対象読者
- 再利用可能なHTMLやCSSを整備したいJavaScriptエンジニア
- ReactからWeb Componentsを利用してみたいReactエンジニア
前提環境
筆者の検証環境は以下の通りです。
- macOS Sonoma 14.2.1
- Google Chrome 121.0.6167.184
- Node.js v21.6.2
- npm v10.2.4
- react 18.2.0
- react-dom 18.2.0
- lit 3.1.2
- @lit/react 1.0.3
Web ComponentsとReactをより密接に連携させる
前回は、Web ComponentsとReactを連携させるために、@lit/react
を使って、単純にデータを外から中へと流し込む方法を解説しました。
今回はもう少し密接な連携を目指します。Reactコンポーネントとしての自然な振る舞いを求めるのであれば、コンポーネント内部で発生したイベントを、React側で関数コールバックとして受け取ることができるようにしたいですよね。また、他のコンポーネントの外側に被せることで意味を持つタイプのコンポーネントであれば、Reactの children
と同じように、子要素を扱えると嬉しいです。@lit/react
を使って、これらの挙動を実現する方法を解説していきます。
動作確認の環境については、前回のものをそのまま踏襲するので、セットアップ方法については前回の記事をご覧ください。
Web Components内で発火したイベントをReactで受け取る
イベントのコールバックをReactで受け取る方法を見てみましょう。といっても、@lit/react
の力を持ってしても、Reactから受け取った関数コールバックをカスタム要素の内部まで届けることはできません。カスタム要素の内部でイベントを発火させて、それをReactで受け取るという方法をとります。前回のリスト4を少し改造する形で、イベントを発火させる実装を追加したのがリスト1です。
import {LitElement, html} from 'lit'; export class MyEventedCounterElement extends LitElement { static properties = { count: { type: Number } } constructor() { super(); this.count = 0; } render() { return html` <p>カウント: ${this.count}</p> <button @click="${() => this.increment()}">+1</button> `; } increment() { this.count += 1; // (1) this.dispatchEvent(new CustomEvent( 'changed', { bubbles: true, // (3) composed: true, // (4) detail: { count: this.count } // (2) } )); } } customElements.define('my-evented-counter-element', MyEventedCounterElement);
(1)の dispatchEvent
で、changed
という名前のCustomEventを発火させています。外部に現在のカウントを伝えたいので、(2)のようにカウント数を detail
に入れているのは理解しやすいと思います。(3)のbubbles
と(4)の composed
は、イベントの伝播に関する設定です。bubbles
をtrueにすると、イベントがDOMツリーを遡って祖先に伝播します。composed
をtrueにすると、シャドウDOMの境界を越えてイベントが伝播します。つまり、両方をtrueにしておくと、シャドウDOMの内側から発火したイベントが、シャドウDOMの外側にあるDOMツリーを遡って、Reactの管理下まで伝播するようになります。
では、リスト1のカスタム要素から発火したイベントを、Reactで受け取ってみましょう。リスト2のように、@lit/react
を使ってReactコンポーネントを作成します。
import React, { useState } from 'react'; import { createComponent } from '@lit/react'; import { MyEventedCounterElement } from './my-evented-counter-element'; const MyEventedCounterElementComponent = createComponent({ tagName: 'my-evented-counter-element', elementClass: MyEventedCounterElement, react: React, events: { onChanged: 'changed', // (1) } }) export const EventHandler = () => { const [count, setCount] = useState(0); const isOdd = Math.abs(count % 2) === 1; return ( <div style={{ display: 'flex', flexDirection: 'column' }}> <MyEventedCounterElementComponent onChanged={(ev) => { // (2) setCount(ev.detail.count); // (3) }} /> <p> {count}は{isOdd ? '奇数' : '偶数'}です。{/* (4) */} </p> </div> ) }
実際に動かしてみましょう。ブラウザで http://localhost:5173/
を開くと、図1の通り表示されます。
カスタム要素内のカウントをReact側で受け取り、奇数か偶数かの判定と表示をReact側で行っています。
リスト2で特に注目したいのは、(1)の events
です。ここには、カスタム要素から発火されるイベント名と、React側で受け取る際の名前を指定します。(1)のように設定すると、カスタム要素内で changed
という名前のイベントが発火されたときに、React側で onChanged
という名前のコールバックが呼ばれるようになります。実際に呼ばれると、(2)の引数には dispatchEvent()
で発火した CustomEvent
が渡されるので、(3)のように detail
からカウント数を取り出すことができています。
明示的に dispatchEvent()
を呼び出したり、イベント名を指定したりと、少し手間がかかりますが、カスタム要素内で発火したイベントをReact側で受け取ることができました。