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Visual Studio 2008で標準搭載されたWindows Communication Foundation

Visual Studio 2008 徹底入門 (7)

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2008/04/25 00:00

前回に続き、.NET Framework 3.0から導入されたコンポーネントとVisual Studio 2008でのサポートについて解説していきます。今回扱うのは通信フレームワークであるWCF(Windows Communication Foundation)です。.NET Framework 3.5でさまざまな新機能が追加され、より実用的なサービスの提供が可能となりました。

目次

はじめに

 前回に続き、.NET Framework 3.0から導入されたコンポーネントとVisual Studio 2008でのサポートについて解説していきます。今回扱うのは通信フレームワークであるWCF(Windows Communication Foundation)です。.NET Framework 3.5でさまざまな新機能が追加され、より実用的なサービスの提供が可能となりました。

対象読者

  • VS 2008に興味がある方
  • WCFに興味がある方
  • .NET技術でのWebサービス構築に興味がある方

必要な環境

 シリーズ第1回を参考に、Visual Studio 2008のインストールを行ってください。

WCFについて

 WCFは.NET Framework 3.0で導入された統合通信フレームワークです。

 WCF導入前に存在したさまざまな通信フレームワークは、相互に互換性が無く、通信方式を簡単に差し替えることはできませんでした。例えば、.NETコンポーネント間で使われているTCPベースの.NET Remotingで構築したアプリケーションを、SOAPベースのWebサービスに対応させようとするなら、通信部分について、多くの書き換えが必要になっていました。

 WCFはこうした複数の通信フレームワークを統合しており、共通のアプローチで複数の通信方式を扱うことができます。

具体的には

 やや抽象的な話になってしまいましたが、具体的にはどんな効能があるのでしょうか。WCFはRPC(Remote Procedure Call:遠隔手続呼出)の一種であり、ネットワークを介してアプリケーション同士がお互いの公開する処理を相互に呼び出すための仕組みです。

 これでもまだ抽象的です。「アプリケーション同士」とか「お互いの公開する処理」といった部分は、具体的には何を指すのでしょうか? 一番身近に感じられるWCFのユースケースは「WebサーバとWebブラウザ」あるいは「Webサーバ同士」が、「Webサービス」を公開する/呼び出すために使用する、というものでしょう。

WCFの他のユースケース
 もちろんWCFはWebに依存しない汎用通信フレームワークですので、他にも次のようなさまざまなユースケースがあります。
  • エンタープライズシステムで、Microsoft Message Queuingを使ったメッセージキューサービスを使用するため
  • P2P(Peer to Peer)通信をサポートするため
  • .NET Remotingで相互通信を行っていたアプリケーションをWCFベースの処理に移行するため
WCFにはWebに限定されない広範な用途があることを踏まえつつ、本記事では最も使われるであろう、Webサービスに関連したテーマで活用方法を説明していきます。

 .NET Framework 3.0では、SOAPベースのXML Webサービスのみがサポートされていましたが、.NET Framework 3.5の新機能として、WCF Webプログラミング モデルがサポートされ、SOAPを使わない簡潔な方式の、いわゆる「RESTスタイル」のWebサービスや、AJAXでしばしば用いられるJSON(JavaScript Object Notation)形式のサポート、RSS/ATOMを使った配信のサポートなどが追加され、Webサービスの構築において、より実際的なフレームワークとなりました。

REST?POX?
 MSDNではRESTスタイルのWebサービスのことを、「POX(Plain Old XML)スタイルのWebサービス」と呼ぶ場合があります。本記事では一般的に受け入れられている「REST」を用語として用います(MSDNではRESTという用語も用いられています)。
RESTの定義はさまざまありますが、本記事では次のような条件を満たすサービスをRESTスタイルのWebサービスとして扱います。
  • ステートレスな(状態を持たない)プロトコル
  • すべてのリソースはURIで一意に表される
  • HTTPの基本操作(GET/PUT/DELETEなど)を用いる
  • SOAPのようにメッセージの厳密な抽象化を行わず、XMLを直接扱う

 本記事では、WCFの基本概念を説明した後に、SOAPベースのWebサービスの公開、RESTスタイルのWebサービスの公開、JSON形式のサポートなどのサンプルを見ていきます。

 特に、WCFでWebサービスを提供することを主眼に記事を進めていきますので、WCFでクライアント側の処理を実装する部分については省略します。

WCFについての他の記事
 WCFを使ったTCPベース通信のサンプルや、WCFを使ったクライアント実装については、Visual Studio 2005 + WCF Extensionsの解説記事を参照してください。

WCFがサポートする通信方式

 WCFは特定の通信方式に依存しないフレームワークで、現在のところ以下の通信方式をサポートしています。

WCFで使用可能な通信方式
通信方式 概要 相互運用性
TCP TCP/IPベースのテキスト/バイナリ通信 WCFコンポーネント
HTTP HTTPベースで、SOAPを使ったXML Web Services(Basic-ProfileないしはWebサービス拡張仕様)や、RESTスタイルのWebサービス、JSONなどをサポート Webサービス(SOAP/REST/JSONなど)をサポートするアプリケーション
名前付きパイプ 名前付きパイプを使用する通信方式 同一マシン内のWCFコンポーネント同士
MSMQ Microsoft Message Queuingを使用する通信方式 WCFコンポーネント/MSMQをサポートするアプリケーション
Peer to Peer Windows Peer-to-Peer Networkingを使用する通信方式 WCFコンポーネント

 さまざまな通信方式がサポートされていますが、相互運用性の観点からすると、HTTPベースのWebサービスを使うケースが多いでしょう。WCFを使えば、必要に応じて以上の通信方式を切り替える、ないしは共存させることができます。

 WCFはABC(Address , Binding , Contract)という基本的な概念を導入することで、通信方式とロジックの分離を図り、通信方式の切り替えを容易にしています。

 まずはこれらの概念を確認しておきましょう。

WCFのキーワード:ABC(+Bv)=E

 WCFの基本的な概念を表すキーワードが「ABC(+Bv)=E」です。

 ABC(+Bv)は「どこで(A:Address)、どのように(B:Binding , Bv:Behavior)、何を(C:Contract)」提供するかを表すキーワードの集合です。これらで構成されたサービスの提供口をエンドポイント(E:Endpoint)と呼びます。

WCFのキーワード 「ABC(+Bv)=E」
頭文字 キーワード 意味
A Address サービスを提供する場所
B Binding サービスで使用するデータの表現形式
C Contract サービス内容の定義
Bv Behaivor サービスの細かな挙動
E Endpoint ABC(+Bv)で構成されたサービスの提供口

 それぞれのキーワードについて説明していきましょう。

A:Address

 「どこでサービスを提供するか」を表すAはAddress(アドレス)の略で、サービスを提供するURIを表します。WCFサービスを利用するクライアントはこのURIに対してリクエストを発行することになります。

 以下にアドレスの例を示します。

通信方式ごとのURIの例
使用する通信方式 URI
HTTP http://somehost:8080/BasicService
TCP net.tcp://somehost:8081/TcpService
名前付きパイプ net.pipe://somehost/NamedPipeService

 本記事で解説するWebサービスの場合は、HTTP/HTTPSプロトコルを使ったURIがAddressとなります。

 

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著者プロフィール

  • 山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

    静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for ASP/ASP.NET。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。 主な著書に「入門シリーズ(サーバサイドAjax/XMLD...

  • WINGSプロジェクト 土井 毅(ドイ ツヨシ)

    <WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂...

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