初日に注目を集めた『秋田県大館市 IP電話導入事例』のセッション
OSC2009 Tokyo/Springの1日目で注目を集めたのは、「2億円のIP電話を820万で構築した」と話題になった、秋田県大館市によるオープンソースPBX「Asterisk」導入事例のセッションだ。大館市でAsterisk導入の中心人物である中村芳樹氏(産業部商工課商業労政係主事)が上京し、「Asteriskでここまで出来る!秋田県大館市のIP電話導入事例紹介」と題して発表を行った。午前最初の枠であいにくの雨模様にもかかわらず、スーツ姿の立ち見もでるほどの盛況だった。
Asterisk導入のきっかけは、たまたま目にしたネットの記事
中村氏はAsterisk導入の経緯を交えつつ、大館市で成功した要因などをいくつか語った。中でも大きいのは、中村氏自身が「玄箱」で自宅サーバーを立ち上げたりする程度に、自分でオープンソースを使ってみたがりだったということ。Asteriskの導入に関しても、市町合併後に拠点間の内線網を整備しつつ、老朽化した旧アナログPBXを交換しなければならないという時期に、たまたま日本Asteriskユーザ会の高橋隆雄氏による記事をネットで目にしたのがきっかけ。軽い気持ちで「これならできるかも」と格安のIP電話機をテスト用に購入し、自身のノートPCに実験的にAsteriskを入れてみた。
この実験が上手くいったので上司に提案したところ、上司も理解力がある人ですんなり通ったという。できることなら構築は地元の業者に任せたかったのだが、尻込みされてしまったので本番構築も自分でやることになった。もちろん地方自治体の財源が非常に厳しく、予算が無いという事情もある。汗を流すか、金を払うかという選択だった。
とはいえ、実際にはIP電話機が導入直後に不具合でファームウェアのアップデートをしなければならなかった以外は、さしたる苦労もなく導入できたようである。全庁で500台のIP電話を導入したが、アップデートや設定の書き換えはサーバーから深夜に自動実行させることで、ほとんど手間はかからないようだ。 Asterisk管理そのものにかかっている運用コストは、自身の残業代が年に3万円程度ではないかという。