魅力。「生涯、モノづくりをしたい人にとっては、最高な会社だと思います」(水島氏)
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