「GitHub Codespaces」の一般提供開始、全ユーザーに公開した背景とは?
GitHubはブラウザベースの統合開発環境(IDE)である「GitHub Codespaces」(以下、Codespaces)の一般提供を開始した。CodespacesはこれまでGitHub TeamsとGitHub Enterpriseのユーザーに対して有料プランで提供していた。
April Leonard氏(Staff Software Engineering Manager)はCodespacesを一般公開した背景について、「昨年の提供開始以来、何千人もの開発者が企業内やチームでCodespacesを利用しており、ビルドの時間が短縮され、開発者のワークフローが劇的に改善されるという成功談を聞いている。そもそも管理するのが難しく、複雑な開発環境の必要性を取り除くことで、より多くの開発者の数を増やし、誰もがクラウドから創造、コラボレーション、イノベーションを起こせるようにしたい」と明かした。
Webブラウザからの簡単な操作で開発環境が起動し、コードの編集やデバッグが可能なGitHub Codespaces。今回の発表により、ユーザーは毎月60時間までCodespacesを無料で利用できるようになった。
また、JetBrains社との提携により、開発者はCodespaces上で好きなIDEを使用できるようになった。VS Codeやローカルのデスクトップ上のIntelliJでCodespacesを利用できるだけでなく、JupyterLabで開くことも可能。さらに、CodespacesのGPUがプライベートプレビューとして開始される。
GitHub Codespacesは、LinkedIn Learningの50以上のCodespaces対応コースを通じて試すことができるとのこと。また、これらのコースは2023年2月まで無料で受講が可能。
CI/CDの移行を簡単にする「GitHub Actions Importer」やオープンソース開発者のキャリア支援「GitHub Accelerator」の発表……そのほかアップデート
そしてここ数年、ビルドやデプロイ、テストといった開発者の煩雑なワークフローを自動化する「GitHub Actions」は、多くの企業やオープンソースコミュニティで注目されている。
実際にLinuxやWindows、Mac OSでは、1日約1000万回以上のビルドがGitHub Actionsで行われているという。このことから、続いて登壇したDamian Brady氏(Sr. Manager, Developer Advocacy)は、GitHub Actionsのことを 「成長が著しいCI/CDプラットフォームである」と示した。そして今回、「GitHub Actions Importer」がリリースされた。
GitHub Actions Importerは、CI/Cの移行の複雑さを軽減するのに役立つという。GitHub Actions Importerを使えば、以前から使っているCI/CDツールからGitHub Actionsへの移行を計画・実行できるため、より素早く稼働させることが可能だ。また、コンテナとのやりとりに使用されるGitHub公式のCLIの拡張機能により、大規模なCI/CDであっても移行プロセスの大部分を自動化し、ミスの多い手作業から解放される。
GitHub Actions Importerは、Dockerコンテナとして配布され、GitHubユーザーであれば誰でも無料で利用できるとのこと。
また、オープンソースコミュニティ開発者を支援する新しい取り組みの1つとして、「GitHub Accelerator」が紹介された。20名の開発者やチームに対して、フルタイムのオープンソースキャリアを築くために、10週間のプログラムや2万ドルの奨学金のほか、メンター制度まで提供する。申し込みは今年の12月31日まで。
この他にも、GitHub Issueにおける100以上の新機能とベータ版の発表や、GitHub Enterprise Server 3.7の一般公開、CodeQLのRuby対応などさまざまな既存機能のアップデートがリリースされた。詳細はGitHubのブログポストで確認できる。
これまでも、この先も、“開発者ファースト”を目指すGitHub
GitHub Copilot for buisinessの新発表から、実験的機能であるHey GitHub!の発表、GitHub Codespacesの一般提供開始、GitHub ActionsでCI/CDのみならず全ての自動化、オープンソースコミュニティへの新しい貢献、そして既存機能の細かな改善など、より詳しい知見を求めて久々にリアルで多くの聴衆が耳を傾けた。3年ぶりの会場開催ということもあってか、今回発表された事業は想像以上に盛りだくさんだった。
最後にCEOのDohmkeが再び登壇し、Keynoteで発表したすべてのリリースに関して、「ほんの15年前には、スタートレックのようなサイエンスフィクションのように思えたことだろう」と述べた。
15年前、GitHubを構築するための最初のコードがコミットされたことからGitHubは始まった。それ以来、GitHubは常に開発者を第一に考える(開発者ファースト)というミッションのもと、数々のイノベーションを生み出してきた。
その理由についてDohmke氏は、「開発者を第一に考えることは、その開発者に関わるすべての人を第一に考えることでもある。開発者が創造性を発揮し、幸せになることで、最高のモノを作り上げることができる」と強調した。GitHubはこれからも開発者のニーズに応え、開発者の全ての体験に貢献していくために、多種多様なプロジェクトを展開していくだろうと伺えた基調講演だった。