GitHub Universe 2022は、GitHubのCEO、トマス・ドンケ(Thomas Dohmke)氏によるキーノートから開幕した。Dohmke氏はまず、GitHubのこれまでの歩みと成長について触れた。
GitHubのサービスは現在、全世界で9400万人以上の開発者が利用していると言われている。2018年からMicrosoftが所有するこのソースコードリポジトリの最大手は、15年前に最初のコードの行がコミットされたことから始まった。現在では、年間経常収益が10億ドルに達している。
Dohmke氏は、「これまでも、この先も、GitHubが全ての開発者にとって『ホーム』となるべく、あらゆる用途に適し、ベストプラクティスが得られるプラットフォームとなることを目指している」と話し、オープンソースの世界がGitHubを中心に今後も拡大していくとの予見を示した。
[補足]
この1年間のGitHubの拡大と、オープンソースのグローバルトレンドについては、GitHub Octoverseにて詳しく記載されている。
あらゆる規模の企業で利用が可能な「GitHub Copilot for buisiness」、音声のみでCopilotを操作する「Hey GitHub!」
今年の初めに発表され注目を浴びた「GitHub Copilot」(以下、Copilot)。CopilotのことをRizel Scarlett氏(Developer Advocate)は、「エディターでコードを提案してくれるAIペアプログラマーである」と紹介。詳細について、デモを交えてScarlett氏が発表した。
Copilotは、コードやコメントを入力すると、AIによって次のコード行を提案してくれる拡張機能だ。Neovim、JetBrains IDE、Visual Studio、Visual Studio Codeといったエディタとの統合に対応し、OpenAIのCodexによって提供される。
1年間のベータ版の運用を経て、2022年6月に個人開発者向けにリリースされた。個人向けの場合、1ユーザーあたり月額10ドル、年間100ドルで利用が可能。
そして今回新たに発表されたのは、Copilotのビジネス版である「GitHub Copilot for business」だ。ビジネス版の提供が開始されることで、企業が従業員用にCopilotのシートライセンスを購入・管理できるようになった。また、 Copilotのさまざまな設定を組織に代わって管理することも可能となった。
続けてScarlett氏は、「GitHub Copilotを誰でも使えるようにすることが目標。そこで、この目標に向けた次のステップとなる、いま私たちが取り組んでいることをお見せしたい」と、スクリーン上にエディタ画面を映し、音声のみでCopilotの操作が可能な「Hey, GitHub!」のデモを披露した。
Hey, GitHub!のデモは、音声認識によって自然言語を認識し、その内容をCopilotがAIの推奨するコードに自動的に置き換えてくれる、というものだった。会場の驚きを呼んだその具体的なデモの様子を一部紹介する。
Scarlett氏:Hey, GitHub! Let's write some codes.
GitHub側:I activate code mode.(コードモードが起動)
Scarlett氏:Import a graph plotting library.
GitHub側:Here is a recommendation for you.(import文を3行示す)
Scarlett氏:A function to analyze the sentiment of text with a free web service.
GitHub側:Here is a recommendation for you.(関数のコードを5行示す)
Scarlett氏:Change it to return a boolean.
GitHub側:Here is a recommendation for you.(上述のコードの一部を変更)
このようにScarlett氏が発したコーディングの内容が、エディタ画面にどんどん記述されていき、最後に「Hey, GitHub! Run the program.」とプログラムを実行すると、その結果画面が表示された。
実際にSiriやAlexa、Google Assistantなどの音声認識に話しかけるように、音声だけでコーディングから実行までが行われるため、キーボードに触れる必要が一切ない。GitHubによると、手での入力が困難な開発者にとって利用しやすくすることが目的だという。
実はこのHey, GitHub!、現在はまだ実験的段階であり、Visual Studio Codeでのみ動作する。テクニカルプレビューとして提供されており、利用希望者登録を行えば、実際に使用できてフィードバックも行える。今後、さらなる研究とテストを重ねて機能を拡張していく予定だ。