ブランチとマージ
コミットまで済ませたところで、Gitの特徴的な機能であるブランチの操作に移ります。ブランチ(branch)とは、「枝」のことです。これまで、ブランチは「main」だけでした。実際の開発では、作業内容を直接mainブランチにコミットすることはせず、別のブランチで問題ないと確認した上で「マージ」するのが基本です。ここからは、ブランチの作成や移動、マージとコンフリクトの解決を見ていきます。
ブランチを作成する
ブランチを作成します。ブランチを作成すると、作成元のブランチ(ここではmain)と同じ内容のブランチとなります。ソース管理ビューの[ミートボールメニュー]アイコンから[ブランチ]-[ブランチの作成]を選択します。コマンドパレットに新しいブランチ名を入力して[Enter]キーを押します。ここでは、ブランチ名を「work」としました。作成後、ステータスバーのブランチ表示が「work」となっているのを確認してください(図16)。
以降の作業は、このworkブランチに対するものとなります。どのような変更もmainブランチには影響を与えないので、失敗を気にせず作業できます。例として、著作権情報を格納するLICENSEファイルを作成してみます。GitHubでリポジトリを作成するとライセンス基準に応じて自動生成されるファイルですが、ここでは中身も適当とします。ステージング、コミットまでを、紹介した手順で実行してください。
ブランチをチェックアウトする
ここで「チェックアウト」します。チェックアウトとは、宿泊施設などで部屋を引き払うことですが、この場合は現在のリポジトリから別のリポジトリに移動することをいいます。ソース管理ビューの[ミートボールメニュー]アイコンから[チェックアウト先...]を選択し、表示される選択肢から「main」を選択します。これでmainブランチにチェックアウトされます(ステータスバーも確認してください)。開いていたLICENSEファイルも、存在しないとして赤線で取り消されている点にも注目です。
ブランチをマージする
mainブランチに戻ったので、workブランチの作業内容をマージしましょう。マージ(merge)とは、あるブランチの変更を他のブランチに取り込むことです。マージにより、workブランチの作業内容をmainブランチにも反映できるわけです。ソース管理ビューの[ミートボールメニュー]アイコンから、[ブランチ]-[ブランチをマージ...]を選択します。コマンドパレットにマージ元候補のブランチ一覧が表示されるので、workを選択します。すると、workブランチで追加したLICENSEファイルが取り込まれ、ファイルもテキストエディタに表示されるようになります。
マージのコンフリクトを解決する
ここで、マージで起きがちなコンフリクトの解決を試してみます。コンフリクト(conflict)とは「競合」や「衝突」といった意味で、マージ元のブランチとマージ先のブランチにそれぞれ変更が発生してしまっている状態を指します。コンフリクトが発生すると、どの変更を採用するかを決めなければなりません。これを、mainブランチとworkブランチの双方に修正を加えて、それを解決する過程で見ていきましょう。
まず、workブランチにチェックアウトしておきます。README.mdファイルに1行追加し、ステージング、コミットまで実行します(図19)。
このままmainブランチにチェックアウトし、mainブランチの方でもREADME.mdファイルに修正を加えてステージング、コミットします。
workブランチをmainブランチにマージします。想定通り「マージの競合があります。」と指摘されます(ファイル名も赤くなり「!」が付きます)。[Gitログを開く]でログを確認してもよいですが、ここではVSCodeの用意した手段でコンフリクトを解消してみましょう。[変更の表示]をクリックします(図21)。
README.mdファイルのタブが赤くなり、「!」が表示されています(図21)。エディタ画面では背景に色が付いた箇所に、現在の変更(緑色。HEADと表示されている。mainブランチ)と入力側の変更(青色。workブランチ)が表示され、競合が発生していることを示しています。
[マージ エディターで解決]をクリックしてみましょう。「マージ: README.md !」というタブがエディタグループに現れ、3分割されたテキストエディタが表示されます。「受信中」がマージ元(workブランチ)、「現在のマシン」がマージ先(mainブランチ)、「結果」は現在の作業内容です。オレンジ色の太い枠が競合の発生している部分で、そこにある[受信中を受け入れる][現在のマシンを受け入れる][組み合わせを受け入れる]をクリックすることで、それぞれworkブランチ、mainブランチ、main+workブランチの内容で「結果」を置き換えることができます。ここでは、3番目を選択してみました(図23)。
[マージの完了]をクリックすれば、マージとコンフリクトの解消は終了です。メッセージ(「Merge branch 'work'」と入力されている)を確認してコミットしましょう(図24)。
今回登場のショートカットキー
機能 | macOS | Windows |
---|---|---|
コミットメッセージの編集 | ⌘+[Enter] | [Ctrl]+[Enter] |
まとめ
今回は、VSCodeにおけるソース管理機能として、Gitの連携機能について見てきました。Gitのソース管理の仕組みについての知識は必要ですが、コマンドをタイプすることなくGUIでソース管理できるのは便利ではないでしょうか。
次回は、今回の続きとして、GitHub連携によるリモートリポジトリとのやり取り、そしてソース管理をさらに便利にする拡張機能を幾つか紹介します。