Adobe AIRコンテスト
Adobe AIRコンテストの受賞式では、受賞者による作品説明や開発Tipsのプレゼンテーションが行われた。受賞作品の詳細やムービーなどは、アドビのWebページでも確認できる。
グランプリ 「HitoFude AIR」(大日本印刷株式会社 丸山真実氏)
一筆書きをリレー方式で繋げていくアプリケーション。デスクトップ上の決められた範囲にマウスで好きな一筆書きを描画し、別のユーザにつなげていく。自分の番が来ると、トレイアイコンがアニメーションして告知する機能も。
開発環境はWindows、Eclipse WTP、UI作成にFlash、サーバサイド処理にJava/Tomcat(BlazeDSで通信)を使用。ネタ出しに1週間弱、開発に2週間(業務の合間に)かかった。
社内でRIA勉強会を開いており、その成果を試すためにエントリーしたという。「コンテストという目的を持つことで、集中してAIRの勉強ができた」と述べている。
審査員のコメントは、「ブラウザ上だと、おそらくとても普通だが、デスクトップで動作させると非常に面白い」「使ってみて単純に面白かった。ひきつける力がある」「サーバサイドと連携して、みんなとコミュニケーションを取れることがよかった」「使う側がこのアプリをどう使うかを考える余地がある」など。
Dreamweaver賞 「JSON Editor AIR」(株式会社カタマリ 木下勝氏、中川賀史氏、大橋將史氏)
JSONおよびXMLデータを編集するためのアプリケーション。ベースはJavaScript+HTMLによるAJAXアプリケーションで、JSONを見やすく表示、編集できるほか、多彩なキーボードショートカットにより、キーボードから手を離さず、作業することができる。
なお、プレゼンテーションはFlash/AIRによる同社製の「JSON Presenter」によって行われ(近日公開予定)、会場を盛り上げた。
構想に3日、製作に2か月(仕事の合間に作業)。内訳は、プロトタイプ 2週間、デザイン・機能精査 2週間、コーディング・仕上げ 3週間、AIR化に1日。AIR化する際のコツとして、「縦横100%のiframeを作り、作成したAJAXアプリケーションをそこに埋め込むこと」を挙げた。
審査員のコメントは、「ネイティブっぽくない作りなのに、オフラインで完璧に使えるのがよい」「軽くて使いやすく、ツールとしてもよくできている」など。
Flex賞 「JUKING AIR」(株式会社エスキュービズム 細田謙二氏)
音楽を動画付きで再生し続ける、「ジュークボックス風」デスクトップアプリケーション。楽曲は、キーワード検索の他、関連性の高いアーティストを地図上で表示する「マップ検索」で探すことができるのが特徴。2次元平面上の距離で関連性、奥行きが人気度を表しており、Googleマップのように、ズームして詳細を見ることなどもできる。
開発は細田氏と2名の学生によって行われた。マップ化の技術は1年前からFlexで実装が進められており、Adobe AIRではFlexの資産が使えたため、プロトタイプの実装は2週間程度。AIRでのインタフェース作成には約3か月要したとのこと。
審査員のコメントは、「あいまいな探し方や、ながら聞きができるなど、利用シーンがイメージしやすかった」「Flexが得意な外部との連携機能をうまく活かせている」など。
Flash賞 「Air train」(株式会社セルシス 制作1部)
スレッドを電車に見立て、世界中のユーザのモニターを旅しながらコメントを収集するアプリケーション。新しいコミュニケーションツールとして企画された。同社では「シリアルコミュニケーションシステム」と読んでいる(回覧板のようなもの)。スレッドを立てると電車のオーナーになることができる。左から来る電車はランダムで、右から来るのがスレッド。
デザインはPhotoshop CS・Illustrator CS、インタフェースはFlash CS Professional、サーバ通信(PHP)はDreamweaver CSで作成。工数は、デザイン2名で1人月、フロントエンド1人月、バックエンド1人月、構想など0.5人月の計3.5人月程度。
プロジェクトを通して感じたのは、日頃のツールで作成できるのが魅力的なこと。
審査員のコメントは、「ネットワークを使った新しいコミュニケーションを提供しているのが面白い」「デスクトップアプリケーションとしての作り込みがよかった」「Mac版や動画対応も期待したい」など。
特別賞 「webplamo 飛行艇版 デスクトップジオラマアプリケーション」(株式会社イメージソース)
1日1パーツ、Webサイトで飛行艇のパーツを入手することができ、組み立てた飛行艇は、角度を自由に変えて表示したり、ジオラマアニメーションの中に飾ったりできるアプリケーション。背景画像にはスタジオジブリが協力。
バックエンドでは、組み立てた飛行艇にIDを振り、サーバサイドでレンダリング(3D Studio Maxを使用)して、Mingでアルファチャンネルつきのswfに書き出している。Adobe AIRではIDをもとにレンダリングされた機体データをダウンロードする。
審査員のコメントは、「あまりにもクオリティが別格なので特別賞を設けた」「今後も、このような日本発のすばらしい作品を期待している」など。
Adobe AIRコンテストの総括
最後に審査委員長を務めた阿部氏が、今回のAdobe AIRコンテストについて次のように述べている。
非常に熱意の伝わる作品が多数あったが、受賞作との違いとして「利用者・利用シーンがあらかじめ具体的に固まっている作品の方が強かった」「Webアプリケーションと違う、Adobe AIRらしさを出せた作品がよかった」「コンテスト開催まで時間的な制約もあり、早くから着手できていた人の方が有利だった」の3点を挙げた。
また、一人より複数人で制作した作品の方がよい傾向があったため、今後は「協業」が肝になってくるのではないかとも指摘している。
最後に阿部氏は、「Adobe AIRで何ができるのかは皆さんが考えること。どんどん様々なアプリケーションを作っていくいくことが、今後のAdobe AIRの発展につながっていくでしょう」と締めくくった。