はじめに
前々回、前回の記事ではChatGPTの最もオーソドックスな使い方として、ユーザーとの会話を主軸とするチャットBotの開発に焦点を当てて解説してきました。しかしながら、ChatGPTの活用方法について未だイメージを掴めていない方々の中には、ChatGPTの活用方法で迷っているというよりも、チャットというインターフェースを取り入れるイメージが沸かないという方も少なくないのではないでしょうか。もしもこのケースに当てはまる場合は、「ChatGPTは会話をするもの」という先入観を捨て、システム内部で自然言語処理全般を包括的に担うモジュールとして使うことを視野に入れると、活用の幅は一気に広がるでしょう。本記事では、そのような観点でChatGPT APIを使用した時にどんなことができるのかを、具体的な実装方法を交えながらご紹介します。
「ChatGPTと会話をしない」とはどういうことか
「会話をしない」とは、一度のAPIアクセスで完結する、または数回の固定的なアクセスで成立する処理を意味します。例えば、次のような用途が考えられます。
自動要約
長い文章を自動的に要約し、短くまとめることができます。ChatGPTのような大規模言語モデルを用いることで、文脈を理解し、文章の本質を捉える高度な要約を生成することが可能になります。
文章・コード補完
書きかけの文章やコードを基に、その続きとして考えられる内容をユーザーに提案できます。また、メールの本文から件名を自動生成するなどのように、特定の項目への入力内容をサジェストすることもできます。
テキストマイニング補助
テキストマイニングとは、大量のテキストデータから目的に沿った情報を抽出し、傾向や特徴などを分析する技術の総称です。その処理の一部として、文章の意味解釈が必要な箇所をChatGPTに担当させることで、手動での作業を大幅に削減できます。
ChatGPTや他の大規模言語モデル(以下LLM)が登場する以前は、これらの機能を実装するために、それぞれ専用の機械学習モデルを調達する必要がありました。それは決して容易な作業ではなく、学習環境の構築、ニューラルネットワークの実装、そして大量の学習データの収集など、多くの段階を経て、時間をかけてモデルを訓練する必要がありました。しかし、現在のLLMは、これらの機能を一つのモデルで実現できるため、目的に合わせて新たにモデルを訓練する必要性が大幅に減少しました。言語処理の分野では、様々なタスクに対応できる汎用モデルを用いて、言葉による指示(プロンプティング)でその性能を引き出すというやり方が一般的になりつつあります。ChatGPTは会話タスクに特化する形で提供されていますが、実際には会話の範囲に限らず、自然言語処理の様々な領域に対応可能な汎用ツールだと言えます。
それでは、ChatGPT APIを利用してチャット以外の言語処理を実装する方法を、具体例を交えながらご紹介します。