はじめに
コンピュータで美しい図形を描画する方法にカオス写像があります。なかでも、特に美しいとされる2次元モデルを、多くの試行結果を基に紹介します。
- 完成版のアプレット(エノン写像)を見る
- 完成版のアプレット(グモウスキー・ミラ写像)を見る
対象読者
カオス理論に興味があり、カオス図形を自分で描いてみたい人。
必要な環境
J2SE 5.0を使っていますが、これより古いバージョンでも大丈夫です。ある程度のCPUパワーがある方が、ストレスがありません。
カオスとは
カオス(Chaos)とは、一般的な用語としては、「混沌」や「無秩序」と訳され、あまり良い意味ではありません。しかし、数学や物理学の用語としては、
- 簡単な一定の式の繰返し計算の結果である(決定論的(deterministic)カオス)
- 初期状態のわずかな違いが大きな変化をもたらす(バタフライ効果、1963年にLorenzが命名)
- 同じ値を繰り返さない乱数的動作で予測できない
などを意味し、結果的に「無秩序」のように見えても、実は非常に簡単な式によって支配されていという興味深いテーマです。
カオスとフラクタルは、良く同時に論じられます。カオスは、繰返し計算による写像の動きに注目し、フラクタルはその軌跡に注目したものです。たとえば、3次元カオスモデルのローレンツ・アトラクタの断面には、フラクタル性が見られます。
1次元モデル
カオスの例として良く紹介されるのは、動物の増殖モデルとしてのの繰返しです。これは、xのみが時間と共に変化する非常に簡単な1次元モデルで、1976年にRobert Mayがカオス性を発表し、ロジスティック写像と呼ばれます。カオス理論的には重要でありますが、美的なものではありません。
3次元モデル
次に有名なのが、それぞれ時間tの関数であるx、y、zの3元非線形常微分方程式の解として得られるローレンツ・アトラクタ(Lorenz Attractor)です。これは、米国の気象学者でMIT(マサチューセッツ工科大学)のEdward Lorenzが1963年に発表したものです。これは3次元図形として描かれ、平面に投影すると、蝶の羽根のように見えたり(バタフライ)、フクロウの眼のように見えたり(オウル)します。アトラクタですから、発散することなく、一定の範囲内を動き回りますが、形状に興味はあるものの、それほど美しいとはいえません。