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開発生産性の多角的視点 〜開発チームから事業経営に開発生産性を波及させるには?〜

開発生産性と「技術投資」「人的資本」を接続する──開発組織の管理会計とソフトウェア開発の関係性を考察

開発生産性の多角的視点 〜開発チームから事業経営に開発生産性を波及させるには?〜 第7回 

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7.3 人的資本データが開発生産性を押し上げる

 本記事で前述してきた、技術投資データを支えるデータとして考えなければならないのは私たち開発組織のデータです。 いくら開発生産性を上げていこうと思っていても、組織の状態が悪く、モチベーションが低いエンジニアだらけではいいものは作れませんし、離脱懸念も大きいでしょう。

 何か対象チームの開発生産性を見るときに、同じ土俵には以下のデータを並べてみます。

人的資本
人的資本
  • 従業員データ
    • チームの人数
    • 雇用形態(正社員と業務委託の比率)
    • 役職(プレイヤーとマネジメントラインのバランス)
    • 等級・グレード(スキルのバランス)
    • 評価
    • 所属の推移(定性データ:社内異動の遷移)
  • エンゲージメント
    • エンゲージメントサーベイ:Wevoxといった製品を中心としたeNPSのデータ
    • 給与・等級停滞:そのチームや部門にいるときに等級や給与の成長率
    • 離職傾向:そのチームや部門の離職や異動傾向

 ここまで見られるようになれば、そのチームのパフォーマンスの低下や技術投資がうまくいっていないケースがある際に、さまざまな原因が考えられるようになります。

 例えば、ルーチンワークが多く、メンバーの等級推移を見ても、適切な仕事を与えることがそもそもできずに新規開発やエンハンス開発ができない場合や、見積もりの工数と予測が大きく乖離があり、予算計画がうまくできない部門があった場合に、メンバーのエンゲージメントは低く、離職傾向が高いです。そのため、人の入れ替えが激しく、オンボーディングコストが大きくかかっていることなどが原因として見えてきます。

 これは技術投資データだけでは見えない箇所が多く、人的資本データとかけ合わせることでよりよい開発組織、ならびに広義な意味での開発生産性の向上が見込めるでしょう。

7.4 データの可視化方法は、あらゆる社内データを集めるところから

 こうした技術投資データと、人的資本データの概念の重要度は理解しつつも、一番のネックは「どうやって可視化するか」でしょう。多くの企業では、ほとんど存在するデータではあるはずなので、すべてではなくても存在するデータをETLとして複数のデータソースからデータの抽出(Extract)・変換(Transform)・書き出し(Load)を行い、DWH(データウェアハウス)にできるだけ集約してSQLで分析できることが理想でしょう(「Looker」や「Redash」といったビジュアライズサービスを使うとよいです)。

 人的資本データであれば、例えば人事関連部署がGoogle Sheetでもらっていることもありますし、SaaSを使って持っていることもあります。技術投資データについては、勤怠とプロジェクトコードと呼ばれる会社が、B/Sを作るために資産を管理して減価償却費やソフトウェア資産を計算しているはずなのでどこかにデータが存在します。それらを適切な権限と適切な情報(例えば個人を特定できる名前などは不要)を設定した上で、DWHに公開します。

 これらのデータをエンジニアリングの力を使って見える化することで、Engineering Successを目指す組織をつくることが可能です。

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この記事の著者

石垣 雅人(合同会社DMM.com)(イシガキ マサト)

 DMM .comにエンジニア職で新卒入社し、翌年からプロジェクトマネージャーを務める。 いくつかのプロダクトマネージャーを経て2020年、DMM.comの入り口である総合トップなどを管轄する総合トップ開発部の立ち上げを行い、部長を従事。 現在はプラットフォーム事業本部 第1開発部 部長 / VPo...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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