ChatGPT活用法とポスト生成AI時代に求められるスキル
ChatGPTの登場により、プログラミングにもパラダイムシフトが起きている。ところてん氏は、ColorGPTというソフトウェアを例に挙げた。
ColorGPTは、カラーコードを与えると色の名前に変換するソフトだ。#af6e4dというHEXコード(16進数のコード)を与えれば、brownという言葉に変換して返してくれる。コードを見てみると、systemロール(ChatGPTに期待する振る舞いを規定する)の部分で「あなたはデザイナーです。HEXコードが与えられるので、最も近い色の名前で答えてください。答えは簡潔でシンプルな名前にしてください」と定義している。続いてuserロールで、「#af6e4dは何色ですか?」という質問に対しては「brown」と回答すると例示する。これにより、与えられたコードに対する色が明確に返ってくるというわけだ。
「ColorGPTの機能をゼロベースから作ろうとすると、普通に書いて1日~2日はかかる。他言語対応するなら1週間以上かかるだろう。それがColorGPTなら、最後に『出力は日本語でお願いします』と一言追加するだけで済む。『出力はフランス語でお願いします』と書けば、フランス語にも対応できる。どうやらこれが新しい形のプログラミングになりそうだというのが、肌感としてある」とところてん氏は語る。
ただし現状、「生成AIを利用できる領域は限定的」というのがところてん氏の見解だ。利用できるケースの例としては、「だいたい合っていればよいタスク」「ハルシネーションが起こっても大丈夫なタスク」「速度が遅くても大丈夫な場所」「手作業での利用やインタラクティブな利用」「プロトタイプ用途」などとした。
一方でところてん氏は、「機械学習によるホワイトカラーのリプレイスがどんどん進んできている」とも指摘する。
従来のホワイトカラーは、「入出力が定型」の領域、「入力が不定形で出力が定型」の領域、「入出力が不定形」の領域をすべて人間が担当していた。しかし現在、「入出力が定型」の領域は表データの機械学習に、「入力が不定形で出力が定型」の領域はディープラーニングに置き換わった。そしてChatGPTの出現により、最後のピースだった「入出力が不定形」の領域を生成AIが埋めたという。「ドメイン知識のあるホワイトカラーでさえ、プロンプトエンジニアリングで問題を解決可能な時代になった。だから今IT業に激震が走っている」と、ところてん氏はその衝撃の大きさを強調する。
ところてん氏は、「ポスト生成AIの時代は、生成AIによるプロトタイプ作成が一般化した未来」とその展望を語る。ポスト生成AI時代に優秀とされるのは、「生成AIで作られたプログラム(プロンプトプログラミング)を普通のプログラムに書き直す能力」であるという。プロンプトプログラミングは信頼性や速度が足らない。これを確保するためには、プロンプトプログラミングを普通のプログラムに書き直す作業が必要になり、そこを担うのがエンジニアになるというわけだ。
現在のエンジニアは仕様書を読んでコードを書くのが仕事だが、これがポスト生成AI時代には、プロンプトを読んでプログラミングを実装する形に変わる。やることはそれほど大きく変わらない。今のプログラマーの仕事は当分なくならないだろうというのが、ところてん氏の見立てだ。
生成AIにより、いわゆる「作業」の業務領域は確実に楽になるだろう。一方で、成果物を評価し修正を指示する、成果物に対しての責任を負う「レビュー」の業務領域は決して楽にならない。生成AIの作り上げた成果物を評価するためには、評価できるだけの勉強が必要になるのだ。「生成AIが挙げてきた成果物を評価するためには、それを評価・検証できるだけの勉強が必要になる。AIが強くなったからといって、勉強が要らなくなるわけではない」
ChatGPTは適切な要件定義能力がある人ほど能力を発揮できる。今エンジニアで要件定義をやっている人ほど、ChatGPTをうまく使いこなせるだろう。ところてん氏はセッションをそう締めくくった。