検索エンジン・生成AIの融合とプロンプトエンジニアリング
ところてん氏は現在の潮流について、「検索の時代」から「生成の時代」へと変わろうとしていると述べる。インターネットでは過去20年以上、検索が支配を続けてきた。その結果、多くの人にとって、検索とインターネットは同等のものになっている。「ウェブサービスに尋ねれば、誰かの書いた事実が出てくる」と頭の中に擦り込まれているわけだ。「これは『検索の呪縛』と呼ぶべき状況。生成の時代には、この思い込みを捨てる作業、アンラーニングが必要だ」(ところてん氏)
そもそも検索エンジンとChatGPTのようなLLMでは、得意・苦手が裏表の関係にある。検索エンジンは個別具体の知識の検索に強く、最新資料の参照や数時間でデータ更新が可能だが、LLMにはそれが難しい。反対にLLMは複数のウェブページから獲得された抽象概念・常識の利用、複数の資料の整理・演算・推論・意味理解に強いが、検索エンジンにはそれが難しい。「検索には検索の使い方、生成には生成の使い方があるので、それを覚えて帰ってほしい」とところてん氏は話す。
そして今まさに「検索と生成の融合が起こっている」と、ところてん氏は語る。BingチャットとGPT-4はすでに検索エンジンと融合し、Googleも生成AIと融合中の段階だ。検索と生成が互いの得手不得手を補おうとする動きが加速していることに鑑みると、近い将来、おそらく大半の問題は検索結果画面で解決するようになるだろう。「ウェブサイトへのトラフィックは今後確実に減っていき、今広告収入で稼いでいる人はこの後身の振り方を考える時期に来る」とところてん氏は付け加える。
ChatGPTの持つ文書読解能力と常識を活用し、プログラミングでは難しいタスクをChatGPTに実行させるのがプロンプトエンジニアリングだ。「特にプログラミングのスキルをプロンプトの作成に利用すると、ChatGPTの性能は飛躍的に上がっていく」
例えばChatGPTに「ひらがな、もしくはカタカナで表したときに3文字になる果物の名前を10個挙げてください」と聞くよりも、「果物の名前を挙げてください。名前を挙げるごとに、その名前が何文字だったかを出力してください。3文字だった場合、記録しておいてください。記録が合計10件になったら、記録されたものをすべて出力してください」と記述した方が、期待したとおりの正確な結果が得られるのだという。ちょうど、Pythonのコードを日本語に変換するようなイメージだ。
生成AI時代のエンジニアには、このようなプロンプトエンジニアリングによって、生成AIからより多くの有益な情報を引き出すスキルが求められるだろう。