天の救い
2006年2月に画期的な出来事があった。SourceForgeの親会社が初めて四半期利益を計上したのだ。この現金注入で会社の士気は高まったはずだ。少なくとも、SourceForgeの資金調達は容易になった。
「資金が潤沢になり、人員を大幅に増やすことができた」とTurk氏は語り、スタッフが30人くらいまで増員されたと付け加えた。「資金とスタッフが増え始めたとき、我々が最初に注目したのは、インフラストラクチャがひどく老朽化しているということだった。そこで、ほとんどすべてのインフラストラクチャを系統的に交換した。以前によく発生していた信頼性の問題はもうほとんどないと思う」。
Mazzoni氏はAudacityの開発チームを指揮しながら、変化が起きていることを感じた。「彼らはすっかり元に戻っていた。統計情報の問題を手直しし、規模を拡大し、Webサイトの大々的な改善に着手したのだ」。
SourceForgeがGoogleと契約して、開発者たちがSourceForgeのページにAdSense広告を載せられるようになったことをMazzoni氏は喜んでいる。「あれはよかった。それまでは、SourceForgeを利用して広告収入をあきらめるか、それとも何から何まで自分でやって広告収入を得るか、という選択をしなければならない人たちが大勢いたからだ。そんな選択はもう必要なくなった。彼らは広告収入をSourceForgeと分け合い、コミュニティの一部になることができる」。
サイトの改善で一番大きかったのは、2006年の初頭にSourceForgeがすべてのプロジェクトについてSubversionサポートを可能にしたことである。老朽化したCVSシステムをSubversionに代えたことは、開発者たちにとって一服の清涼剤となった。「我々がSubversionを発表すると、CVSを使っていた開発者の多くがSubversionに移行した。その結果、よりインテリジェントなワークフローが可能になった」とTurk氏は言う。
GalleryのMediratta氏は、このアップグレードを大いに歓迎している。「Subversionは素晴らしい...この半年、実質的にまったく問題が起きていない」。Subversionと共に、新しいWebサーバーの導入、使用可能時間の向上、サービス監視機能の強化、検索機能の改善など、数々のインフラストラクチャ増強も行われた。
サイトの技術インフラストラクチャは2006年に大きく進歩したが、それだけの理由でSourceForgeが今なお繁栄を続けているわけではない。SourceForgeが成功している真の理由は、サーバー性能や継続性といった次元を超えたところにある。SourceForgeの原動力は何といっても「人」なのである。
門戸開放
SourceForgeの主要な開発者たちと話をすると、コミュニティの非常に開放的な雰囲気がわかる。
一部の新しいプロジェクトに関しては、コントリビュートするのは簡単で、電子メールを送って協力の申し出をすればよい。珍しいことに、ダウンロード数が何百万にもなる非常に人気のあるプロジェクトでさえ、やる気のある新人なら歓迎しているところが多い。
「我々のプロジェクトは能力主義」とGalleryのMediratta氏は説明する。「我々は開発チームへの参加方法を示したWebページを設けており、ここに来た人たちに課題を与える。それをやり遂げられれば、さらに2つの課題を与える。こうして実績を上げた人たちには、いずれ役割を与えることになる」。
SourceForgeはオープンソースを複数のレベルで採用している。すなわち、ソフトウェアがオープンソースであり(コードを誰でも見ることができ、誰でも変更を加えることができる)、コミュニティのメンバシップもオープンである。
「私は人々の参加をずっと歓迎し促してきた。というのも、このプロジェクトが大規模なものになると早くからわかっていたからだ」とAudacityのMazzoni氏は言う。彼はコーディングを手伝ってもらうためには統制をある程度緩める必要があることをよく心得ていた。
「私は積極型のアプローチを採用した。つまり、まずは相手を信頼し、問題が生じたらその時点で対処するというものだ。すぐにCVSアクセスの権限を与え、『君が何かをチェックインするときは教えてくれ。そうすれば私が目を通すから』と伝えるわけだ。それでも、CVSアクセスの権限を取り消すはめになったことは一度もない。誰かが行った変更をロールバックしたことは一度や二度あるが、それは彼らがよく考えずにやったからだ。しかし、権限を乱用されたことはまったくない」。
もちろん、今となっては、Audacityほどのプロジェクトでそのレベルの権限を獲得するにはもっと長い時間がかかるだろう。とはいえ、辞めさせられた者はいない。
Mazzoni氏は次のように説明する。「誰かがやって来たら、我々はアイデアをいくつかぶつけ、ドキュメントを見るように言うが、十中八九は答えが出てこない。その人にとって難しすぎて歯が立たない問題だからだ。そういう人たちは、たいていプログラミング経験が1年くらいしかない。Audacityは初心者が始める場所としては不向きだ。このプロジェクトは150,000行のコードがあって、C++で書かれている。そんな複雑なプログラムは、まだプログラミングの基本概念で悪戦苦闘している人の手には負えないだろう。このプロジェクトには、それなりの練度がある人が必要だ」。
「幸いなことに、そういう十中八九の人たちに払う努力は大したものではないし、残りの1人か2人はとても貴重な人材だ。パッチを作るとか、ごく簡単なことをやってもらえるからね」。彼らはそこから力をつけていく。
「我々が開発のやり方を指図する必要はない。彼らはたいてい自分なりの考えを持っている。しかも、能力があれば、すぐにやり始めるものだ」。
結局のところ、それがSourceForgeの成功の原動力と言える。それがコミュニティの力を引き出したのである。本当のコミュニティ、繁栄するコミュニティは、決して閉じたループではない。本当のコミュニティは、新しいアイデア、新しい概念、共有される入力、絶え間ない行ったり来たりを許容する。そうするうちに価値のあるもの(ソフトウェア)が生み出され、メンバたちに帰属意識が生まれる。コミュニティがそうしたことを行えるなら、そのコミュニティは必ず成功するだろう。
